マスターズディスカッション
3000字です。ほぼ。
NWOにおいて、『新アイテム』と言うのは一体どのようなものを指すのか。
上級プレイヤー達の間では、『そのアイテムを誰かが初めて発見し、発表されたアイテム』と言うのが通説である。なお、『武器』や『防具』はカウントされない。それらはすべて、『プレイヤーの手で生み出されたそれら個人、団体専門のユニークアイテム』と言うことになるのだ。
よって厳密には、『誰かに新しく発見され、なおかつ『武器』『防具』以外のアイテム』と言うことになる。
NWOには、『新アイテム開発研究所』のような、そう言ったアイテムを制作する専門ギルドも数多く存在する。
HP回復ポーションに例えてみよう。
最も安いポーションが、
【HP回復ポーション
回復量 HP最大値の10%】
である。宿に泊まると、5分で20%回復してくれるので、こちらのほうが圧倒的にコストがいい。フィールドにおいてのHP自動回復は、不可能ではないが、専用のスキルをとらなければならない。
そして、新アイテム開発研究所が発見したもっともすぐれたHP回復『のみ』のポーションは、
【HP全回復ポーション
回復量 HP最大値の100%】
名前を見ただけで効果が一発で分かるものだ。
ちなみに、10%と100%の間には、30%と50%が存在する。
だが、これだけでは終わらない。
新アイテム開発研究所が発見した最高傑作は、
【ハイエストポーション
HP回復量 HP最大値の100%
MP回復量 MP最大値の50%
STR及びINT 5分間それぞれ10ポイント増加】
フルアタック(全力攻撃)専用のポーションと言える。
このように、回復ポーションといっても、様々な効果を付けることが出来るのだ。素材を見つけ、分量さえ分かっていれば大概可能である。
生産職はすべて、『発見』することに特化している。
逆に(と言うと少々違うかもしれないが)、量産に力を入れているギルドもある。
『セイリオス重工業』がそうだが、このギルドの量産能力はかなり高い。
なお、『複雑な機械』や『自動化』が存在しないNWOだが、鍛冶とスクロール以外であるならば、NPCでも実は生産可能である。
工場ギルドは、そういたNPCをたくさん所有しているのだ。無論、ランクそのものはまあ諦めなければいけないが。
生産者たちは日々進歩を見つける。
NWOのアイテムの種類数は『無限種類』だ。
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なぜかは分からないが、ゼツヤはロードキャッスル城下町の広場に設置された『円卓会議所(ゼツヤが7年前に建てた)』で行われる『マスターズディスカッション(長たちの会議)』に、『エクストリーム』の参謀として出席していた。
ゼツヤの内心は『何で俺?』である。
ゼツヤとレイフォスを除いて参謀に適しているのは……サーガとクラリスの兄妹だろう。あの2人は賢い。……実はシャリオもだがな。
ちなみに、こういった会議の際に議長を務めているのは、毎回ゼノンである。
あのギルドを1人で決めるほどの知識なのだ。賢いことで有名でもあるし、誰も不満はない。いや、ヘリオスはやや不満そうにしているが。まあ、理由は円卓を囲んでいるメンバーを見ればまあ分かるのだが。
「さて、これからイベント『ロードキャッスル城下町の防衛』のマスターズディスカッションを始める」
ゼノンが言った。
「最初に、この円卓に座っている各プレイヤーは、ギルド名。マスターのネーム。あと、ギルドの特徴を言ってくれ。まずは俺から。『アンフィニッシュドレギオン』ギルドマスター・ゼノンだ。ギルドメンバーは3000人いるし、傘下のギルドは20ほどいるので、全般的にいろんなことが可能になる。以上だ」
次はエクストリーム。
「ギルド『エクストリーム』ギルドマスター。レイフォスだ。構成メンバーは6人と、あと臨時メンバーが1人いる。まあ、みんな知っていると思うが、臨時メンバー以外はすべてステータス極振りだ。一長一短だが、適材適所を行えば十分な戦力になる。以上だ」
次、オブシディアン海賊団。
「ギルド『オブシディアン海賊団』船長。テラリアだ。黒曜石を主に使われた武器を使用している。素材も大量に今回用意しているので、主にアタッカーとして参戦する。以上だ」
次、旋律騎士団。
「ギルド『旋律騎士団』団長。アーネストだ。戦闘力的にはやや低い部分もあるが、その分統率力、応用力、雰囲気の読み取りに優れている。よほどのことが無い限り、僕の指示に従うようになっているよ」
次、ブリュゲール。
「NWO最大ギルド『ブリュゲール』ギルドマスター、ヘリオスだ。装備のランク、そして、何よりも数に優れている。ポーションをはじめとした消費アイテムを大量に用意している。今回のイベントでは、総合ランク1位に君臨する予定だ」
邪魔はするなよ。
次、リトルブレイブス。
座っているのはバスター(ギルド制服なので、基本色は黄色だ)で、その後ろにはソレイユがいる。因みに、ソレイユがいるため、ヘリオスはやや機嫌が悪そうだ。
「ギルド『リトルブレイブス』リーダー、バスターだ。まだ1か月の新設ギルドでレベルがいたらない部分もあるが、オラシオンシリーズの武器をかなり所有することができている。今回はギルドとしての参加は初めてで、基本的にイベントと言うものを知るために参加するので、基本的にサポートを優先して、必要であれば前衛に出る予定だ」
まあ、それがもっともいい感じか。
だが、バスター個人で考えればその戦力(火力)は圧倒的なので、バスターのみ呼ばれるかもしれないが、その際はソレイユにどうにかしてもらうのだろう。
次、新アイテム開発研究所。
「ギルド『新アイテム開発研究所』所長。リオックだ。文字通り、新しいアイテムの制作をしている。まあ、詳細については後程」
確かリオックって……獰猛な虫じゃなかったかな?結構大きな体をしていて獰猛だった気がする。
次、セイリオス重工業。
「セイリオス重工業。工場長。セイリオスだ。短期間の量産を目的としてサポートに徹する予定だ」
町そのものにも確かにポーション等を売っているNPCの店はあるが、プレイヤー製作のものより質が落ちるし、さらに在庫数に限りがある。
プレイヤー製作のものにも在庫数に限りはあるが、ワープを利用して運搬するため問題ない。騎乗アイテムを利用する場合は……大量のモンスターをかいくぐらなけれBならない。不可能だ。
その他にも顔見知りだったり、リトルブレイブスのように今回から参戦するギルドもあった。
プレイヤーの総数は……完全に戦力となるものをカウントすると、約5000人と言ったところか。ほとんどUFRの影響だが。
「さて、次は役割分担だが、本番は明日だし、何よりいつも通り、事前情報がない。いろんなパターンを考える必要がある。あくまで芸禁的な戦力で考えることになる。門は北。南東、南西にあるから、まずはそこから分けていくことになる」
ちなみにだが、ロードキャッスル及びロードキャッスル城下町は、合計すると、東京が収まる規模だ。人材の移動もかなり大変になる。そのあたりを、今この場で参戦することを決めているギルドの中からうまく分けていくゼノンは異常なのである。
因みに、ゼノン本人もただの知識人ではない。『NWO公式デュエルカップ』と言う行事が毎年終わりごろにあるのだが、この時、バトルロワイヤル+決勝トーナメント(枠数16)において4位と言う、NWO最強の双剣使いなのだ。
補足すると、その時の3位がゼツヤである。2位はバスター。1位はレイフォスだ。
まさか、自分が作った武器の性能に負けるとは思いもしなかった日であった。
エクストリームの役割だが、北エリアのかなり広いブロックを担当することになった。
まあ、こういったイベントではギルドで動くのが基本であることと、あまり集まりすぎると、シャリオが宝の持ち腐れになるのである。
そういうぶぶんをわかっているので、ゼノンはエクストリーム+ゼツヤをかなり広い範囲に配置したのだ。
まあ、役割は分かった。任されたのだから、するだけである。




