海『上』が危険でも海『中』はそこまで危険ではないのがNWOクオリティー
「ふああ……あ。鉱石あった」
ゼツヤは操縦桿をガチャガチャと動かしながら鉱脈を探していた。
……ちなみに、潜水艦を作っていた。
全長二十メートルくらいである。
できる限りコンパクトにしようと思ってこの結果である。なんだかんだ言って、NWOの動力概念がめんどくさい理由が分かるだろう。まあ、ほとんど魔法具で解決するんだけどね。
「船はみんな作れるけど、潜水艦はハードな技術が必要だからなぁ」
無論、ゼツヤは本体の方を使っていない。
もしも本体の方が作っていたら、海中でも音速で動けるだろうし、今以上にコンパクトになっているはずだ。今のままでも十分だが、これ以上になると逆に面倒である。
「それにしても……海中はそこまで危険じゃないんだな。まあ、想定通りだったけど」
船などを使って足腰を使った技術を適用できる海上とは違い、海中ではほとんどの場合は潜ったりするのだ。
結果的に、手に入る鉱石はそうでもないパターンになることもあるが、潜水艦を作れるのなら、コスパを考えれば潜っておいた方がいい。
……無論、NWOの海ゆえに気を付けておかなければならないこともあるのだが、そこはまあ、十年以上やっているゲームだ。十分対応可能である。
「それにしても……なんで深海魚に目があるんだろうな」
海の中なので、地上なら存在するはずの光が届かないのだ。ただ、その状況でも見えるようにするためにいろいろと補助アイテムを使っている。
……のだが、時々発見出来るモンスターにも目がついているのはなぜなのだろうか。
光の届かない領域で生き続ける深海魚に、視力は必要ない。地上の光が届かない以上、視力が全く機能しないからだ。
「まあ、NWOだもんな」
結果的にそれで解決してしまっているゼツヤもゼツヤだが、なんだかんだ言って毒されているのだろう。そうに違いない。
「さて、回収するか」
むき出しになっているとはいえ、深海なのだ。採取方法も地上とはもちろん違う。
「これを使えば問題はない!」
マジカルスクロールの上位アイテム『マスターブレスレット・オブ・○○』になることを覚えているだろうか。
しかもあれ、『使用権限』を得るものなので、無効化空間内でも使える。なんでそんな機能を持たせたのか、それは作った本人にもわからない。
「『マスターブレスレット・オブ・クラッシュストリング』を使えば、近くにあれば楽勝だ」
直訳すると『破壊糸』になる。
文字通りと言えばいいのだろうか。糸を出して、先端から衝撃波を発生させる。
使い方を間違えると鉱石ごとドカンだが、ちゃんとコントロールすれば問題はないのだ。
集中力だけはやたらあるゼツヤなので尚更問題はない。
「よし、ゲット!……すでに持ってるやつだった」
浅い鉱脈だと大体同じものが出てくる。
汎用性があるといえばまああるといえるのだが、これがなかなか面倒なもので……。
「オラシオンの技術を使えば、鉱石を自動生成する『大樹』くらいは作れるからなぁ」
わざわざ集めに行ったりしない。鉱石だろうと自分で自動生成する。
それがオラシオンの素材収集システムなのだ。
はっきり言っていろいろ場所の無駄なのだが、誰も来ない山のふもとにあるのだ。別に問題はあるまい。
「まあ、今日はこれくらいでいいか」
圧倒的な集中力を持つゼツヤは宿題を即座に終わらせることも可能だが、なんだかんだ言って学生なのだ。考える必要はあるだろう。
「とはいえ、問題はもうひとつあったな」
ゼツヤは普段ワープを使って帰っている。
のだが、さすがに、潜水艦にまでその機能を付けるのは材料が足りない。
時間の無駄だと思いながらも、操縦桿を操作するゼツヤだった。




