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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
国賓だと?どっからでもかかってこいや!
194/218

『セーフ』か『アウト』か、と言うレベルではない。

「で、夏休みの宿題を一日で仕上げることになったわけだな」

「死ぬかと思った……」


 九月一日。

 なんだかんだ言って地獄から抜け出しているのか、それとも地獄の続きなのかよくわからない日である。

 始業式も終わり、宿題を提出して、放課後。

 竜一は机に項垂れて撃沈していた。

 その隣では道也が溜息を吐いている。


「まさか夏休みのほぼすべてを使うハメになっていたとは……そこまで苦労する相手だったのか?」

「段階と言うものがいろいろあってね。まあ、時間がかかったんだ」


 なんていうか、そう言うことにしておいてほしい。そういう気分である。


「ところで、プレシャスコードの方ではうまく行ったのか?」

「ああ。まあ、本体の方を出したからな」

「……それに関しては、ご愁傷さまと言っておこうか。もちろん敵組織にだが」


 やかましい。


「で、桜は朝から見ていないが……欠席か?」

「今日はなんかドラマの撮影があるらしいな。今日が金曜日で始業式。明日、明後日と休日で時間があるから、その間にいろいろやってしまおうという感じだ。日曜日はホールでイベントだからそこまで時間使えないみたいだし」

「なかなかハードスケジュールだな」

「勘がいいから手の抜きどころが分かるって言ってたぞ」

「……」


 道也は苦虫を噛み潰したような表情になったが、溜息を吐いて表情を戻した。


「とにかく俺は疲れた……」

「来週から体育祭の練習が始まるぞ」

「……なんでこのクソ熱い時期に体育祭なんてやるんだろうな」

「知らん」


 まあ確かに知らないのは当然だ。ていうか、校長に聞いたところで納得する意見が聞けるかどうかは謎である。聞いてみようとする勇者はこの世にはいない。


「で、体育祭が終わったら中間テストの期間になるからな」

「道也って時事問題の成績ゴミだもんな。しっかり予習しとけよ」

「うるさい……ん!?」


 急に変な声になった。


「どうした?」

「新着ニュースを見ていたんだが……セインベール女学院にセリュアル王国の王女が留学してきた」


 セインベール女学院は、沖野宮高校の隣の隣にある学校だ。

 この地域にしてはすごいレベルで偏差値も高く、周辺も都会レベルで発達している。

 因みに、竜一の母親の母校である。


「……セリュアル王国の王女ってセトナだよな」

「ああ……」

「なんでこんな辺境に?」

「いや、辺境と言うほど辺境ではないがな。東京からも近いし」

「だからってなぁ……」


 なんだろう。すごくいやな予感がする。


「今日はもう帰った方が良いな。ていうか、放課後なんだし、帰ってもいいだろ」

「その通りだ」


 竜一は席から立ち上がると、教室のドアを開け……ようとして閉じた。


(ちょっと金髪が見えたような気がするな。おかしい。沖野宮高校に金髪の生徒はいなかったはずだ)


 竜一は全速力でもう片方のドアに移動して、ドアを開け……ようとして閉じ……ようとして、その扉がガシッと掴み止められた。


「……(汗)」


 竜一は自分の頬が引きつったことを感じた。


「いくらなんでもひどいのではないですか?」


 閉めようとする竜一の力を上回る膂力でドアが開けられる。

 そこには、にっこりと微笑むセトナがいた。


「そんなことはない。と俺は思うんだが、それは俺だけか?」

「……」


 おい、道也。なに我関せずを貫いてるんだ。ちょっとは援護しろ!相棒だろうが!


「今のあなたに味方はいませんよ。さあ、行きましょうか」


 そう言って竜一の手を取ろうとするセトナ。

 だが、ここで竜一のメールボックスの着信音が響いた。

 しかも、セトナにも聞こえる設定だ。

 竜一はメールを開く。

 桜からだった。


【竜一君。『八月十六日』って言ってみて】


 どういうことだろうか。

 まあ言ってみるとしよう。


「八月十六日」


 言ってみると、セトナの頬がピクッと震えた。

 そして、出していた手を引いた。


「……今日のところは引いておきましょう。それではまた」


 セトナは去っていった。

 一体、どんな意味があるのだろう。


「……女同士の水面下の戦いは、なかなか苛烈だな」

「……だな」


 軍配がどちらに上がっているのかは……若干で桜かな?

 さて、困ったことになったものである。

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