ローラー作戦の意義
「で、一体どこがたくらんでいるのかって言うのは分かってるのか?」
「いや全然」
キリュウに聞かれたゼツヤは即答する。
カーチェスでトレードが止まっていたので、その先に誰がいるのかが分からないのだ。
だが、こういうときは良い方法がある。
「じゃあどうするんだ?」
「ローラー作戦だ」
ゼツヤは即答する。
キリュウは当然げんなりした顔になった。
「しらみつぶしに探すってことか?」
「適当に当てを付けて探すからいつまでたっても見つからないんだ。端っこから順番に探していけば最後には見つかる」
「いやまあ確かにその通りではあるが……」
嗅ぎ回っていることをこの際知られてもいいくらいである。
「それはそれとして、組織を探すっていうとき、どういう場所を探すものなんだ?」
ゼツヤはグレイアに聞いた。
必要なものがあればそろえることはできるが、必要なものが分からなければ出すに出せない。
さらに言えば、拠点の発見と言うのはなかなかコツがいるものなのだ。
というか、ゲームなのでアイテムボックスがあるため必要以上に拠点にものを置いておく必要があるわけでもない。
そう言うわけで、拠点になりそうなところがたくさんある上に、いつでももぬけの殻になることが出来る場所が豊富にあるということになる。
ちなみに、拠点と言っても話しあいをするだけなら何もNWOである必要すらないので、もし話し合いでしかメンバーであっていないとなると詰むのだが、そいであれば素直にあきらめるしかない。
まあその場合、二度とできないようにいろいろ動くだけなのだが。
「人気のないところなどいくらでもあるじゃろうな。ローラー作戦という方法になることはまず間違いはない。安心せい。さっきダマスカスに確認をとったのじゃがな。この世界で発生している暗躍は、ワシらの世界の同郷のものなのじゃ。そういう報告もあって、本部からも人が多く派遣されるそうじゃ」
あ。NPCたちの同郷なのか。
ダマスカスか。ロスト・エンドのリーダーだったな。
「そして、ローラー作戦で狙うべきなのは、この世界でも知られている場所の方がいいじゃろう」
「……灯台下暗しってことか?」
あえてそういう場所を選ぶことで、裏路地だったりうさんくさい物件を嗅ぎ回っている間にその情報を収集、拠点ごと移動するというやり方もある。
「そうともいうのう。ダマスカスからの報告書にも、この世界に来ている連中の候補の情報がいくつかあるのじゃが、そういう作戦でいろいろと動いていた連中じゃ」
「人気の場所か。そういう場所をローラー作戦で探るって言うのはかなり危険じゃないか?」
公的な場所と言っていいだろう。
当然、裏のもの達だけでなく表の者だってその探っている様子を確認可能となる場合もある。
そうなると、その情報が拡散して知られる可能性もあるだろう。
「そうであるからこそのおぬしじゃよ。オラシオンシリーズを使えば、進入する際も発見される可能性の低くすることは可能じゃろうしな」
「まあ確かにそうだな」
オラシオンシリーズに限らず、NWOにおけるアイテムを使えるというのであれば、NPCたちに設定されているステータスの基本マットも同じと言うことになる。
そう考えると、戦闘に関係のないスキルにだって効果はあるだろう。
無論、ロスト・エンドの故郷の世界が、魔法ならばともかく中でもロボットでも何でもありとなれば、ゼツヤが用意できる範囲は広がる。
「まあ、どういうものが必要なのかは紙に書いて渡してくれ。作ってやるから」
「ほう。期待しておるぞ」
「もちろんだ」
頼まれたらそのステータスの通りに作ってやればいい。
オラシオンは、それが可能だ。




