溜息
「とまあ、そんな感じで、俺は生まれつきこんな性格だったが、さすがに倫理観がいろいろヤバいから表面に普段は作っているって言うことだな」
ゼツヤの説明を聞いて、セトナは茫然としている。
「二重人格かと思いましたが、演技人格なのですね」
「そうなるな。ヘリオス以上にいろいろできるけど、まあそれはいいとしよう」
「ところで、あなたはこれから、どうなると思っているのですか?」
「どうって?」
「カーティスのことです」
「ん?……ああ。別に放置でいいじゃねえの?」
「え……何もしないのですか?」
「ああいうタイプの人間は一度計画にほころびが出ると、勝手にボロを出すもんだ。言ってしまえば自滅するってことだな。手を下すまでもない」
勝手に自分で動き回るからな。しかも、一度打開策を思いつくと、その策を即座に、何も考えずに実行し始める。
(悪党と言う意味では敵対したくないやつもいるが、どいつもこいつもアイツほどじゃねえしな。楽って言うよりヌルいぜ)
遠い昔、白いメッシュを入れた少年と戦った時のことを思いだし、ゼツヤは苦笑する。
「では、もうこれ以上何もしないのですか?」
「何もしないということにはならないだろうな。結果的に向こうからいろいろやって来るだろうし。ただ、誘導だけはさせてもらおう。あとは見ているだけで面白いことになるぜ」
「思った以上に行動派ではないのですね」
「どちらかと言うと提供主義だからな。まあ、これからこの金が、石ころになるのか、それとも金で居続けるのか、それは分からんが、どちらにせよ、ロクなことにはならないだろう」
金と言うのは信用によって保障されている。
本位制だろうと、ゲームにおけるシステムだろうと、それは変わらない。
だが、この世界はもう、その信用を得るための手段をとりこぼしてしまった。
少なくとも、どうあがいたとしても、元には戻らないだろう。
「はっきり言って、金がこの世界にはありすぎた。別にそれだけならいいんだが、それだけだとインフレが発生し続けて、問題があった時にもう元には戻らない。一体何をやっているんだろうな」
ゲームの運営としては、この世界はあまりにも自由すぎる。
普通、バランスを整えるというように見せることをしなければならない。
というか、GMコールすらないゲームと言うのも始めてみた。
(俺の予想が正しければ……誰もが知っている運営団体と、実際の運営は違う可能性があるってところか)
そのクライアントが誰なのか、まだゼツヤにもわからない。
結局、溜息を吐くしかないようだ。




