プレゼント箱に爆弾を添えて
「ゼツヤさん。あの、偽金貨を作っているプレイヤーを探すというのはいいのですが、いったいどうやってするのですか?」
もっともな疑問をセトナからされたゼツヤだが、簡単なことである。
「まあ、ちょっと待っていろ。数日後にはわかる」
「数日……ですか?」
「ああ」
自重しないときのゼツヤは手段を選ぶことはない。
とはいっても、無茶ができる者にとっての正攻法という手段も、世の中には存在するものである。
セトナにはわからないが、オラシオンであるゼツヤにはあまりにも普通のことだった。
……で、数日後。
「わかったぞ。『カーチェス』というプレイヤーだ」
「……いったいどうやって見つけ出したのですか?」
数日間ゼツヤがやっていたのは、需要の強奪である。
いや、コスト的にも性能的にもゼツヤが上だったというだけの話なのだが、容赦のない性能と市場暴落クラスの低価格によって、需要を丸ごと奪い去ったのである。
もともと生産スキルを軽視する傾向にあるように『誘導されていた』世界であるがゆえに、オラシオンシリーズのインパクトは大きすぎたのである。
低価格ではあったが、販売数が膨大なので、まとまったクートを手に入れているゼツヤである。
だが、セトナはそれしか見ていないし、外に出ていたときはいつも見ていた。
しかし、だれかと話していたわけではなかった。
こちらの世界で購入したNPCに販売を任せていたので、客ともほとんどあっていない。
なので、わからなかったのである。
「ん?ああ。簡単に言うと『発信機』だよ」
「発信機……ですか?」
「そうだ。そのアイテムがプレイヤー間でトレードが行われたとき、その記録が俺に転送されるようになっている。行ってしまえば金を自由に作れるんだから、使おうとする金額に限度はない」
別に高額でもよかったが……。
「だが、高額だった場合、俺が出していた店で買いあさることになるから、それを誰かに見られる可能性も否定はできないからな。誰かに資金を与えるのも、それが多くなると何かしているのではないかと思われると本人も思っているだろうから、低価格で販売することにした」
ただ、あまりにも販売数が多いと思っているだろう。
低価格の設定が長く続くとは思っていなかったということもあるだろうが、結局、一人のプレイヤーにアイテムが集中することになる。
「もっともアイテムを集めている数が多いのはカーティスだ。ちょっと調べたが、金払いだけはいいっていうことで有名なプレイヤーだったよ」
ほぼ確定だろう。
「まああとは、本人の拠点にでも乗り込めばいいどうせ見つかるだろうしな。まあ……別に犯人ではなかったとしても、しらばっくれるとは思うが」
「そうなのですか?」
「所詮、ゲームの金だ。偽金貨を作ってはいけないという法律はない」
ルール違反ではないのだ。マナー違反ではあるが。
そのため、相手を裁くことなどできない。
「ですが、見過ごすわけにもいきません」
「見過ごす理由もないしな。ていうか、今自分が使っている金が『無信用』の石ころからできているなんていうのは、経済的に悪いことになる。生産者としては文句の一つも言いたくなるさ。金を得るために生産しているんだ。その金に意味がないっていうんだからな」
許せない理由はいくらでもある。
そして、許せないことを許せないといえる権利と、そしてそれを押し通せる強さがある。
「クックック。あわてる顔が目に浮かぶぜ」
その時のゼツヤの目は、狂気で染まり切っていた。




