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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
国賓だと?どっからでもかかってこいや!
180/218

オラシオン・タブレット

「ふう……出来た」


 ゼツヤは目の前にある純粋に緑色の直方体を見ながら、そうつぶやいた。

 アイテムの名前は『オラシオン・タブレット』である。

 三つ並べておいたそれらをひとまず横に置いておいて、一つを手に取っておいた。

 スミスハンマーを振りおろすと、一回振りおろされただけで変形し始め、緑色の剣になった。

 緑色の剣を別の場所において、二つ目を手に取って、裁縫の針を刺す。

 すると、変形し始めて、最終的にはコートになった。

 そのコートを別のところにおいて、三つ目をとった。


「……」


 泡だて器を取り出して、タブレットを皿においてコンコンと当てた。

 すると、変形し始めて、全体の八分の一くらいの大きさのショートケーキになった。


「これはあまり食いたくないな……」


 完成したショートケーキを見てそういった。

 その時、ミズハが入ってきた。


「どうしたの?ゼツヤ君。妙な表情をして」

「いや、まあな」

「む?あ、ショートケーキ作ったんだ」


 そのままショートケーキに小さなフォーク(どこから取り出した?それとも何時も持っているのか?)をさして、一口パクリ。


「うん。おいしいね」

「そうなんだ」


 自分で作ったものをおいしいと言われてこんな返答をしたのは初めてである。


「どうかしたの?」

「……」


 言った方がいいか。どうせ勘でばれるし。

 ゼツヤは無言で新しいオラシオン・タブレットを取り出すと、皿において、泡だて器をコンコンと当てた。

 すると、ショートケーキになった。


「……何それ」

「オラシオン・タブレット。製作系統の道具に当てると、その道具に適したものに変形するという素材アイテムだ」

「……ああ。賢者の石みたいなもの?どういえば緑色だね。あれって確か、『エメラルド・タブレット』に記されているって設定だったかな」

「まあそう言うこともあるが、とにかく、これがあれば、あとは道具を用いるだけでジャンルに関係なくアイテムを作ることが出来る」

「さっき私が食べたショートケーキも……」


 ゼツヤは頷いた。


「……私は一体どんな顔をすればいいんだろうね」

「俺に聞くな」


 ゼツヤはとりあえずそう言っておくことにした。


「まあ、アイテムとしてはすごいよね。どんなアイテムでも作れるんでしょ?」

「そうだな。スキルの熟練度によって違うのかどうかは知らんが、道具さえあれば作れるのは間違いない」

「まさに賢者の石だね」


 そう言えば。


「賢者の石と言えば、卑金属を貴金属に変えることが出来るっていうはなしがあるよね」

「試してみるか」


 ゼツヤは鈴と取り出して、オラシオン・タブレットに当てた。

 すると、当てたのはいいのだが、離れなくなった。


「「?」」


 ゼツヤが手を放してみると、鈴がタブレットの中に吸収されていく。

 全部が入ったと思ったら、タブレットの材質が変化していき、金になった。


「……なっちゃうんだね」

「みたいだな」


 なんだろう。このアイテムだけで数時間は語れそうだ。いろんな意味で。


「オラシオン・タブレットって、ゼツヤ君愛用の剣で複製できるんだよね」

「できるぞ。ていうか、一から作ってたら本当に面倒だからな」

「なんだろう。ここにきてオラシオンとしての理不尽を見ることになるなんて思ってもいなかった」


 それはゼツヤも同意しよう。


「何の話をしているのですか?」

「「うわあ!」」


 振り向くとセトナがいた。あー心臓に悪い。


「セトナ。どうしたんだこんな場所で、ていうかどうやって入ってきたんだ?ドア、かなり昔からないはずなんだけど」


 そう、ドアがないのだ。この工房。

 アップデートで地形変更があった時に、それに巻き込まれてドアの部分がなくなったのである。

 転移して来れるから新しくドアを作るのは面倒だし、そもそも数年規模でドアなんて使っていなかったから今更困らないので、ずっと放置していたのだ。

 なので、この場所で見知らぬ客とかそう言うのは勘弁してほしいのである。


「いえ、普通に切り刻んで進んできました」


((強引すぎるのにも限度があるって。いや本当に))


 見事に心の中がシンクロしていた二人だが、あまりごちゃごちゃ考える暇もないのでさっさと会話をすることにした。


「これの話だ」

「はぁ……」

「名前は『オラシオン・タブレット』で、まあ、道具によってはいろいろ作れる」

「なるほど、あちらの剣とコートもそうなのですか?」

「そうだ」


 セトナは近づいて、それぞれ鑑定している。


「道具を使うだけでいいという前提としては破格の性能ですね」

「そうだとおもうよ」

「そのショートケーキもそうなのですか?」

「うん」


 セトナは小さなフォークを取り出して(最近の俺の周りの女子はどうなってんだオイ)、ショートケーキに刺してパクリ。


「……おいしいのですが、ホテルで食べた料理より下ですね」

「あそこで食べた料理以上だったら悲しいよ俺」


 素材に関してはかなりのものを揃えて作っていたからな。泡だて器を一回叩いただけのショートケーキ(言い方が少々変な気がするのは傲慢だろうか)に負けてしまったらいろんな意味でよくわからん。


「まあいいですが……これを二百個ほど欲しいのですが」

「別にいいが……」


 一体……何をする気なのだろう。

 ミズハと顔を見あった後、首をかしげるゼツヤだった。

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