その後。そして、新たな歯車。
いったんホームに戻ってから始まりの街に行って、さすがに全部は話せなかったが、ダガーを取り戻したことを過剰表現して何と抑えておいた。
本当にもう大変だった。バーをかしきりにして、誰も入ってこないようにした次の瞬間、ミラルドは泣き出すし、他にもみんなが誤って来るし、でも感謝の言葉ももらったし、お礼もされた。
あと、装備を一般的なレベルカンストプレイヤーと同じくらいにして、土日は一緒にパーティーを組んだ。
ちなみに、今回一緒にパーティーを組んだクラスメイト全員が、自らが所属していたギルドを脱退して、今のパーティーを作り、日曜日、待ち合わせ場所に行ったときには、既にギルド作成クエストをクリア済みだったのには驚いた。
まあ、ギルドの入隊に対してはちょっと断らせてもらった。ギルドメンバーは、他のギルドメンバーのホームの位置を判定することが出来るので、それは少々避けたかったのだ。
その代わり、ブリュゲールの本拠地を攻め込む際に使用した武器に関しては、無償でプレゼントしておいた。そして、『エクスライト・リング』も。
ギルド名は『リトルブレイブス』で、『小さな英雄たち』と言う意味だ。
まあ、結局全員に、中級ギルドのメンバーが装備している程度のギルド制服を制作して渡しておいた。もしゼツヤに会わなかったときは……NPCにメンテナンスしてもらうことになっている。
月曜日になって新しい週になった。
無論。今日子先生とも毎日会うのだが、竜一=ゼツヤだとばれている様子はない。決してばれないと言うわけではないので、一応警戒はしているのだがな。
ちなみに、今までは1年2組の教室の後ろ側が『リトルブレイブス』の集合場所だったのだが、あまりにも占拠スペースが多いし、人数も多いため、いっそのこと同好会でも作ったらどうかという話になったようである。
本来なら、『何をふざけたことを』と笑い飛ばすだろうが、NWOプレイヤーが何人か他にもいたため、サークルの部屋を一つ使用して、『NWO同好会』が出来た。今まで誰かが作ろうとしなかったのか?と言う疑問はあったが、それは今は置いておくとしよう。
因みに、ゲーム一つに同好会と言うのは、今の時代。それほど珍しくなかったようである。
ちなみに、竜一は参加していない。
だが、ホームページを見れば、毎日毎日『NWO同好会』のページに何かいろいろと掲載されている。
まあ、NWOはゲーム内で写真をのこすことはできても、それを現実で見ることはできないので、文章やイラストオンリーではあるが。
とにかく、この年は、開始早々、様々なことがあっていいだろう。
NWO内部の話だが、新ギルド、『リトルブレイブス』が、結成後1か月で一気に上級ギルドになった。まあ、様々な情報をリアルで集めているので、それもまあそうだろう。沖野宮高校に通っているNWOプレイヤーの中で、ギルドに属していなかったものは、ギルドに入って、リアルでも同好会に入ることで、情報と戦力を集められるようになったと言うわけなのだ。
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「いろいろ変わったよな……」
竜一は学校内の自販機で飲み物を購入していた。
その時、竜一の脳内に着信音が起動した。
VR技術が格段に進化して、ゲームや、その他大きな情報を扱わないものであるならば、現在の人間は、何の機材も装着せずに、壁に埋め込んである機械と通信することで、VRウィンドウをリアルでも使用可能になった。年齢制限は、6歳以上である。
まあ、それでも、圧倒的な容量を必要するアプリ(NWOもその一つである)も存在し、また、何らかのトラブルに対応するためにPCはどこの家にもあるのだが。
補足すると、脳と通信するそうしたVR技術とPCでは、複雑さの問題で、PCの方が通信速度は圧倒的に早いのも事実である。
「『コール』」
音声コマンドを言うと、声が聞こえてくる。
『もしもーし。聞こえてるかー』
『ああ、ばっちり聞こえているよ』
補足するが、こういった通信の場合は脳内でのみ会話を行うので、声には出さない。まあ、声を出して通信できるように設定することも可能だが。
『ゼツヤ。おまえ、またでかい歯車を動かしたな』
しゃべりかけてくるのは、ゼツヤの友好的な関係を築いているギルド『エクストリーム』ギルドマスター。『レイフォス』である。本名は『荻野光矢』で、向こうもこちらの名前が『糸瀬竜一』だということは知っているが、あっている時間はNWOの方が圧倒的に長いので、プレイヤーネームで呼び合っている。
そういえば、最近エクストリームの奴らとあっていないな。まあ、ほぼ全員に放浪癖があるのだが。
『それほどでもないさ』
『まあ、何やってもいいっているのがNWOの売りだから何も問題ないけどな。だが、最近戦力が伸びてきているギルド『リトルブレイブス』だったか……。今はかかわっていなくても、お前どこかでかかわっていただろ』
『その通りだ。と言うか、あの制服を考えたのは俺だからな』
『まさかそこまでかかわっていたとはな……お前は話題に尽きないからな。しっかし、自分がうまく駒を進めるために自分で制作した装備を自分で購入した。って聞いた時は、腹筋が崩壊するかと思ったぞ』
誰が教えたのかは……まあ、メンバーを思い返してみればすぐにわかった。
『うるさいな。あの時はあれが一番よかったんだよ』
そう言ってジュースを飲む。
『それも間違えていないな。あと、『ブリュゲール』の4幹部が3幹部になったって知っているか?』
ブーっと思いっきり吹きだした。
『……それは本当か?』
『ああ、本当だ。っていうか、最近のブリュゲールの行動を見ていたら普通にわかったぞ』
一番変わった点は、今までは最低限の上級ギルドとしての運営ができていたが、最近は躊躇がない部分が数多くあるらしい。知識人がいなくなった証拠である。
『ああ……なるほど』
要は、今日子先生が抜けたということか。プレイヤーネームは『ソレイユ』だったか。おそらくは『リトルブレイブス』に入っているのだろう。1か月で上級ギルドになった理由がよく分かる。
『ひょっとして、そのあたりまで知っているのか?』
『ああ、当事者だ。ほぼな』
『なるほど、で、NPCは1人しかフィールドに出られないと……』
そうなのだ。あの時にNPCを緊急収集した際に使用した腕輪。『マスターコールブレス』と言うアイテムなのだが、NPC全員をどのような状況であっても収集可能なのだが、どの代償として、半年間。NPCを一人しかホームの外に出すことができないのだ。
『ま、その辺の事情はいいさ。で、お前、アップデートとかイベントの掲示板はみているよな』
『ああ、今日の朝に発表されていたが、ゴールデンウィークの間。大規模イベントがあるらしいな』
『その打ち合わせも兼ねて、明日、エクストリームのギルドホームに来てくれないか?』
『もともとそのつもりだったからな。明日に行くよ。今日金曜だし』
『ああ、待ってるぜ』
さて、全員がそろうか。
「楽しませてもらうとするか」
武者震いを感じながら帰るのだった。
やっと本っ当のチート武器をかけるようになります。頑張ります。レッツ理不尽!
※イベントそのものを変更させていただきます。なんというか、チートボス一体居ても、逆にそれはそれでモンスターの方がかわいそうになる気がしたので。




