はい本番
「頑張れよ。レイン」
とある闘技場。
そこに、ゼツヤとユフィ、レインがいた。
「はい!頑張ってきます!」
元気満タンと言った様子でいうレインにゼツヤは苦笑する。
どれほど練習していたとしても、本番と言うものは緊張するものだ。
心臓はバクバクで、食べたものの消化が異常に速いし、手汗びっしょりでハンカチが友達と思える。
さて、もう本番である。
情報はそろえているので問題はないと思っているが。さて、どうなるのやら。
元気よく出ていった。
レインがステージに立つ。
そこそこ観客が多い。
……と言うより、ゼツヤは友人が多いのだ。
いや、言いなおそう。友人が多いやつをダチにしているのだ。
そのため、ちょっと声をかけると結構人が集まる。
というか、傘下ギルドが多いアンフィニッシュドレギオンのギルマスがフレンドだからな。
その観客の多さを見ても、レインは特に気にしていない。
ていうかテンションが上がっている。
「本日は、私、レインの闘技場挑戦の身に来てくださり、ありがとうございます。この戦い、皆さんも楽しくなれるような。そんなバトルにしていきたいと思っていますので、最後まで見てくださいね!」
満面の笑顔で言うレイン。
「……慣れてる感じがするよな」
「うん」
「セリフはミズハが考えたものだが……」
現役アイドルのミズハに頼んでセリフを考えてもらった。
これがなかなかいいものだった。
流石本職。
とか何とか考えているうちに、レインがウィンドウを操作していた。
そして、初期地点にポリゴンが集まって行く。
現れたのは……青色の巨人だった。
ランダムで選出されるが、まあ、彼女にとっては当たりだろう。
「さて、本日相手するボスは『ブルー・ジャイアント』……レルクスさんのネタの量が不安ですが、それはいいとして、早速進めていきましょう!」
メタなこと言わない。
「さて、私は召喚士であるわけですが、私のエースをお見せしましょう。我が心を満たす採光よ、剣を取りて新たなる開闢をこの世に示せ!『剣聖エスクード』!」
杖を振ると、青い生地の上に、金色の鎧を着た騎士が現れる。
観客の中からもどよめきがあった。
この召喚モンスター。実はかなり多くのクエストをクリアすることでしか手に入らない『ロングクエストリワード』である。
名称のみを知っており、実際に見るのは初めてのものが多いのだ。
「私のエース。剣聖エスクード。知っている方も多いと思います。さあ、やってやりましょう!『ソード・オブ・ホーリー』!」
エスクードがブルー・ジャイアントに向かって突撃して、剣を光らせて一閃。
HPがちょっと減った。まあ、そんなものである。
「まだまだ行きますよ。エスクードの一番の長所。それは『武器に限り装備制限がない』ということです」
苦笑するものがいる。
ゼツヤだ。
ちょっと前に自分で作った剣を装備できないと言う状況になっていたので、少々羨ましいと思ったのは間違いない。
「早速やりましょう」
レインはオーブを取り出して天高く投げた。
そのオーブは輝くと、エスクードの剣に光が濃縮され、別の剣に変わる。
黒いが、剣の腹には様々な宝石がある。
一発で業物といえるものだった。
「さて、皆さんはオラシオンと言う工房を御存知でしょうか。数々の伝説がありますが、この剣は、現在の最前線でも使用可能なほどのスペックを持っております。なんとオーダーメイドです!」
事実である。
彼女には七本の剣を与えた。
「……大丈夫なのでしょうか」
「俺のメールボックスの新着が加速度的に増えていること以外は問題ない」
ゼツヤが青い顔をしている中で、レインは笑顔である。
何だこの差は。
「さて、この『魔法剣エンディミオン』ですが、さて、その力、とくとご覧あれ!『エレメンタル・フィーバー』!」
エスクードがエンディミオンを光らせる。
すると、全ての宝石が光り輝いた。
次の瞬間、膨大な量の属性攻撃が巨人を襲う。
「圧倒的な物量ですが、これ、実はMPさえあれば連発も可能です。が、次々行きましょう!」
さらにオーブを投げる。
エスクードが左手を出すと、その手に、宝石でできた剣が出現する。
「さあ、お次は『極宝剣オリハルコン』です。その効果。なんと何もない!ただよく斬れ、ただ硬く、そんなシンプル・イズ・ベストな一品。その力をお見せしましょう!」
ブルー・ジャイアントが斧を振り下ろしてきたが、エスクードは左の剣一本で防ぎ切った。
「巨人の攻撃すらも耐えて見せる力、私自身もすさまじいと感じるほどです。が、エスクード。やっちゃいましょう!『ソード・オブ・クロス』!」
エスクードが剣を交差させると、二本の剣が光り輝いた。
そして、そのまま連続攻撃に入る。
「さて、どんどん行きましょう……む?」
ブルー・ジャイアントはブレスの構えをとっていた。
「うわ。ちょっとヤバ!」
ブレス放出。
レインとエスクードを丸ごと包み込んだ。
砂嵐が巻き起こる。
……砂、ないけど。
だが、おさまったとき、そこにはいなかった。
すると、頭上に光が照らされた。
照明に照らされたレインが、お姫様抱っこでエスクードに抱えられている。
二本の剣はもう出番は終わりのようだ。
ちなみにエスクード、空に立ってる。
「さて、まだまだ終わりではありませんよ。さあここで、皆さんにお見せしましょう。おいで、『ウルムドラゴン』!」
ポンッと出現したのは、小さなドラゴン。
デフォルメされている感がすごい。
はっきり言って、強そうには見えない。
「強そうには見えない?いえいえ、そんなことはありません。このドラゴンは、今回、その真価を発揮します。よーく見ていてくださいよ。私は、剣聖エスクードに、ウルムドラゴンでドラゴンシフト!」
そう言うと同時に、レインはそこから飛び降りる。
それと同時に、ウルムドラゴンはエスクードのもとに飛び立った。
ウルムドラゴンが粒子化してエスクードの中に入る。
そして、エスクードが光り輝く。
「我が心を満たす魂の鼓動よ。今、竜の力をとりて、新たなる力をこの世に刻め!『突然変異』!来ちゃってください。『剣聖竜エスクード』」
色合いはエスクードと同じだが、巨大なドラゴンとなっていた。
「さて、今までモンスターを出すだけだった召喚士。ですが、この剣青龍エスクードは、新たなる可能性です。まいりましょう。そして、これでフェニッシュです!剣聖竜エスクード。『SWORD・OF・STREAM』!」
エスクードのブレスは巨人を包み込み……。
そして、そのHPを消し飛ばした。
「これにて、レインの闘技場挑戦は終幕となります。ありがとうございました」
さて、これから大変だ。
「ユフィ、とりあえず俺はいろいろな意味で逃げるから、レインには良かったということを伝えておいてくれ」
「分かりました」
言うが早いか、ゼツヤは走り始めた。




