チートも理不尽も素人には似たようなものである。
「クッキー一枚で半分が削れるってどういうことなんだろうな」
ゼツヤの呟きはいろいろな感情が混ざっていたが、あえてその続きを言うことはなかった。
「「毒攻撃が来るぞ(よ)!」」
セルファとザイルが叫んだ。
(何でこっちの思考が分かるんだよ……まあいいか。もう発動は決まってしまった)
セカイは何とも言えない気分だったが、毒の霧を出現させた。
いろいろな意味で、この霧は鬼畜な性能だった。
そして……リオ以外の全員が毒状態になった。
(リオおおおおおおお!!!!!)
セカイは内心絶叫していたが、まあ、こうなることが予測できなかったわけではない。
リオの運がすさまじいことはもうすでに分かっていることだ。
というか、99%を0%に変えてしまうような奴なのだから、上級スキルに存在する状態異常の確率が100%にならないという制約の上では、毒の霧に意味が無いのは確かだ。
だからと言って下級スキルだと、今度はリオ自身が持つ『毒耐性』系統のスキルの成功率が100%になるので、どのみち毒にはならないのだが。
「なんていうか……ずいぶんと人間っぽい感じだよね」
アルモが呟いたが、まあ、そんな気分を全員持っていた。
「まあ、まずは回復しないとな。それ!」
ゼツヤは瓶を上空に投げた。
そのビンは空中で割れると、雨となって降り注いだ。
すると、全員の毒状態がなくなった。
「俺特製の治療剤だ。あ、ストレスと肩こりと神経痛と筋肉痛とヒステリーにも効くぞ」
「「「「「温泉か!」」」」」
全員に突っ込まれた。
リオは思いだしたかのようにルナードを見た。
「ルナード。お前、最近ストレスがたまってるって言ってたよな。入ったらどうだ?」
「うるせえな!誰のせいだと思ってんだ!ていうか、VRで入っても仕方がないだろ!」
まあ、それはリオのSPを務めることになってしまった自分を恨め。としか言えないのだが、そんなことははっきり言って後まわしだ。
「しかし、やはりと言うか、HPが多すぎるな」
ダマスカスが呟いた。
確かに、あまりにも多い。
他のステータスもかなり高いのだが、それを含めてもやはりHPが多すぎる。
「もう一回放り込むか?」
サーガの呟きにユフィが振り向いた。
ORACLE・ZEUSがピクッと反応した。
どうやら、相当いやのようだ。俺もそうだが。
「さて、このままやっていてもグダグダになって行くのは間違いないか」
リオの言い分はもっともだった。
★
さて、ORACLE・ZEUSを倒したゼツヤ達は、もう全員が集まっていると言う感じで宴会を開いていた。
え、略しすぎだって?だってあのままやってもどうせ動作を言うだけだったんだもん。作者が面倒だ。
「そう言えば、ダマスカスがいるロスト・エンドって、どういう集団なんだ?」
「それは僕も気になっていたな。第八十一話の『水面下の激戦』で、思いっきり壊滅フラグが立っていただろう」
「余計なことを思い出すんじゃない。まあ、その通りだったがな。あれから大変だったが、いろいろと手回しをして何とか復帰したのだ。この世界にも時々来ているのだがな」
「ん?じゃあ、ダマスカスみたいな存在って他にもいるの?」
「いないことはないと思うぞ。他にも、『アムネシア』と呼ばれる世界から来ている部分もある」
そう言う設定と言うことか。
「今日はなかなか楽しかったぞ」
「ああ。そうだな」
「そう言えば、あの中に入っていたのは誰なんだろうな」
「おそらく……セカイだろう」
「運営か」
「ああ」
リオは最初から分かっていたのだが、あえてここまで言わなかった。
「案外子供っぽいのかね?」
「だろうな。でなければ、この世界はできないだろう」
「それもそうか」
そう言うものなのか、それは分からないが。
まあとにかく。終わったな。
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セカイはぐったりしていた。
「あ~。何だあのチート連中は」
「チートではなく理不尽なのでは?」
矢次は付き合わされていた。
「まあ、僕からするとね。チートも理不尽も同じようなものだよ。まあ、誰にでもできるわけではない。と言う意味ではチートではないが、どちらにしても、あの理不尽と戦うためにはああするしかないしね……」
「だからこその遠慮のないHPですか?」
「そういうことだよ。まあ、はっきり言っていろいろと燃え尽きた気分だ。しばらく休むよ。うん」
そう言うと、世界は寝てしまった。
「理不尽。か……今回は描写されることなく終わったけど……」
「……いうな」
珍しく、セカイはふてくされていた。




