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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
クラスメイトで団結しよう。主人公除く。
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ゼツヤの全力と大人の経験値

 主人公のパワーバランスがおかしいというご指摘を頂きました。以前は『ゼツヤは個人でギルドを壊滅可能』でしたが、『所有NPCを完全装備で全員投入すれば、そんじゃそこらのギルドにはたいてい負けない』と言った感じになります。規模的に納得いかない方もいらっしゃると思いますが、そこは、タグの『アイテムチート』『究極のご都合主義』『主人公補正(極高)』と言うことで、どうにか納得してください。

まあ、こうなることは分かっていた。


 そもそも戦力的には足りなかったのだ。悔しいといえば悔しいが、このゲームのハードさを知っている者からすれば、この挑戦はあまりにも無謀である。


 どうなったのかを簡単に言おう。


①戦闘開始


②全員が突撃しあう。


③最初は何とか持ちこたえる(優勢にはなっていない)。


④数分後、痺れを切らしたヘリオスが、超超レアアイテム(どこから入手した?)である、『超チートモンスター召喚の宝石』を使用。


⑤出てきたドラゴンは次々と敵味方関係なくプレイヤーを蹂躙。


⑥あっという間にこちらサイドはゼツヤ1人に。←今ココ。


さて、まあ、完全に予想通りだったからいいんだが……あとでなんていおうか。


「フハハハハハ!先ほどまでの勢いはどうした!このダガーを奪還するのではなかったのか!?」


 やかましい。こっちはいろいろ考えてやっているんだ。いや、こちらサイドがほぼ全滅するのに考えもくそもないのだが、それはいいとして。


「いや、この状況は俺のシナリオ通りさ」

「何を強がっている」


 うん。逆の立場だったら強がっているようにしか見えないよ。俺としてもね。


「俺はまだ何にも奥の手を出していないぜ?」

「ずいぶんと余裕だな」


 NPCを全員投入すれば行けるのだ。問題はタイミングである。ワープ機能で、一気にこっちに投入できる手段を用意している(右腕の腕輪)ので、すぐにワープ可能なのだが、タイミングがね……。

 ……いや、今か。


「さて、投入するとしよう。『オールコール・NPCソルジャー』!」


 右腕の腕輪が強烈なまでの光を放つ。


 次の瞬間。ゼツヤの前には、完全武装したNPC25名が、5×5できれいに隊列を作って並んでいた。


「いや、なんで!?」


 少々予想外だったが、気にしたら負け。ゼツヤもさっさと装備を変更する。


「な……なんなんだ。そいつらは……」

「俺が所有している全NPCだ。さあ、反撃と行こうか」


 さて、まずはドラゴンを倒さなければ。


「さあ、理不尽の極みを知れ!いくぞ!野郎ども!」


 全員が咆哮を上げる。

 あと、『行くぞ』と言ったからにはゼツヤが最初に突撃しないといけない。そのあたりがきっちりしているのがNPCなのだ。はぁ。


 ドラゴンの名は『超越邪氷竜神 ブリザライオス』と言うモンスターで、圧倒的なまでの氷を操る化け物である。

 心配無用。こっちは全員に『氷耐性(極高)』の効果のあるアクセサリーを持たせているのだ。問題ない。


 いや、物理攻撃もハンパないので注意しなければならないので、ゼツヤはもう本当に忙しい。指示するのが。


 さて、メタ+理不尽+優秀な指揮官(謎)=モンスター相手に敵はなし。である。


 氷のブレスを、魔法障壁や盾で防ぎ、的確にダメージを与えていく。ゼツヤはこういった戦闘の際は、可能な限り安全策で行くのでスピードはやや落ちるが、それは仕方のないこととしてほしい。


 恐ろしく怖い爪の振り払いを盾を構えたゴディアスに防いでもらい、確実な一撃を叩きこむ。


 尻尾も同様。防いでもらって生まれた隙を総攻撃。


 途中何人か死んでいくが、かなり後方にいる回復班が『蘇生』して、再び前線復帰。


 本来なら、26人で、ここまでの戦闘ができるわけではない。


 だがゼツヤは、長い時間をこのNPCたちと共に過ごしていて、さらに、パーティーにおいて何が重要なのかと言うことを、長年のNWOプレイによって学び続けた。


 ゼツヤが基本ソロで行動しているのは、こういったNPCを率いて集団戦闘を行う際、『こういう場面でこういう手段を持っているヤツがいたら効率がいいだろう』と言うことを学び続けているからである。


 圧倒的な耐性。

 高い物理攻撃力。そしてそれを連続して行わせることを可能にする装備。

 強力な魔法。そして、連続使用を可能にする高性能ポーション。

 ダメージを受けた際の即時回復。

 HPが尽きた際の蘇生準備。


 そして、それらすべてを可能にする、ゼツヤ自身のキャリア、そして、その経験から製作できる圧倒的なまでの装備。


 ゼツヤがギルドに属していないので、形式上はソロだ。

 だが、その総合戦力は、そんじゃそこらのギルドを上回る。

 他のトップクラスギルドに攻め込んだら、きっとうまくは行かないかもしれない。それらのギルドのトップ達は、確実な『何か』を持っているからだ。基本戦術が『特攻』のみであるブリュゲールだからこそである。


 ゼツヤ自身。どこかに侵攻したのは初であり、今までこんなことは考えたこともなかった。

 それはある意味当然で、どこかに攻め込めば、必ず何かを言われる。勧誘。苦情。崇拝。なんでも来るだろう。


 だが、これほどの戦力を動かした理由は、もしかしたらたった一つかもしれない。

 その答えは『クラスメイトのためだから』だろう。


 これからどんな評価をされるのかはわからない。今嵌め込んだ歯車は、間違いを招くことしかできないかもしれない。だが、それでも何かがゼツヤを動かしたのだ。



 本来なら普通に即死級の攻撃をしてくる(超チートと言われる原因)ブリザライオスだったが、ゼツヤ率いるNPC軍団の前にはなすすべもなかったわけではないが、それでも戦力は足りなかった。


 いや、実質、ゼツヤの『メタ』。要するに、氷を使ってくる奴に氷耐性をおもいっきりつけるという手段をとらせると、ひどい目に会うのは最初から決まっているのだ。


 ブリザライオスが、そのHPを0にして、消滅した。宝石は砕けなかったが、もう少ししか光を放っていない。しばらく、使用はできないだろう。


「な……何者なんだ。貴様は……」

「ゼツヤだ。そんじゃそこらのレベルカンストプレイヤーだよ」


 本当に虚しい。本当なら、『工房オラシオン全アイテム生産者・ゼツヤだ。よく覚えておけ』と言いたかった。本当に。


 プレイヤー数は、ゼツヤとヘリオスを含めて3人だけだった。

 ……3人?


「まさか、あの中で生き残っている人がいるなんてな」


 そのプレイヤーは女性だった。

 鎧を着ているし、その色はやはり青い銀色だった。だが、その流れる金髪は、とてもにあっていた。


「初めまして、私は『ブリュゲール4幹部』を務めている『ソレイユ』よ。よろしくね」

「ひょっとして、このホームの構成を考えたのは……」

「他でもない私よ。ここまで来たあなたには本当に、心からの称賛を与えるわ」

「どうも。で、どうするんだ?」

「私1人であなた達には勝てないわ。それにしても、すごいのね。そんなにたくさんのNPCを集めて、しかも、その装備、全て『オラシオンシリーズ』でしょう。あなたがどれほどそのNPCたちを大切にしているのかが分かるわ」

「褒めても何も出ないぞ」

「あら、ごめんなさいね。あなたの言葉がどうも子供っぽくてね、わたし、リアルでは教師だから、あなたみたいな人は気になるのよ」


 そう言うものだろうか。少なくともゼツヤには分からない。


「それにしても、私のクラスのみんなが、私のギルドに向かってくると分かって、わざわざ超超レアアイテムまで用意したのに、まさか返り討ちになるなんてね。まあ、私の教え子たちは全員いなくなってしまったけど」


 ゼツヤは全身に衝撃が走った。

 目の前にいる女性プレイヤーの言っていることが本当なら、プレイヤー・ソレイユは、リアルでは竜一たちの担任教師、『成神今日子』なのだ。

 確かに、担当科目は『政治・経済』で、部活は『剣道部』の顧問である。だが、これはいくらなんでもすごすぎである。

 これからは妙な目で見ないようにしよう。


「そうですか、なんというか、世間は狭いですね」

「そうね、私もそう思うわ」


 もう、これ以上話すことはないか……。


「さて、まあそれは置いておくとして、ヘリオス。そのダガーを返してほしいんだがな」

「こ……これは僕のものだ!絶対に渡さない……!」


 次の瞬間。すでにそのダガーはゼツヤが奪い取っていた。


「感情が高ぶりすぎだ。まあ、今回はもう終わりにするとしよう。目的は達成したわけだしな。もうここにいる理由はない。出来るなら、今ここにアイツらがいればよかったんだが、もともと俺の最高戦力を引っ張り出さなければいけないような状況だったんだ。それは欲張りってものなのかね?」

「そうかもね。そう言えば、あなた、名前は?」

「先ほども言いましたが、ゼツヤです」

「そう。ばっちり覚えておくわね」

「……そうですか、俺はもう行きます」

「ふふ、さようなら。あ、今回のことだけど、私が情報操作して、全てなかったことにするわ。全ての証拠を消しておいてあげる。というか、今回のことが広まったら、ブリュゲールの運営に大きく支障が出るからね。あなたにとってもいい案でしょ?」


 この女……。

 だが、頷くしかないのもゼツヤである。

 ……やはりと言うかなんというか、いろいろと経験豊富な大人にはかなわないということなのだろうか。


「まあ、一応、感謝します。借りは作りませんよ」

「私もそんなつもりはないわよ。でも、次来たら、全部ばらすからね」


 背筋が凍る。


「もう俺は行きます」


 逃げるように立ち去った。NPCはすでに帰還させてある。

 どうにもならない壁があることを、本当に理解した日だった。


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