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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
短編集第二弾
159/218

沖野宮高校体育祭

 さて、短編集とは言うが、これは作者のネタがなくなり週一ペースでの投稿となって、書く前にいろんなことが終わってしまっているからこその補充話みたいなものである。

 まあ、こんなクソ寒い時期になんで体育祭の話をするのかというと、それは作者にもわからない。何となくである。


「あっつー……」

「竜一、大丈夫か」

「まあ、なんとか。ていうかさ。何で今の時期に体育祭ってあるのかな……」

「知らん。昔の発案者に言え」


 いえるわけがないことは分かっているが、それでも道也はそう言う奴なのである。


「竜一は何に出るんだ?」

「いろいろ出るが、借り物競争は出ても徒競走は出ん」

「俺もだ」

「お前も?……あ、本当だ」


 ウィンドウで確認すると本当にそうだった。


「何を引くんだろうな」

「やってみれば分かる」


 当然である。

 しかし、体育祭。

 あるものにとっては楽しいかもしれんが、竜一にとっては何も面白くない。

 熱いしだるいし。

 だが、しなければならないことはすでに分かっている。

 というわけで、借り物競争の時になったら並ぶのである。

 まあ、ゴールすれば問題はないか。

 ということで、ダッシュ!

 あ、スタートするときに火薬が入った拳銃を鳴らすと思うが、今の時代、そんなことはしない。

 何かよくわからんランプみたいなもので全員一斉に走る。

 カードを拾って捲った。


「……よし……ん?」


 竜一はその内容を見て顔をしかめた。

 すぐさま、自分のクラスのテントに走る。


「桜!来い!」

「え、あ、うん!」


 一瞬戸惑ったようだが、ちゃんと来てくれた。

 チラッと保護者用テントを見ると、両親ともに来ていた。

 というより、薫は髪が白くて長いので目立つのである。

 ビデオウィンドウを出してボーっと撮っていた。

 その横にいるのは、長い茶髪を後ろでまとめている美人だ。母の糸瀬美野里(いとせみのり)である。

 流石、30歳代前半。周りとは若々しさがすごい。

 で、竜一の列で一番初めに確保できたのは竜一だったようで、ゴールテープを切った。


「ふう、竜一君の引いたカードってなんだったの?」

「……」

「どうしたの?」

「……」


 竜一は、その内容と言おうとはしなかった。

 カードを速やかに返却する。

 桜に聞かれまくっていたのだが、それでも言わなかった。


「竜ちゃん。何があったんだろうね」

「さあ?」


 二人とも目がいいので、状況は何となく分かっている。

 その上で、美野里は首をかしげていた。

 ただ、父親と言うか、夫である薫にはなんとなく分かっていた。

 いや、厳密には分からないが、カテゴリーの話になるのだが、あのカードの内容は、『自分が一番怖いもの』であると。


----------------------------------

 そしてそれをなんとなく察している道也だったが、今度は自分が走るのだ。

 自分も引いた。


『自分の弁当』


 一瞬絶句するが、自分のクラスのテントに戻って弁当を持って走る。

 なかなかシュールな光景ではあったものの、言いたいことが一つある。

 借り物と言うより……持参物だよな。

 これが借り物だと言うのだろうか。

 よくわからん価値観だが、一番だったので問題はない。

 竜一に会った。


「自分の弁当だったのか?」

「ああ」

「……持参物だよな」

「それは俺も思ったが……あえて考えないことにした。で、お前は何だったんだ?」

「……『自分が理不尽と感じるもの』だった」


 ……何を言えばいいのかわからない。

 自分が引いた場合はどうだっただろうか……。とりあえず生徒指導の先生でも引っ張っておけば問題はないだろう。


「自分が理不尽と感じるものと出て彼女を連れていくあたり、罪な奴だな」

「お前もな。しかし……いつまで隠し通せるのかね……」


 勘がいいからな。まあ、数日中にはばれるだろう。

 あ、直樹が走ってる。

 みんな。忘れていないか?ジョーカー所属の魚好きであるエルザのことだぞ。

 カードを引いた。

 中は見えなかった。

 だが、顔をしかめている。


「何を引いたんだろう」

「さあ……」


 そして海道は……保護者席に走って行って、カードを見せながら叫んで、皆が驚愕する中、竜一の父親である薫を呼び出して引っ張り始めた。

 どんな反応だ?

 薫も今日はTシャツ短パンだからな。弟的な雰囲気である直樹と走っていると、なんかちょっと保護欲が増加する。

 ただ……直樹よりも薫の方が走るの速いな。直樹ほぼ引っ張られてる。

 そして走り終わったあと、直樹と会った。


「なんて書いてたんだ?」

「『友人の父親』って書かれてた。竜一のお父さんはいますか!って聞いたら来てくれて、しかも僕よりも足が速いから、二重でびっくりした」


 だろうな。

 ちなみにこの競技では、人を連れて走った場合。大会役員の生徒が送り届けることになっている。

 これは竜一が見た薫と大会役員の生徒の二人の会話だ。


「それじゃあもどろうか。今日はお兄さんやお姉さんを応援しに来たのかい?」


 どうでもいいが、薫本人が51歳なので、年上となると、ちょっと高校生ではいられない。法律的には問題ないけど。


「いえ、息子のです」

「え……」

「これでも一子の父親です」


 大会役員の男子生徒は何の冗談かと思ったようだが、保護者席に戻って、美野里が爆笑していた。

 真実を知った生徒の表情は驚愕だとか困惑だとかいろいろあったが、追求せずともよかろう。

 あ、桜が走ってる。

 カードを引いたが、見ていない。というか、目線の先が変化していないのだ。そのまま走り続ける。

 で、そこら辺にいた中年男性を引っ張ってゴールした。

 大会役員に止められたが、話しあって問題はなかったようである。

 そりゃ、カードを見ることもなく走ってきたら不自然だよな……。

 中年男性はちょっとの間、桜の手をにぎにぎしていたが、桜は手首をひねって脱出。

 こっちまで走ってきた。


「なんて書かれてたんだ?」

「『自分をファンだと考えている人』って書かれてた」

「なんで見なくてもわかるんだ?」

「勘」


 なにも借り物競争で発揮しなくてもいいと思うが……。

 というか、よくあの男性が自分のファンだと分かったな。

 道也は少々怖くなってきたが、今更と言えば今更なので何も言わないことにした。

 というか、多くの人の場合ものすごく困る気がしなくもないが、そこのところどうなのだろう。

 ……今度はデュリオか。

 カードを見て……諦めた。

 え……なんて書かれてたんだ?

 結局何も持たずにゴール。

 無論だが、点数はない。


「何だったんだ?」

「『吟遊詩人』だ」


 いるかそんなもん!

 道也はげんなりしたが、次は冬香のようだった。

 カードをめくり……デュリオの二の舞に。


「何だったんだ?」

「『スノーボード』って書かれてた」


 明らかに季節はずれである。


「なかなかユーモアな内容だったね」


 確かに、まあ、友人の父親と言うだけなら普通なのだが、竜一の父親を連れてきたばかりに変なことになったのだが。

 何


----------------------------------

 視点を竜一に戻す。

 さて皆さん。玉入れを御存知だろうか。

 小学生か中学生のころにやったと思うが、それのことだ。

 入りそうでほとんど入らないが、案外他の人が結構いれているパターンが多い。

 ちなみに作者は全然入らなかった。一回も入らないことだって普通にある。


「さて、やるか」

「ああ」


 わざわざ男女で分けてやるのが沖野宮高校クオリティーだ。沖野宮高校では種目ごとにクラスごとで点数が入っていくので、直樹は別である。

 まあややこしいことはいいとして、スタート!


「よっこいしょ!」


 一度に何個か掴んで投げる。

 全部一番点が高いところに入る。要するに、一番高い位置にあるポケットだ。

 デュリオも道也もなかなかやるな。まあ、全員手先は器用だからな。

 で、結局俺達が一番多かった。

 まあそれはいいのだ。

 女子の方だったが……桜が拾ってポイ。拾ってポイ。を連続するだけで、一番高いところに玉が入って行く。もはや訳が分からん。


「借り物競争で俺が選んだものは、案外間違いではなかったのかもしれんな」


 そんなことを考えながらも、自分のクラスのスコアボードに点が追加されていくところを見ていた。

 去年はメンバーがそうでもなかったが……まあとりあえず、こんなもんだろう。

 あとまぁ……来年は、借り物競争をまともなものにするように進言しておくか。

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