決勝戦 ゼツヤVSリオ
決勝戦 ゼツヤVSリオ
今年から三位決定戦がなくなったことで、準決勝が終わった時点で決勝戦になる。
「さて、どうしようか」
「君もか……」
リオも、そう言われる理由があることは知っている。
だが、どういえばいいのかよくわからないのも事実だった。
まあいいか。
お互いに剣を構える。
カウントゼロ!
ゼツヤは剣を構える。
「『アイテムクリエイト・アルカトラズ』」
リオは『なぜ監獄島?』と思ったが、別にそう言うことが関係ないのだということはすぐに分かった。
あるものが生成されたのだ。
見た感じ、重機関銃である。ガトリングガンである。
「はい?」
リオはとぼけた声を出した。
「ふふふ、カムイから渡された拳銃型マジックアイテムを強化させたものだ」
主人候補生もいい加減にするべきだろう。
「ということで、ファイアー!」
機関銃から魔法の弾丸がちょっと頭に来るほど連射された。
リオは……ただ立っていた。
なんかデジャヴ。
「どうやら、ミリオンレインと同じコンセプトに設定されているようだな」
当たるとか当たらないとかそう言う問題ですらなかった。
「この役立たず!」
ちなみに、自分で作ったものを役立たず扱いしたのは初めてである。
「ていうか、どんだけやばい運をしているんだ?」
「まあ、日本の経済を変えれるくらいには……」
「そういやそうだったな。ちょっと分けてほしいぞ本当に」
リオは少年時代、工作の時間に作ったお守りを友達に渡したところ、その友達が宝くじで一等を当て、懸賞を根こそぎかっさらって、パチンコに入って大儲けして、それがばれて担任の先生が怒髪形態に移行したという経験があるのだが、言わないでおくことにした。
ゼツヤは剣を構えた。
「さて、やるか」
「すごく現実逃避している感じだな」
「当たり前だ。行くぞ」
ゼツヤは突撃した。
斬撃の押収になる。
はっきり言って、その精度はサターナよりも上のものだった。
しかし、当たらない。
「シッ!」
リオが剣を弾き飛ばすと、ゼツヤの手から剣が離れた。
ゼツヤは舌打ちすると、拳を光らせる。
「『体術』スキルも持ってたのか」
「『大噴火昇刻拳』!」
噴火する火山のように拳が燃え上がり、リオはガードした。
だが、リオの体が勢いよく持ち上がる。
「くらうのじゃ!」
「え、誰!?」
上から声が聞こえてきたと思ってみると、黒いワンピースの少女が金色の両手斧を振り下ろしてきていた。
剣を振り上げて防御するが、振り下ろしてきた斧に対して剣で防御出来るはずもない。
リオは衝撃に耐えながらも着地した。
そして、すぐさまバックステップ。
居た場所に斧が振り下ろされた。
「忘れていた。というか、良く思いついたな……」
「ふむ、なかなかの対応力じゃな」
「それはどうも、確か、オラシオンだったか」
「そうじゃ」
「最初は出すつもりはなかったんだが、俺がオラシオンだってばれているからな」
「そう言えば、その少女の名もオラシオンだったか。なるほど、躊躇なく出せるわけだ。ところで、メイン武器は斧なのかい?」
「何でも使えるのじゃ。ただ、剣の方が一番いいかのう……」
本人が剣だからね。
「しかし……いや、いいか。考えることを放棄しよう」
リオは剣を構えなおした。
ゼツヤはオラシオンを使え前に使っていた青い剣を取り出して、オラシオンは短剣を二本出した。
「仕方がない。ゼツヤ、使わせてもらうぞ」
「別にいいぞ」
リオはウィンドウを操作する。
そして、一本の剣を装備した。
それはまぎれもなく、『極宝剣シルバニオル・レゾナンス』だった。
ゼツヤは、リオの渡したのである。
「まさか、ゼツヤの方からこの剣を渡してくるとは思ってもいなかったが……」
「クリスマスプレゼントだ」
「面白いことをいうやつだ」
リオは二本の剣を構えた。
「性能差がありすぎる二刀流は好きではないが、まあいいとしよう」
「ルールに反していない二対一だもんな。まあ、それがちょうどいいだろうぜ」
「その方が面白そうじゃしのう」
全員一致と言うことで……。
全員が走りだした。
なかなか削れない。二刀流の方が強いな……。
「そうそう、僕には鑑定出来ていたぞ」
「ん?」
「僕の職業は『鑑定師』なんだ」
またそんなマイナージョブを……。
「見せてやるよ。『オラクス・ゼウス』」
次の瞬間、リオの全身に純銀の閃光が走る。
そして、全身に、エフェクトの装甲が出現した。
「それは……」
「君の最高傑作の片手剣の性能さ。さあ、行くぞ!」
リオが走ってき……。
ゼツヤは本能でサイドステップを行った。
危ない。ちょっとかすった。
「速いな……」
オーバーライド『神速』起動。
そこからは、長高速戦闘になった。
オラシオンが蚊帳の外である。
「ち……剣のポテンシャルが足りない。オラシオン。戻ってこい!」
「む……おお、了解した」
剣に戻ったオラシオンを構えて、お互いに二刀流で斬り続ける。
「ふふふ、なかなか楽しいな」
「ちょっと早すぎだろ。一体どれほどのステータス強化が発生しているんだ?」
「全ステータスを三倍する。それがこの装甲の力だ」
「そりゃ、この状態の俺でも追いつくのが精いっぱいだろうな」
「まだまだいけるぞ」
「無茶いうなよ」
オーバーライド多重起動 『身近な神託』『パターンチェンジ』『本能移行』
全力だった。
しかし、それでも、越えられないものは越えられない。
ゼツヤは、敗北した。
優勝者、リオ。
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「ゼツヤ」
「どうしたんだ?サターナ」
サンタがプレゼントを落としている中、ある建物のテラスで、柵に手をかけているゼツヤにサターナは話しかけた。
「なぜ、リオにあの剣を渡したんだ?」
「さあ、何でだろうな。ただ……生産職としては、強いやつに自分の作品を持ってもらいたいのは願望みたいなものだ」
「それに関しては理解できるが……しかし、これで、ただでさえ強いやつがもっと強くなったな」
「ま、それでもいいだろ。この世界は、そう言うものだ」
自由だ。
この世界は、そう言うものだから。
「別に、俺が渡したことが正しかったのか、間違いだったのか、それは俺は知らないし、俺が決めることじゃない。だが俺は、渡したことに、価値があると思っているよ」
「まあ、お前がそれでいいと言うのなら、反対する絶対的な理由があるわけでもないからな」
サターナは溜息を吐いた。
吐いた息が白い。こういうところも再現されるからな。
「さあ、来年はどうなるんだろうな」
「わからん。まあ、現実逃避の材料になり層なのはあまり来てほしくはないな」
「確かにな。そう言えば……」
ゼツヤは思いだしていた。
「どうした?」
「いや、あと三か月で、俺達は高校三年生になる。というか、レイフォスが今年で大学を卒業するはずだが、大丈夫なのか?」
「しらん。まあ、作者は大学受験をAOで通ったらしいから、普段はもうサナギの生態模倣だが」
「そう言えばそうだったな」
空を見上げた。
「何があるのかは俺達にはわからないが、どうなるんだろうな」
「それは知らないが、来年の年末のデュエルカップで、この小説の本編が終了するという噂が……」
「本編って言うか、章ごとの文字数そんなに長くないし、延々短編集みたいだけど」
「言うな」
まあ、それは今はいいとして。
「まあとにかく、メリークリスマス」
「ああ、メリークリスマス」
「ついでに良いお年をって言っておく」
「それに関しては同感だ」
サターナは呟いた後、腰を上げた。
「ふう、俺はもうそろそろ帰るとしよう」
「ああ、それじゃあまた」
サターナは右手を上げて、そのまま歩いていった。
「さて、俺もどうするか考えていかないとな」
ゼツヤは空を見上げた。
NWOはゲームの世界だ。
当然。この世界以外に惑星など設定されていない。
だが、星空はある。
ゼツヤはしばらくの間。夜空を見上げていた。




