第一試合 シャリオVSライズ 第二試合 ヘリオスVSゼツヤ
トーナメント表。
第一試合 シャリオ VS ライズ
第二試合 ヘリオス VS ゼツヤ
第三試合 カムイ VS エルザ
第四試合 レイフォス VS フィノ
第五試合 サターナ VS ドレイク
第六試合 チアキ VS アルモ
第七試合 ミズハ VS レム
第八試合 リオ VS ザイル
と言うものだった。
なお、今年から、三位決定戦がなくなったらしい。ということがルールウィンドウに記載されていた。
----------------------------------
第一試合 シャリオ VS ライズ
剣と鞭を兼業できる剣を握ったライズと、よく見るクリムゾンのマントのシャリオがステージに立った。
「一回戦目からお前とは思わなかった」
「俺もですよ先輩。こうして向かい合っているのって、あの攻城戦以来ですかね?」
「そのはずだと記憶している」
二人にとっては記憶に新しいのである。
「俺の右腕を超える何かは持ってきたのか?」
「最後の最後まで思いつかなかったんですよね。だから、持っているカードをいろいろ出すことにしますよ」
「来い、全て叩き潰す」
カウントゼロ!
「『クライシスブリザード』『スペリオルオーブ』……行きますよ『アブソリュート・ゼロ』!」
膨大な冷気が放出される。
「超級魔法の合成か。だが、わざわざ警告はいらん」
ライズは鞭の部分を伸ばして、前方で旋回させる。
冷気のすべてが、鞭に阻まれて通ることはなかった。
「おっそろしい」
「お前の目もな」
アブソリュート・ゼロは、冷気攻撃ではない。
ところどころある氷の欠片、これが攻撃の本命であり、これを当てることで、当たった部位を凍らせることが出来る。
エクストリームメンバーには叩き潰せそうなメンバーが数多くいるのだが、大したスピードもない鞭で全て叩き落とされるとは思ってもいなかったのだ。
「こちらからも行くぞ」
「嫌と言ったら?」
「押し通る」
「まあもちろんそうですよね」
ここまで魔法がことごとく効かないのも初めての経験だ。
一発やっただけでことごとく、と言うのは妙かもしれないが、シャリオにとっては十分にその言葉だけで納得できるのである。
ライズが突撃すると同時に……シャリオも突撃した。
ライズは頬を動かしただけだった。
シャリオは、迫りくる鞭を魔法で軌道をずらして進んで行く。
「『ラースインフェルノ』!」
闇と炎の混合超級魔法だ。
黒い炎がシャリオのすぐ横から放出し、ライズに襲い掛かる。
「チッ」
ライズは舌打ちすると、その場で垂直ジャンプ。
ただ……。
「先輩、右腕以外は普通以下ですね」
「だからこそ右腕で補うだけだ」
と思ったら、踏み切った足の裏を、ジャストポイントで鞭の先端を当てて、そのまま体を押し上げて回避した。
「ちょ……それ、自分の襟を持ち上げて空飛ぼうって人の理念でしょ。何でできるんですか?」
「感心している場合ではないぞ」
感心しているのではない。ちょっと理解できなかっただけだ。
と思ったら、押し上げていた鞭の先端が今度はこちらに来ていた。
上半身を後ろに逸らして回避する。
「っぶな!」
「なかなか当たらんな……」
そりゃパターンチェンジと比べれば怖くはない。
とか考えている場合ではない。
「『イクシード・レイ』!」
右手を出して魔法を発動する。
魔方陣が出現し、極太の閃光が放出された。
「フン!」
ライズは鞭の先端を地面に突き刺すと、鞭状態から剣の状態に移行させる。
そうすることで、先端の方に全体が向かうことになり、空中にいたライズの体は地面に下がった。
そして、後ろに下がった。
「一体どんな右腕してるんだ?本当に」
鞭に限らず、長い伸縮性の紐だったり、隠し持てるロープだったりと、そう言ったものを使って三次元的な動きをするものもいないわけではない。
だが、何もないコロシアムでそれをするとは思わなかった。
「いいのか?」
「何が?」
「今年のほとんどの試合、作者のネタがないから、1500文字程度で全て片づけられるんだぞ」
もうそろそろ決着が付くと言う意味である。
向こうを超える手段がないということは……倒されるの俺!?
「そういうことだ」
シャリオの視界を、鞭が覆い尽くしていく。
「『スペルバーストフィールド』」
あ、まず……。
魔法もつかえないシャリオに、勝てる見込みなどなかった。
「っていうか、本選にシュラインが出ないからって、あんたがメタフィクションしなくてもいいだろうに……」
シャリオの言葉は、当然、誰も聞いていなかった。
----------------------------------
第二試合 ヘリオス VS ゼツヤ
ブリュゲールのギルドの服を着たヘリオスと、いつも通りのゼツヤがいた。
「僕が来るとは思っていなかったようだね」
「ああ、ちょっと予想外だったが……いずれ来ることがあることを予測できなかったわけではない」
「?」
「単純に、疑問が多かったというだけの話だ」
「なるほど、それに関しては同意せざるを得ないな。それと一つ、聞いてもいいかな?」
「なんだ?」
「ゼツヤ、君は、このゲームの運営って何人いると思う?」
「まず、根本的なシステムの部分を行っているものが一人、あと、いろんなところでこそこそしているのが数万人か一人、ってところだろうな」
ヘリオスは微笑むだけだった。
二人は剣を構える。
カウントゼロ!
二人は飛び出した。
そして、いきなり鍔迫り合いになる。
だが、すぐにゼツヤの方からそれをそらして、突きを放つ。
ヘリオスは剣の腹でその突きを防御する。
この時点で、ヘリオスの武器も耐久値無限だろう。
突き攻撃は攻撃範囲が狭いがその分威力はある。
そのため、耐久値に大きく響くのだ。
この剣の攻撃力くらい、自分の情報収集能力で集めていても不思議ではないので、剣の耐久力を考えるのであれば、突きを剣の腹で受け止めることなどしない。
まあ、もともと難易度がちょっと高すぎるような気がしなくもないが。
そこからは斬撃が響きまくった。
何と言うことが正しい表現なのかわからん。
ただ、うまく掴みとれない。
ゼツヤは跳躍してはなれた。
「なあ……思うんだが、癖まで時々変わってないか?」
「お、やっぱりそこまで分かるんだよなぁ。さっすがゼツヤ」
……口調と表情が思いっきり変わっている。
「なるほど、『ヘリオス』っていうのは、顔の中の一つでしかなかったということか」
「ま、そういうことだ。で、どうするんだ?」
「いろいろやり方はあるんだがな」
オーバーライド『ベリアルマインド』
「……雰囲気が変わったね」
「まあな。で、かかって来いよ」
そう言いながらも、ゼツヤは剣を背中の鞘に納めた。
「使わないのかい?剣」
「今の思考はそれを必要としていない」
「それじゃあ、遠慮なく」
ヘリオスが突撃してくる。
しかし、体がゼツヤから三メートルのところに来た瞬間。それが急にとまった。
「……どうした?」
ゼツヤは不敵な笑みを浮かべる。
「君の場合、人格を用意するとか、そんな話では済まないな」
「当然だろう。俺の能力は、お前の上位互換なんだから」
人がどこまで何かのまねをするといっても、それをフィクションととらえる以上、本人らしさが残る。
ヘリオスの場合、違法行為に踏み込むことはない。
だがしかし、ヘリオスは、目の前にいるゼツヤが、それすらもしてしまうのではないかという錯覚にとらわれていた。
だが、突撃しない理由もない。
ヘリオスは一気に跳躍して振り下ろした。
しかしその一撃は、左手だけで簡単に止められる。
そして、右の拳が光り輝き、ヘリオスの腹に直撃した。
そこから起こったことを、ヘリオスは信じ切れなかった。
HPが……その一撃だけでなくなったのだ。
「分からんようだから教えておく。今俺が付けているほとんどのアクセサリーは、クリティカル発生時のダメージを激増させる。で、俺の剣はすべてのステータスを大量に上げる。筋力はもちろん、拳を振りぬく敏捷、そして、クリティカルを叩きだす器用さ。そう言ったこともあって、普通では歯が立たないのさ」
「なるほど。一応、理解したと言っておこうか」
万能の生産職を相手にするのはこりごりだと思いながらも、ヘリオスは『YOU LOST』の表示を受け入れた。




