大空洞と言う言葉の意味をなめていた。
さて、やってきたぞ。アメロッパ遺跡に。
確か奥の方にでかい木があって、そこに剣が完成したような壁画があって、そこでマップは終了していたのだったな。
「で、現地集合になったが……」
「アルモはまだ来ていないな」
必要なアイテムをそろえてくる。といってアルモはまず別行動になった。
お、来た。
「待ったかい?」
「待ってろって言われたんだからそりゃ待ったに決まってるだろ……」
ゼツヤはまだちょっと疲れの残る声でつぶやいた。
「それもそうだね。それじゃあ、行こうか」
マップデータはすでに三人とも持っているので、奥までサクサク進んだ。
で、大樹が復活したので、慈悲なく、容赦なく三人で倒した。
「そういや、アルモの武器、棒なんだな」
そう、棒だ。きれいな細い白銀の円柱である。
「まあね。でも、棒術には自信はあるよ。それに、シンプルだしね。あと、叩いてよし、はらってよし、突いてよし、と言った感じでいろいろと使えるから、これはこれで便利だよ」
スコップでも言えることだが、一つの物体において、いくらかの戦闘方法があるのはよくあることだ。
「最初は自分で作ろうと思ってたけど、さすがに武器はオラシオンシリーズをオークションで買ったよ。特殊効果はそこまでないけど、シンプルで強力だからね」
特殊効果の付いた武器や防具、アクセサリーと言ったものは多数存在するし、それを使って強者になるプレイヤーは多いだろう。
状況によって戦力に差は出るが、それはそれとして、本人が戦いやすい場所ですればいいだけの話だからだ。
結構な初見殺しのものもあるが、それは、珍しい状態異常を使用しており、それを前提とするために戦いにくいだけの話であって、対策そのものはしやすいものだ。そうであるがゆえに『メタ』というものがあるのだ。
トッププレイヤーの多くはシンプルなものを使う場合が多いのだが、センスの話も含めて、それが一番やりやすいからからだ。これは、現段階で最高峰のチートであるリオも同じである。
アルモの場合は、シンプルと汎用性を考えぬいた結果、棒に行きついたというだけの話だ。
「しかし、ここまででも、そこそこの暗号はあったが、この奥は大丈夫なのか?」
ゼツヤが呟く。
「まあ、答えは簡単だったりするものだよ。ええと確か、この奥になんかクイズがかかれた石板があって、それを解くと転移するらしいんだけど……」
扉が開いたりとかそう言った類のものではないんだな。
「お、あったあった。これだね」
アルモが石板を拾い上げる。
「なんて書かれてあるんだ?」
「ええと……『1から9までの数字を使った九桁の数字を二つ出して、その差が、1から9までの九桁になるように入力せよ』って書いてる」
要するに……。
『○○○○○○○○○-○○○○○○○○○=○○○○○○○○○』
と言う感じで、それぞれの九桁で1から9の数字になるようにしろ。
となる。
「ええと……これは難しいな……」
「ああ……」
ゼツヤとサターナが頭をひねっている。
「いや、超難問に見えるけど、答えは簡単なものだよ。二人とも、
『987654321-123456789』
を計算してごらん」
二人は計算した。
「あ、『864197532』になった」
「俺もだ。あと、全部バラバラだな」
「意外と簡単なものだよ。それじゃあ、先に進もうか」
石板のクイズを解いて、転移開始。
して終わって見えたのは、通路だった。
アルモが早速マップを見ている。
「うわー……ブランク広いね」
「確かにな。ちょっと100メートルくらい走ってみるか?」
「そうした方がいいだろうな」
で、100メートルくらい走ってみた。
「どうだ?」
「動いた僕らの点が一センチくらいかな。で、形としては、横160センチ、縦310センチだから……実際の距離は、左右に16000メートル。前後に31000メートルと言うことになる。広いね、横に16キロメートルで縦に31キロメートルと言っているのと同じだから」
「……帰りたい」
「まあ、とにかく行ってみようよ。こういったダンジョンでは、転移システムがあるのは鉄則だよ」
だといいんだけどな……。
で、二時間後。
「全然見つからないぞ。ていうか、歩いても歩いても全然変わらないのはどういうことだ」
「マップではしっかり進んでいるけどね」
「ゼツヤはこういうときの確認する癖がついていないからな……方向音痴と言うわけではないが」
というか、今の時代。ナビに従っていればどこにでも行けるけどね。
……ユフィを除いて。
というかユフィの場合、別の目的地を設定するのでたどりつくはずがないのだ。
まあ、ユフィの脳波もしっかり認識できているので、迷子になったからと言って発見できないわけではないが。
「はぁ……なんかないかなぁ……」
「師匠。口は禍の元っていうから、あまり多くはしゃべらない方がいいと思うけど……」
「そういうものかなぁ……」
「じゃあクイズを出そう。
『二人のわんぱく兄弟がいて、お父さんは自転車を二人に買ってあげましたが、二人の乗り方が乱暴なので、ハラハラしています。そこでお父さんは【今から自転車レースをしてもらう。ゴールに遅くついた自転車の持ち主には、ご褒美をあげよう】といった。これで安心したかと思いきや、兄弟は全速力で自転車をこぎ始めた』
さあ、これはなぜ?」
えーと……。
「……ああ、兄弟が自転車を交換したのか」
「そういうこと。兄弟は、自分が持つ自転車を遅くゴールさせるために、お互いの自転車を取り換えて走り始めたんだ。あまり考えないで適当なことを言うと、思った通りにはいかないものだよ」
「……なんかあったのか?」
「いや、そう言うわけではないが、そう言う場面がよく見ているからね。職業柄」
「……?」
「あ、師匠にはいってなかったっけ?僕、この世界では『仮想探偵アルモ』として、知る人ぞ知るプレイヤーなんだよ。普段は情報屋だけどね」
「まあ、お前ならできるだろうな」
アルモは、システムそのものを理解するのがうまいのだ。
本気出したらちょっと困るプレイヤーでもあるのだが、詳しい話は別の時にするとしよう。
「ふあぁ……何か眠くなってきた」
「師匠。最近寝てないの?」
「あまり寝てないな。生産職として完成させたかったというのが一番の本音だが」
まあそんなことだろうとはサターナもアルモも思っていたが、あえて言わなかった。
「しかし、このダンジョンのモンスターも弱くはないんだけど、師匠がいると本当に楽だよね」
「まあ、ゼツヤは存在そのものが準備万端だからな」
三人とも、MPをそこまで使用するタイプの戦い方ではないが、それでも、必要なものは必然的に出て来るものだ。
ゼツヤはそれらを、ほぼ即席で作ることもできるのだ。
しかも、即席であっても、他の専門職が工房で作ったものに匹敵、またはかるく上回っているというオマケ付きである。
ゼツヤは連れていけば、ダンジョンであってもほぼ問題はない。
無論。本人にやる気があればの話だが。
やる気が無くっても質は高いがな。
「なんかさっきから同じような感じのモンスターしか見えないんだが……どうなっているんだ?一体」
「はっ?」
「えっ?」
サターナとアルモがすっとぼけたような声を出した。
「ん?どうした?」
「いや、さっきから出てきているモンスター。色違いだったり、ちょっと形が変わっていたりするけど……」
「もしかしてゼツヤ、『看破』スキル使ってないか?」
「ん?ダンジョンに挑むときは当然だろう。MPを使うわけでもないし」
そもそも、サターナは看破スキルを持っていないし、アルモも、現段階では特に変わったことはないと思って使っていなかった。
「……何かあるのか?」
アルモは少し考えた後、言った。
「うーん……NWOであることからすると……ほぼ間違いなく、最初のエリアすらも抜け出していないという可能性が出てきたね」
「嘘だあああああああ!」
ゼツヤの絶叫が響いた。




