案の定……
わかっていたはず。
というと、ヘリオスとしてはかなり微妙な心境だが、まあ、そう言うしかなかった。
ちなみに、先程から、矢次としての本来の思考が駄々漏れになっているが、この兄は一緒にいるだけで心労にたえないので、どうしても雑念が混じってヘリオスを保てないのだ。
変な話、抜群な演技と同じなのだ。雑念があって出来るものではない。
まあそれはおいておこう。
ウォータージェット、確かに完成したし、いいできだったと思う。
しかし、システムの穴を突いて産み出された産物が理不尽に敵うかと言われて、首を縦に振れるかどうかは少々別問題でもある。
はっきり言うと、効かなかった。
攻撃には二種類あるのだ。
いや、急に変な文になってしまってすまないが、そう言うことなのだ。
『当たらなければ意味がないもの』
『当たっても意味のないもの』
ウォータージェットは後者だった。
水攻撃の完全耐性がゼツヤのコートに付与されていたのである。
NWOにおける攻撃というのは、武器をぶつけたり魔法を当てたりするだけではない。
そもそも、ウォータージェットを作ろうと思った時点で、それら以外でもダメージは普通に発生する。
悪意があろうと無かろうとである。
例としては、パーティーでむっちゃ強いボスモンスターを倒して、ラストアタックを決めたHPレッドゾーンのプレイヤーの背を、『やったじゃないか!』的な意味で叩いたとしよう。まあ、リアルのスポーツでは珍しくはない光景だが、実はこれ、多くのプレイヤーが通るミスである。
叩くということにはどんな状況であっても攻撃判定が発生する。
そのため、まあ、こじつけでも攻撃であればいいのだが、ウォータージェットは明確に『水属性攻撃』と認識されるので、水の完全耐性があれば問題は全くないのだ。悲しいけど。
それプラス、ゼツヤのコートは、『全ての弾丸が効かなかった』のだ。
これはヤバい。一番ヤバい。銃を作ってるのが思いっきり恥ずかしくなるくらいヤバい。
弾丸が効かない。
銃を作ろうと思った者にとっては正真正銘の天罰である。
確かに、前年度からちょっとやり過ぎたので、そういった防具を作ろうと思うのは何も珍しくはない。
が、なんでそんなものを作れるのか……需要もないのに。
まあ、ゼツヤに常識を求めるのは諦めるべきだと散々思い知らされているはずだが、それでも今回は納得できない。
積み上げてきたものを一気に崩された気分である。
清々しいというか、なんというか、ともかくそう言うことなのだ。
弾丸が効かないのであれば、他でいくしかない。水?もう選ばないよ。
何で行けるのかさっぱり分からない。
というか、メタの神様みたいなやつに何を持っていって『驚異となり続けるのか』という話なのである。
おまけにこのバカ兄はまだ諦めていないようだし、ぶっ飛ばしたくなった。
まあ、最新案の中に『レーザーブレード』と書かれていたときは本当にぶっとばしてやろうと思った。というか、ぶっ飛ばしたのだが。
いやもうホント、なんでこうなったんだろうね。
原因は兄なのだが、懲りないのはどうにかしてほしい。
まあいいか。
いや、よくはないが、どうにかすることを放棄してもバチはあたらない。
この辺りが引き際だとヘリオスは思う。
章のタイトル通りに行ってないけど。
いや、ヘリオス個人としてはべつに何かをやってもよかったんだけど、なんか見苦しいのだ。
エルドはそれを理解してくれない。
あのバカはもう何をいってもわからないのだ。
仕方がないので、ヘリオスは強引な演技をやめて兄のプライドを粉々にするまで叩きのめした。
多分バチはあたらない。……はず。
はぁ、もう終了。兵器開発つかれた。
いや作るのはいいんだけど、飾るくらいしかできないんじゃいみはないのである。
まあともかく、そう言うことだ。
以上、ヘリオスのレポートより引用したものである。




