さすがにそれは許容範囲外だ
さて、なんだかんだ言って二週間くらい放置していた。
で、ブリュゲールはあるものを作り出した。
そう、機関銃である。
一秒で30発くらいのペースで弾幕パーティーが出来るとされた。
「さて、そう言うわけで対策本部が出来るハメになったと言うわけだ」
久々の登場の、『アンフィニッシュドレギオン』ギルドマスターのゼノンである。
対策本部って警察が事件にたいして作るものだと思っていたが、まあ、完全にゼノンのノリである。
なお、集まっているメンバーだが、
ゼツヤ、ゼノン、レイフォス、バスター、まあこの四人は安定である。
他にもリオがいる。
ちなみに、リオの方が抜群に賢いのだが、対策本部長(謎)はゼノンである。
「いやー、まさかここまで作るとは思わなかったな……」
レイフォスが苦笑しながら呟いた。
「まあ個人個人思うところはあると思うが、ゼツヤ、この世界で機関銃を作るのってどれくらい難しいんだ?」
「正攻法は存在しないな。裏技がたくさんあるからそれを使ったんだと思うよ」
「いきなり爆弾発言だな……」
ゼノンはすぐさま項垂れた。
「で、裏技ってなんだ?」
バスターが軌道修正する。
「いやー、今月(※まだ四月である)のアップデートでいろんなアイテムが調整されたんだよ。多分、ダンジョン作成でアイテムが取りやすくなったからそれの影響だと思うけどな。それで、今までになかったシステムの穴が調節されたところがあって、その調整と共に、新しい穴が出来たんだよ」
「結果として、銃弾すらも抜け出せる裏技が出来てしまったと……」
「そう言うことだな」
非常にめんどくさい。
で、このときリオが思ったこと。
(セカイのやつ、多分狙ってやったな……)
であった。
話を戻すが、ダンジョン作成。これの出現によるアイテムの入手量増加の一番手っ取り早いギミックだが、実はそこまで複雑ではない。
NWOに存在するダンジョンはどれも、1、モンスター。2、罠(ない場合もある)。3、宝箱。4、採取ポイント。まあ他にも様々な要素がある。というか、採取ポイントはゲームにも寄るが、他の三つはたいがいのゲームがそうだろう。
そして、最も素材がとれて、しかも、ダンジョンの利益は独占したいのが普通なので、難易度は高い方がいいはずだ。
何が言いたいのかをまず簡単に言おう。
『どれだけ鬼畜であろうと、設計図を所持してのからくり屋敷以上にヌルいものはない』
ということなのだ。
からくり屋敷を想定したようなトラップ市場みたいなダンジョンはすでに何個かあるし、それらのダンジョンは情報戦が続いているが、ダンジョン作成であれば、少なくとも罠の種類は分かる。
それらの詳細データを記録し、営業仲間に高額で渡して利益を得るのだ。
別に珍しい手段じゃないけど。
「まあ厳密には、素材全部で使える裏技じゃないけどな。特定の素材、今回なら銃機だから主に金属だが、それらを利用することで、システムを騙して銃器を作ることは出来ないわけではない」
「ちなみに聞くが、その特定の金属って、どれくらいあるんだ?」
リオが聞いてくる。
リオも調べようと思えば自分で調べることは出来るが、あえて調べることはない。自分が楽しむ上で必要なことは調べたり自分で検証するが、基本的に自分に直接関係ないことは調べないスタイルだ。そうじゃないと、リオのポテンシャル上、面白くないのである。
まあそれはいいが、ある意味一番重要な質問だろう。
「俺が知っている金属の内……14%くらいだな」
「よし、多いな」
ゼノンは即決した。
要するに、ゼツヤのことを化け物扱いしているのである。
まあ、前年度デュエルカップ優勝者だがな。
……結構忘れがちな設定でもあるのだが。
「そのなかで、ダンジョン作成で取れやすいものはどれくらいなんだ?」
バスターが聞いてくる。
ブリュゲールの一番の供給は課金だろうが、そこはバスターたちが干渉できる話ではないので、その次である自作ダンジョンの供給だった。
「自作ダンジョンからか……14%の内の5%くらいだな」
「分かりやすく言えば、ゼツヤの知識範囲内の0.007%。小数点以下を繰り上げるが、『14286分の1』ということになるな」
NWOってインゴットどれくらいあるんだ?って言う話である。
まあ、作成におけるベースプログラムが存在し、作成手順の数だけ種類はある。まあ、誤差の範囲を纏めて一つにする方法もとっているので、ほぼ無限。と言うべきか。
ゼツヤが知っているインゴットが、インゴットの全てと言うわけではないし、あくまでも目安である。
が、恐ろしい数を試したのは間違いない。
あと、リオ、計算早すぎ。普通の人は14286分の1とか言わない。十万分の7って言うんだよ。
「具体的に何種類だ?」
まずそれを聞くべきだったとゼノンは思いながらも、ゼツヤに聞いた。
「自作ダンジョンからとれるもので言うなら……92種類だな。無論。俺が知っている範囲だぞ」
「非常にどうでもいいが、ゼツヤ、それは……君が約130万種類の金属を知っていることになるんだが……」
もうまじで本当にいったい何個あるんだろうね。
「はぁ、まあゼツヤの非常識さは今に始まったことじゃないから良いとして、さすがに92種類もあったら、供給源を潰すのは不可能だな。それじゃあゼツヤ、機関銃は量産できるのか?」
「弾丸に問題がある。適応する金属が一種類しか存在しない。しかもランクが高いからな」
「ちなみのそれってなんだ?」
「『ネスティーアステリスク』ていう金属だ」
「……『不愉快な小さな星』かな?」
「多分そんな感じだ。で、それでしか作れない。あとこれな、俺も結構面倒なんだよ」
ゼツヤが面倒と言う時点で大量生産は不可能だと分かった。
「で、本体の方だが……」
「リオ、これで設計データだ。見てみな」
ゼツヤはリオにデータを送った。
リオは見始めて三十秒ほど理解したようだ。
「かなり難しい理論だな。天恵大学クラスの学力がないと理解すらできないだろう。パーツもなかなか作りにくいものが多い。量産は不可能だな」
リオでもこの評価である。
「大量生産は現在では不可能。いや、この場合は持久戦は苦手と見るべきか。どれくらいの威力が出るんだ?」
「レベル40くらいははっきりいって無謀だな。ただ、システムの穴をついて産み出したものだから、武器として登録されないし、武器以外のアイテムを用いた攻撃はやや威力が下方修正されるシステムもある。奇襲されない限り、障壁的な防御手段があれば問題はないだろう」
「ゼツヤが言うんならそうなんだろうな。ともかく、現段階では、ブリュゲールの位置を正確に把握することが大切だ。ダンジョンの封鎖はあまり意味がないな。というか、あんまりモグラ叩きは好きじゃないんだよなぁ。面倒だし」
ゼノンはなんとなく乗り気ではないようだ。
「ま、とにかく、パイルバンカー程度なら、ちょっとプレイ歴があれば対処できる物だが、この機関銃は、ゲームバランス的に迷惑だからな。まあ、また呼ぶかもしれないからよろしく。今日は解散」
一応の会議は終了した。




