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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
ダンジョン作成によるヘリオスの再暴走
125/218

弟の前に兄が動いていた

 エルド。

 このキャラネームが誰なのか、わからない人も多いだろう。

 ヘリオスの兄のキャラネームである。

 戦車を筆頭に様々な兵器を持ち出してきて、ゼツヤに計画を根本からぶっ壊された、ベストスリーの哀れなプレイヤーである。

 さて、彼は今、NWO内のヘリオスの自室にいる。

 あ、ちなみにヘリオス視点である。


「兄さん。今度はどうしたんだ?」

「なに、NWOの完全征服を諦めたわけではない。あれから着々と準備を進めていたのだ」


 会話が成り立っていない。

 まあ、矢次(本心)としても、ヘリオスとしても、準備とはいっても計画案だけで、資源的な部分はなにも解決していないと判断する。

 エルドは自分中心天動説で(『ヘリオス』としては人のことは言えないが)、普段から勝手に行動しているが、今回は、エルドの回りに誰かがいる雰囲気がしない。

 分かりやすく言うと、協力者が一人以上いる感じがしないと言うことである。


「で、一体なにをするんだ?」

「聞いて驚け。ロマン兵器だ」


 ヘリオスはものすごく残念な物を見るような目でエルドを見た。


「なんだその目は」

「いや、懲りないなって」


 昔からそうだがな。

 矢次は物心ついた時から今のように価値観の操作が上手かったし、それが影響して精神的には常に落ち着いている状態である。ヘリオスとしての人格は、ゲームなのだから多少は(と言える規模ではなくなっているが)バカやってもいいだろうと言う判断から来るロールプレイである。

 だがこの兄の場合、自分が特別な人間だと認識しているように見えるのだ。

 まあ、天恵大学に通っている頭脳を持っているほどのポテンシャルがあるのでそう勘違いするのも無理ないかもしれないが、なんともよくわからない人である。いや、分かりやすい部分は本当に分かりやすいのだが。


「ロマン兵器だが、考えている案は『レールガン』だ」


 細工スキルを使用した場合であっても、銃器を製作した瞬間に削除判定が出ることを知らないのだろうか。

 勉強不足である。まあ、教科書をちょっと見たら理解できるポテンシャルなので努力不足は毎回毎回あるだろうが。

 勉強は出来るのに他のことがあまりできないタイプの人間である。

 ゲームにおける『テストでは測れない才能の重要性』というものをしっかり議論すべきかとも思ったが、矢次としてもヘリオスとしても面倒だった。


「すでに図面は出来上がっている。これを見ろ」


 図面を出してきた。

 うん。リアルであれば自分が死ぬ設計である。要するにひどいのだ。

 NWOでもそんなに結果は変わらないだろう。

 レールガンは引き金を引いてすぐに撃てるカテゴリーではない。電磁加速が必要であり、それがあるからこそ恐ろしい速度が出せるのだから。

 エルドの設計は、そのチャージ中にオーバーヒートする設計だった。

 NWOでこれを作って、そしてなおかつシステムに感知されなかったとしよう。

 そして、引き金を引いたとしよう。

 どうなるか。

 まず、チャージによる熱で、様々なフレームダメージがあり、色々とブレが出るようになる。

 次、電子回路がメチャクチャな設計なので、たぶん自分に電流が流れる。当然、まともに構えることは出来ない。

 撃つ瞬間、設計図の素材では、その場で爆発してアバターがHPを散らすだろう。

 ブレがでて変な方向にアホみたいな速度で弾丸は飛翔し、自爆は完遂する。

 これはこれですごいな。


「そして、これの改良案がこれだ」


 さらに出てきた設計図を見る。

 ……多分、パイルバンカーのレールガンバージョンだ。

 パイルバンカーはヘリオスが『認識している』限りでは、途中まで伸びてその杭を巻き上げていくタイプと、杭を放出するタイプがある。建築現場では前者だが、設計図は後者だった。

 電磁加速で杭を高速射出する。

 ……うまく作れば、システムの感知を回避できるかもしれない。

 カテゴリ的に『ボウガン』に認識させれば……いや、この設計図では、NWOにおけるボウガンの最低限必要な要素を満たしてはいるが、明らかにあってはならない要素がある。

 見るまでもなく廃案だな。

 試しに作れても、レールガンの二の舞である。


「どうだ、スゴいだろう」

「うん、凄い」


 意味が食い違っているのは皆さんもお分かりだろう。


「さて、実はまだある」


 その他様々な設計図をヘリオスは見せられた。

 まあ、思うことは一つ。

 その脳みそは頭の中に銃器しか写さないのか?


「兄さん」

「どうした?ヘリオス」

「兄さん。銃、好きなの?」

「そう言うわけではない。ただ、早く強くなるには銃がいいと判断しただけだ」


 判断の先が削除項目に該当されるってなんて切ない。


「VRMMOの多くのゲームは、速度があればあるほど威力が増していく。それならば、銃器を生み出し、それを活用することで、征服の近道になるのだ」


 魔法なら速度はそこまで威力に関係ないが、純粋な物理攻撃なら速度は大きく関係する。

 銃弾も、杭も、確かに物理攻撃と取れるかもしれない。


「レールガンを生み出し、銃弾を大量生産すれば、あとはNPCを買うだけでいいのだ。リアルマネーはあるからな。征服したという結果が欲しいのだ」


 結果がほしいというその考え方は否定しないがな……。

 ……ん?何かを忘れている気がする。

 あ、思い出した。

 まあ、その思い出したことを混ぜて考えて出た結果。

 この銃弾では、鎧に当てた場合はダメージは出るだろうが、相手が盾を持っていた場合、もしくは金属製の武器に当たった場合、ダメージは発生しないのだ。

 設計的の弾丸が前に飛ばないことはこの際考えないとしても、NWOで相手の武器や盾に攻撃を当ててダメージを発生させようと思ったら、衝撃が一定時間以上継続しなければならない。

 あきらかにダメージにならないような攻撃が一瞬当たっただけでダメージ判定が出るほどシビアではないからだ。

 まあ、そもそも銃を扱うゲームという設定が存在しないので、それはそれで仕方がないのだが。

 この兄、前途多難にも程がある。

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