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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
ジョーカー・オン・ザ・ステージ
117/218

リオの懐刀と謎の伏兵

 レイフォスは大太刀を振り続けていた。

 セルファは盾を突きだし、『シールドアタック』のスキルを発動し続けていた。


「「多い!」」

「まあそれがコンセプトなんだがな」


 スライム、サンドゴーレム、他にも様々な『体のほとんどが水でできているモンスター』や、大量の植物系モンスターがそこにはいて、ドレイクが先ほどから薬品をまき続けていた。


「くそ、シャリオがいりゃ楽なのに……」

「無い物ねだりをするな」

「いや、現状では、もうすでにクリスタルは二つしかない。こちらも手加減はできないからな」


 時系列で言うなら、ホールで行われている乱戦とほぼ同じである。

 一つはサーガが破壊した。


「そういやそうだったな」

「まあ俺も予想外だった」

「私も確かに想定外だった」


 もしここにシュラインがいればいっていただろう。

 その言葉を、三人は思わず言っていた。


「「「さすが主人公の彼女」」」


 と。

 ホールの乱戦を想像すればわかる通り、この建物は全体がかなり頑丈である。そうでないといちいち崩れて危険だからだ。

 大概の建物は下から上にいく。要するに、クリスタルはそうした上がったところに設置されている。

 要は、建物それぞれの最上階にあるといっていい。


「誰が考えるんだろうな」

「ああ、まさか」

「弓で貫くなんて……」


 ミズハ。この女。絶対になめてはいけなかった。

 このゲームはサバイバルではなく攻城戦である。クリスタルを破壊することができれば、ぶっちゃけ防御側のプレイヤーはすべて無視できるのだ。

 それが意味するのは、そのままの意味。

 即ち、『クリスタルを狙い撃ちすればいい』ということだ。

 クリスタルの位置はゼツヤにもわからない。

 発生させる装置がいくつもあるので、どれが作動して10個になっているのかが分からないからだ。

 ただ、現に残っている二つが、屋上、もしくは最上階に存在するものではなかった。

 ミズハが何をしでかしたのか。それを簡潔に答えよう。

 ミズハは、まず高いところに行き、『その直感でクリスタルの位置を割り出し、弓のスキル『スーパーノヴァ』により貫いて破壊した』のである。


「直感が優れていると言っていたが、女ってすごいんだな」

「ああ、まあそうだな」


 セルファはミナトを思い出しているだろう。


「俺もビックリした。あの命中制度もおかしいと思ったがな」


 命中制度ではないと思うが、危険なのは変わらない。


「しかし、君たちがここを越えないと、クリスタルにはたどりつけないぞ」

「それもそうなんだけどな」


 喋りながらも最初の一振り目で切り続けているレイフォス。『パターンチェンジ』があるがゆえ可能な事である。

 ドレイクは調合師。それは変わらない。

 しかし、彼の本業はポーション作成ではなく、モンスターの創造である。

 さらにいうなら、ドレイクの職業は調合関係ではなく、『傀儡師』である。

 創造モンスターも召喚モンスターも、独自のAIとマスターの命令によって動くのだが、この職業を取得しているとき、モンスターの動きをAIを介入させずに自らが決めた通りにすることができる。

 無論、レイフォスといった化け物を相手にする際は、攻撃されることを前提にモンスターを産み出し、操作する必要があるが、それでも数が多い。

 ゼツヤもレシピさえわかれば(現時点ですでに知っている。質はドレイク以上)創造モンスターを調合で出すことができるが、そんなことはしない。理由は考えなくてもわかる。


「しかし、厄介だな。武器の耐久力が減ってきてる」

「私の盾はまだ問題はないが、ドレイクの出せるモンスターの数によってはまずいことになるぞ」


 レイフォスはドレイクが薬をまく作業を見ていたが、予想よりも少量で創造が可能のようだ。


「さあ、いつまで耐えれるかな?」

「ちっ、悪役みたいなこと言いやがって」

「モンスターを産み出す科学者は小説ではろくなやつがいないがな」


 セルファの偏見はおいておくとして、一応いっておこう、というよりかなり重要なことがある。

 ドレイクが今いる横も広い廊下。この奥にドレイクが嬉しくなりそうなアトリエがあり、その奥の小部屋にクリスタルがあり、今現在ゼツヤとミズハが向かっているマスタールームに、リオがいて、その奥にクリスタルがあるのだ。

 で、ホールにあるのはどうしたのか。

 それはすでに、『星屑の流星姫スターダスト・プリンセス』に破壊されているといっておこう。悲しい話だが。


「しかしキリがない。かといって退路もなくなってる」


 厳密には存在するが、STR極振りのレイフォスではたどり着くまでに足止めされるだろう。


「少々不味いな」


 武器の耐久力は気にはなるがそれほど問題ではない。

 問題なのは、捌ききれない場合、他に部屋に侵入して他の仲間の邪魔になることである。

 殲滅力が足りない。一対一なら大概問題はないのだが。

 あともうひとつ。傀儡師であるドレイクに操作されているモンスターすべてが、無視できる強さではないのだ。これがわざわざ相手している最大の理由である。

 恐らくだが、人工的なAIレベルでプログラムを組んだのだろう。

 リアルではどんなやつなのだろうか。


「セルファ。一度撤退するぞ」

「無理だ。数が多すぎる。しかもコイツらは、触れているだけで自害不可能になるぞ」

「何て言うかその、一番安全な撤退方法が自害って君たちの思考回路おかしくないかい?」


 ドレイクがツッコミを入れた瞬間だった。

 横から出てきた青い狼が、次々とモンスターを食らいつくしていった。

 セルファの方を見ると、赤い鳥がモンスターを貫通して倒していた。


「いったい誰が……」


 入ってきた入り口の方を見た。


「ふむ、どうやら間に合ったようじゃの」


 少女、と呼ぶには最大の身長の女の子だった。

 真っ黒のワンピースを着ている。


「ふむ、そこの二人、創造モンスターはすべて任せるのじゃ。おぬしたちはあの科学者を狙うのじゃ」

「あんた誰?」

「オラシオン。と言っておくぞ」

「こりゃ変な伏兵だな」


 ドレイクが頭を抱えた。


「まあいい、誰が相手だろうと倒す」


 見た感じ少女を相手に薄情かもしれないが、NWOでは少女だからといってなめてかかっているとクエストでほぼ確実に失敗します。いろんな意味で。

 ドレイクは薬をまいて大量のスライムを出現させる。


「スライムが触れている絨毯が溶けておるの。この状況下で布のみを溶かすモンスターを出すとは、おぬしはそういう趣味なのかの?」

「……」


 ドレイクはなにも言わなかったが、レイフォスとセルファのなかでは、ドレイクは社会的に終わっていた。


「まあ、本来強いスライムを相手にする場合、腐蝕を警戒するため、ゴールド、クロム、ステンレスなどが代表例じゃが、わしのストレージにはないのう。まあ布専門であるため問題はないじゃろ。モンスタークリエイト『プラチナビースト』」


 白金で出来た狼が出現する。

 三人は思った。

『どのみち腐食耐性高いじゃん!』と。


「さあ、蹂躙するのじゃ!」


 言葉通り、スライムたちは蹂躙された。

 残ったドレイクは……精神的に病んでいるようだった。

 特に抵抗もなかったので斬っておいた。さて、あとはクリスタルを壊すだけだな。


「というか、擬人化なんて出来たんだな」

「わしは驚かせようと思ったんじゃが、マスターがそれ以前の気づいておっての、まあ、ばれては仕方がないゆえな。あと、ミズハ……だったかの。そのものに言われてワシだけがこっちに来たのじゃ」


 ミズハの勘って鋭いな。


「とにかく、助かった」

「礼はいいのじゃ。ああそれと、ここで起こった戦闘については黙っておいた方がいいかの?」

「そうしてくれ」


 レイフォスは苦笑していた。

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