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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
ジョーカー・オン・ザ・ステージ
116/218

ホールが更なる乱戦状態に……

 シャリオが行動を起こそうとした瞬間であった。

 ホールの壁がぶち抜かれて誰かが飛んできたのだ。


「って、クラリスじゃねえか」


 飛んできたのはクラリスだった。シャリオが空中キャッチする。

 入ってきたのは二人だった。


「ええと、ここどこだったかな」

「ホールですよ。と言うより、作ったのはあなたでしょう」

「それもそうだな」


 シュラインとシエルか。

 シュラインの武器は打撃攻撃も可能な片手剣。シエルの武器は刀だ。

 クラリスは杖だが、そこそこの攻撃力がある杖だし、クラリスは棒術も一級品なので、近接戦闘でもかなり強い。無限分割思考で二人を同時に見れるはずである。

 それでもここまで吹っ飛ばされたか。

 ていうか、女性が壁をぶち抜きながら飛んでくるって、中々ないぞ。


「ううん……シャリオね」

「ああ、ていうかちょっと今このホールヤバイことになってんだけどな……」


 数では負けている。一人分。


「さてと、さっさと終わらせて修復しないとな」

「それもそうですが、回復職がここまで厄介だとは思いませんでしたね」


 まあ、クラリスは防御力がそこまで高いとは言えないが、一撃で倒さない限りそれは倒すことには繋がらない。それだけの回復量だ。

 NWOでは魔法に詠唱が必要ないこともあって、クラリスは即回復できるので厄介なのである。しかも棒術があるから近接戦闘も弱くはないし、デスヒールがあるから無闇に近づけない。

 クラリスはそのキャラビルドは、棒術を除いて完全に回復職だが、それ以外もできるのだ。


「ていうか、さっさと戻らないと本気でヤバイんだけどな。1人分こっちの方がメンバー的に少ないからよ」


 今まで誰も言わなかったが、向こうの方が少ないのだ。エクストリームは六人で、ゼツヤとミズハの二人が追加されて(無論ギルドに入っているわけではない)八人になり、ジョーカーは七人である。

 いやまあ、リオって俺たちクラスでも多分普通に十人分くらい強いけど。

 どうでもいい情報だが、現在出ていないメンバーは、こちら側は、ゼツヤ、ミズハ、レイフォス、セルファであり、ジョーカーは、リオとドレイクだけである。

 っていうかさ。このゲーム。クリスタル10個もあるのに、まだひとつしか破壊できていないのだ。

 何時間かかるんだこれ。

 まあ、ここにいるジョーカーをすべて倒し、なおかつ倒したタイミングがほとんど一緒なら、ユフィの走力で三つか四つくらいは破壊できる。

 そして、仮にユフィがこの場を離れ、もし賢いサーガと合流すればどうなるか。

 まあお分かりだろう。サーガとの合流はエルザが阻害してくるだろうが、それでもサーガのことだ。何とかしそうだがな。あと、このゲームは倒された場合、復活エリアに戻されるだけで特にデメリットはない。

 簡潔に言おう。ユフィがこの場を離れ、エルザをセルファ辺りが止めておき、サーガとユフィが合流し、さらに、今の乱戦が保っているとき、『ジョーカーはリオとドレイクのたった二人でこの広い宮殿のクリスタルを守る必要がある』のだ。

 この宮殿は恐ろしく広い。リオはわからないが、ドレイクは調合師だ。ユフィに追い付けるとは思えない。

 リオの戦闘力は高いのだが、恐ろしいほどの直感を持つミズハと様々なアイテムを所持し、擬似的にだがほぼ全ての『ハイエスト・レベル』の者の個人スキルを使用可能だ。足止めくらいは出来るかもしれない。ユフィが通過できればいいのだから。


「「「「「「……」」」」」」


 ここにいる七人中六人(当てはまっていないのはユフィ)はちょっと考えていた。

 というか、乱戦そのものが止まっているのだ。

 ユフィだけが、いきなり舞台にあがらされてアドリブで演じる新人みたいな雰囲気でキョロキョロしているのだ。明らかに何かに混乱している。

 ちなみに言おう。このホール。出入口が一階にしかないうえに(不便の極み)、その全てのドアが現在崩壊し、ユフィ一人だけではどうにもできない。


「これはもしや……」


 ライズがポソリと呟く。

 今ここにいる七人。それぞれ、今シャリオが考えていることに気づいているのかどうかの判断。

 シャリオ  本人の思考なので無論○

 クラリス  無限分割思考のどこかで気づいている可能性があるので○

 ユフィ   先程からの動き(キョロキョロ)的には×

 ライズ   天恵大学に在籍している学力で多分気づいているので○

 ザイル   予測能力に優れているので普通に○

 シュライン メンバー数を気にしていて、宮殿の建築者なので多分○

 シエル   リオの妻と言う存在なので気付いていても不思議ではない。○

 これにより、少なくともユフィ以外が気づいている可能性が確実であると分かった。

 分かっていなかったとしても、ジョーカーの四人はいまは二人ずつでいるので教えあうことも可能。

 クラリスも苦い笑みを浮かべているので多分気づいている。

 もうひとつ、サーガと合流した場合に、事情をユフィから聞いたサーガがこの状況を理解できる確率はかなり高い。合流できるのかどうかは実際には確定ではない。

 が、マップを見ると、何故かサーガは復活エリアで待機している。

 そして、ユフィが現在。このホールから出るための方法。

『エクストリームメンバーがドアの邪魔な瓦礫を吹き飛ばして、出るのを援護する』※ただしこれは難題。

『ユフィが戦闘不能になる』

 そしてあってはならない現象だが、エクストリームにとっては、

『ジョーカーのメンバーが倒されて他の部屋に行ける確率を発生させること。もしくはジョーカーのメンバーがこのホールから出ていくこと』

 ジョーカーにとっては、

『ユフィがこのホールからでていくこと』

 である。

 導き出される結果は、一つ。


「ユフィ。行くぞ!『ガイアブラスター』!」


 シャリオの放った土砂の光線は……ユフィに向かって飛んだ。


「ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


 ユフィは絶叫。よし、完全に虚を疲れたときは動体視力は発揮されるが、自分が何をすべきなのかが分からなくなる。

 当たると思っていたが……、


「させん!」


 ライズが鞭でうまく壁を作り(どんだけ入ってんの?ロープ)、土砂をすべて叩き落とす。


「ちっ」

「シャリオさん!どういうことですか!」

「ええとそれはだな。うおっシャリオてめぇ!いきなり仕掛けてくんな!」

「喋られると面倒なんでね」


 シャリオとしてはユフィがさっさと自害してくれれば楽なのだが、中学二年生にそんなことは言えない。


「ああっ!シエルがさっきの穴から出ようとしてる!」


 シャリオが叫んだ瞬間、クラリスが『自分だけに』エンチャントをかけてステータスを強化して、シエルに突撃する。


「逃がさない」

「やはりおってきますか……」


 刀を抜き、クラリスを斬ろうとするが、クラリスは杖でつばぜり合いを仕掛ける。


「ええと私は……取り敢えずなにもしていなかったザイルさんを倒します!」

「君みたいに無闇に速いのって無理!」

「援護する」


 ライズがユフィの突撃を防御する。


「ええっ!」


 驚かれても困るのがライズの心境である。

 しかも、先程からユフィと戦っていたので、ユフィのHPはかなり低くなっている。

 ポーションを使う様子がないのは、パニックなのか、それとも持っていないのか、どちらにしろ、ライズができることは変わらない。

 そう、防御である。

 これ以上攻撃すると、下手すればユフィのHPが消し飛んでしまう。そうなると圧倒的不利になるのだ。

 ザイルがいるのでまだ安心のようだけどな。


「ちっ、シャリオ。お前近接魔法術みたいなものを考えたな」

「ああ、俺は武器すら持たないからな。だが、俺の固有スキルで、俺は俺が放つ魔法の大きさを完璧に理解できる。ゼロ距離で撃っても俺には当たらねえよ」


 そう、それがシャリオの奥の手である。

 しょうしょう軽い話になっているがな。仕方ないけど。


「ぐぬぬ……。私はどうすれば」


 ユフィはオロオロしている。

 ライズとしては『そのままじっとしていてくれ』と言う感じだ。

 シャリオとしては『早く自害しろ』であった。

 クラリスは今もシエルを相手に戦っている。

 シャリオはシエルの固有スキルがまだわからないが、クラリスが今現在は戦えている現状、あまり問題はないのだろう。

 シュラインの相手くらいはシャリオでもできる。

 ライズは防戦一方になるしかないが、ここまで近距離だと鞭にするのは得策ではない。そして、ユフィの二刀短剣を片手剣一本で防ぐのってものすごく苦労する。

 ただ、ここで忘れてはいけないのが、ジョーカーのメンバーを倒すわけにはいかないことである。

 クラリスのみが今このホールにいるメンバーのなかで回復魔法が使える。

 なんだかんだ言って、ジョーカーのメンバーが自害しても良いのだが、シャリオの把握力とクラリスの回復力がそれを許さない状況なのだ。

 こんなめんどくさいことになったのは、明らかに設計者のせいである。すなわち、リオだ。

 だからこそ、叫びたい。


「「「「「「リオ(さん)の野郎(馬鹿)、後で絶対に殴る!」」」」」」

「だからいったいなんなんですかあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 六人の大人(理解できる者)は叫び、一人の少女(理解できぬ者)は困惑絶叫していた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はっくしょんはっくしょんはっくしょんはっくしょんはっくしょんはっくしょん!」

「うわっ!ビックリした。どうしたんだリオ」


 リオのそばでドレイクが調合をしていた。


「いやー、……嫌われたものだとおもってね」

「くしゃみ六回だからな……」


 確かになかなかないだろう。


「そろそろ色々と加速する頃か」

「僕もそう思う」


 二人は笑っていた。

 正しくは苦笑していた。

 さて、平和なのかどうかは別である。

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