帰還と真実
帰ってきた。
いつも通りのベッドに寝転がっている。服装は寝たときのまま……だと思う。数年前だから確信できない。
起き上がる。
特にからだに不自由はなかった。まあ、実質的にはそこまで長い時間向こうにいたわけではない。
「帰ってきたのか」
ウィンドウを開く。その後、ミズハ。いや、桜にコールした。
『あ、竜一くん』
「桜。帰ってきたな」
『え、何をいっているの?』
………………………え?
『それにしても、変な時間にコールしてきたね。なにか発見したの?』
まさか……。
「いや、ちょっとな」
『どうかしたの?』
「いや、もしも仮にさ、俺たちの学校の全生徒が、NWOに入ったらって言う感じになったら、どうなるんだろうなって思って」
『ふーん。竜一くんはそんなことを考えるんだね』
「ああ、まあそうだな。桜はどう思う」
『うーん……竜一くんが過労死すると思うよ』
「それは勘か?」
『そうだね』
覚えていないのか、それとも、記憶がブロックされているのか、それとも、ただの長い夢だったのか、それとも、ゼツヤ一人があのせかいに行ったのか。
分からない。
「桜、すまんな。変な時間に」
『全く問題ないよ。それじゃ!』
「ああ」
通信を切った。
「……『ダイブイン』」
竜一はゼツヤになった。
いつもと変わらない雰囲気だった。
「ゼツヤ様。どうされますかな?」
ロイドが聞いてきた。
「そうだな。ある武器を作るよ」
「畏まりました」
とはいっても、ロイドがすることは、必要があれば取りに行くか、それとも待機か。そのどちらかである。
ゼツヤはウィンドウを開いた。
ない。『エレメント・ミラージュ』がない。
まあ、予想通りではある。
早速作ったが、能力に変わった部分はない。同じだった。
「まあいいか」
それはいい。
しかし、誰もなにも覚えていないというのは悲しいものがある。竜一だけがあの世界にいった可能性もあるのだが、まあそこは後々考えるとしよう。
今一番重要なのはなにか。それを考えるべきだろう。
……そういえば。三学期の最初に、課題テストがあるのだった。
「やばい。軽く二年くらい勉強してないぞ」
どうせみんな一緒なのだからいいと考えていたが、もしも仮に竜一だけがあの世界にいったとしたら……お、おそろしい。
「かえってまずすることが勉強か。高校生だもんな。俺」
分かっていたことではある。だが、なにかが納得できない。
机に飛び付いた。
ウィンドウを開いて教材データを引っ張り出す。
うーん。全然わからん。
理不尽だ。あの世界に送ったやつ、絶対に許さん。




