たまにはスポーツでもしよう
さて、日々攻略のために生徒たちが動いている。
それはいいのだが、そればかりしていても疲れるのだ。これは普通である。
そして誰かが言い出した。
スポーツでもしよう。と。
で、ゼツヤがすでに作成済みだったのだ。
何で作ったんだ?という質問に対しては『何となく』であったが、まあそれはいい。
早速やろうという話になって、遊具がせっせと並べられた。
ちなみに全部耐久値無限なので壊れることはない。
「そういえばゼツヤ」
「なんだ?バスター」
「ユニフォームでするのが基本だよな」
「一応作ってあるぞ……あ」
ゼツヤはバスターが言いたいことを理解した。
そう、ユニフォームだ。スポーツをする際に必ず必要と言うものではないが、普段が戦闘服のものが多いのだ。みんな使うだろう。そして、結果的にゼツヤもそうなるのだ。
さて、ここでおさらい。ゼツヤはレベル100だ。これは間違いない。
だが、そのステータスを『MND』と『DEX』という、回復増加と器用さを上げるものしか上げてないのだ。
そして、スポーツをするのだユニフォームにアクセサリーをじゃらじゃらつけるわけにはいかない。当然である。
結果的に言うなら、アクセサリーが無ければゼツヤは非力である。
そして、現在。『ネクスト・レベル』が全く意味がないのだ。
「俺的には風前の灯に見えるんだけど」
「言うなよ」
ゼツヤはその事を完璧に忘れていた。なぜ思い出さなかったのだろうか。
「まあ、頑張るさ」
結局どうやって頑張ったのか。
無論。『オーバーライド』を使用した。
問題なのは前提である。戦闘ではないし、ステータスは非力なのでパターンチェンジを使うわけにはいかない。
そこで選択したのは、『ミズハ』である。要するに直感だよりだ。
ネクスト・レベルが機能するのならそんなことは考えなくとも、全スポーツで全力集中で完封できる自信はあるのだが、それが機能しないため他の手段でするしかない。
なんとも嫌な空間である。
だが、オーバーライドはそもそもゼツヤそのものを変えるためのものだ。ぶっちゃけあまり関係ないのだ。無論、恐らくであるのだが。
「バスケットボールがかなり多いように見えるけど、なぜなんだい?」
「ほぼ毎日見ていたから作りやすかったんだよ」
「そう言うことか」
何回戦ったか分からないほどだからな。まあそれはいいのだが。
ゼツヤは先程からもうオーバーライドを使い続けている。
で、ダンクとか普通にしているが、ミズハは直感でダンクなんてしない。
明らかにいつものゼツヤが混ざっている。
「うーん。体力的な問題かな」
ゼツヤは普段の行動的に敵が多い(本人からしたら不本意だろうが)ので、よく挑まれる。で、その試合をする時はいつもオーバーライドを使い続けている。
というか、そもそもゼツヤはどのような形であれ、オーバーライドを使わないとまともに動けないのだ。
オーバーライドはゼツヤの前提を変える。言い換えるなら、それまでとは全く別な存在に近づくのだ。
それが重要である。
なぜ重要なのかというと、アクセサリーでステータスを強化するゼツヤは、そのアクセサリーがない状態では恐ろしく基本的な速度が変わるのだ。
バスターが見た感じでは、速度制限ギリギリで高速道路を走っていた車が、いきなり時速20キロメートルになるのと同じくらいの比率だ。常人では思考が追い付くことができずに確実に事故る。
結果的にオーバーライドを使うしかないので、ゼツヤはいつでもフルスロットルだ。
まあ楽しそうなので止めようとも思わないのだが。
しかし、ゼツヤと同じチームになった生徒が毎回自分のゴールにボールを入れるのはどういうことなのだろうか。実質、バスケなら1対9である。
サッカーならもっとひどいがな。
野球なんて試合にならない。
ラグビーは逆に強い。何でかは……まあゼツヤが馬鹿だからとしか言えないな。
「しかし、ああ見えてスポーツ万能なんだな」
スタミナが持つかどうかは別問題だが(無論必要なのだが)、センスはある。いや、センスを強引に産み出していると考えていい。
「バレーはすごかったな」
毎回毎回が隕石スマッシュである。手首がもげる。
まあ、要するに……、
「ゼツヤってアホだなぁ」
ため息をはいたバスターだった。
で、ゼツヤが戻ってきた。
「大丈夫かい?」
「普通に疲れました。まあそれは仕方がないかもしれないし、試合数が多いのは悪い話ではなかったからいいけど、ルールは守ってほしかった。うん」
苦労人の性格である。まあ、それがゼツヤらしさなのだが、さて、どうなるのやら、少なくとも、ゼツヤに暇は来ない。
生産のほうが疲れる。そう思うゼツヤだった。
まあ、オラシオンの存在を出しておいたことは、よくも悪くも、効果がすべていっかい無効。
六聖は何事もなかったかのように。




