さn
「「「「オオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォ。」」」」
馬車の周りに20数名の者達。彼らの持つ武器が交わり、甲高い音が鳴り響く。
怒号、悲鳴。現代に於いて、あり得ない殺し合いがそこにはあった。
「網金のオッサン俺の後ろに居ろやァァァ邪あぁぁぁ魔ぁぁぁ!!!」
小沛に向かっている途中、良達は寝起きを盗賊に襲われていた。
呂布に届ける荷物だけではなく、街への物資を持った商人。
最近、商人が減り収入が減ったばかりの盗賊。
届ける事に失敗すれば、処罰されるかもしれない商人。
獲物が居なければ、死んでしまう盗賊。
戦いが激化するのは、仕方のない事だった。
「良羽殿ォォォ!!貴方は若いが人を殺した事、有るのですかぁぁぁぁぁ!?」
自分の命も、危ういのに、元服したて位の良羽に気を遣って問う全法。
まぁその声は、恐怖を振り払うためか叫ぶような声だが。
「んなのねぇぇぇよぉぉぉぉぉ!!!!
ほぼ殺しは、あっけどガチ殺しはねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!
オラァァァァァァァ降伏しろやブッ殺すゾオオオォォォォオ!!!!!!」
何となく暴走族と戦った時の事を思い出す。
槍を突き出してきた賊の一撃を避けながら、借りた剣の柄頭で兜の上からブン殴り、横転した族の頭を、思いっきり蹴り飛ばし気絶させる。
その隙を突いて、後ろから首を叩き切ろうとしてきた賊、それに追従して追撃をしようとする賊。
蹴り上げた足をそのまま後ろに振り上げる事で逆かかと落とし・・・首を狙って剣を振ろうとした賊の、ゴールデンボールをゴールデンボンバーする。男が聞けば皆、大事なとこを押さえるであろう声を上げ口から泡を吹きそのまま倒れる。
突撃した仲間の惨状を目の当たりにし、一瞬ひるんだ賊を振り返りアイアンクローで気絶させる。
掴まれている、仲間を救おうと左右から剣を振りかぶってきた賊二人に、掴んでいた賊を投げつける。
それにぶつかり運悪く転び頭を強打し気絶する左側の賊。
挟撃に失敗し、たたらを踏んだ最後の一人を、またアイアンクロー。
そして、何故か良の頭の上でドヤ顔をする白。
「・・・大将はドイツだぁ。」
「グルルルルルルル。」
満面の笑みで右手に賊をプランプランさせながら問う良。
先ほど5人を瞬く間にたたき潰した良に恐れをなして動けない賊。右手でプランプランしてるのも効いているのだろう。
「た、大将は俺だ。」
ひげ面の男が顔を青くしながら前に出てくる。
「出てきた事、褒めてやる。
武器を捨てて降伏か細切れか、三数える間に考えろ。」
できる限り威圧的かつ俺ブチギレてるよ、最高に苦しませて殺すよ?いっそ死んだ方がいい位な殺しかたするよ。みたいな空気と顔を作りながら数えだす。
「さn「降伏します!!スイマッセンしたァァァ。」
いい年こいたオッサンが九十度に頭を下げながら、すごい勢いで武器を捨てる。
それに追従する部下。
「縄あるか。網金さん?」
未だ右手プランプラン状態で賊を縛る為に、縄が有るか聞く。
「有りますよ。さぁ賊を縛り上げてしまいましょう。」
自分の命を狙ってきた敵とはいえ、プランプランした賊に同情の念を送りながら護衛に指示をする。
「フウ・・・お疲れさまです、皆さん。
しかし良羽殿大活躍でしたな。一人を打ち取り四人を叩き倒すとは。
・・・・・どうしました良羽殿?」
良羽の様子がおかしい事に気づく全法。顔が真っ青だ。
「スマン網金さん・・・
人を殺したのは初めてで変な気ぶ・・・オエェェェェェェェエエエエエ。」
いくら命を狙われ相手が殺しにきたとしても、以前にほぼ殺し(殺してはない)をした事があろうとも、平和な時代を生きていた中学生にはきついものがあったのだろう、殺すつもりが無かった者を殺してしまった。
手に残る感触はリアリティがありすぎた。コレは現実だと確信した良だった。
口から昼に食べたものを、出しながら。
「良羽殿。初めての人殺しとは、辛いものでしょうがそのうち馴れますよ。」
そして良が落ち着くまで背中をさする全法だった、この時代の厳しさを教えながら。
ついでに言うと白は刺激臭が嫌らしく、うがいをするまで心なしかしかめっ面だった。