兗州と豫州の若き才
感想、誤字報告有難う御座います。
たぶん直せました。
こんな感じですが暇潰しにでも読んでってくれたら幸いです。
プラリ、プラリ。
良の視界の両端に白毛に包まれた足が入っては消える。コレは良の頭に腹を乗せダラーんと垂らしてる白の前足だ。
パカリ、パカリ。
良の耳に軽快なヒズメの音が一定のテンポで入り込む。コレは良を乗せた愛馬が奏でるものである。数日ぶりの散歩に馬の機嫌も良い様だ。
彼等は今、散歩中。
荷重業務と言うほどでは無いが新規事業の仕事が一段落し、子供達への教育も今日は終えたので夕日を眺め散策し気分転換をしてるのである。
この前捕虜にした予州黄巾を含めた戸籍整理は袁覇が、其れによる開墾計画の変更は袁敏が、そして呂布に頼まれた水運強化を崔鈞が主導し良が総責任と監督と言う名のサポート要員……計算機と言った方が近いかもしれない。という仕事が主な為に相対的に仕事が減ったと言うこともある。
「あーまた網金さんに資材とかたのまねぇと。…銭と絹で足りっかな」
中々に盛況な市場を眺め歩きながらふと口に出す。金銭のやり取りと言うよりは圧倒的に物々交換の方が多い。
悪漢の類も少ない様で規則により大きな道の真ん中を異民族の屈強な騎兵が警邏しているのが効いていて半端な乱暴者達は声も上げられないのだ。
うん超平和。その感想と共に満足げに頷くと白に帰るぞと声を掛け、馬首を返して市場を背にすると壮年の男に呼び止められた。
「白虎様、白虎の県令様!!」
「あぁ村長さん。どったの?」
「グウ?」
句陽に元から住んでいた者の代表である村長さんであった。何時もは決まった時に陳情書なんかを渡してくるのだが今日はその日では無い。目が合えば挨拶程度は普通にするものの態々帰ろうとして居る時に呼び止められるのは初めての事だった。
曰く、北門で変なのが騒いでる。
そう言われると放っては置けない。
北門の外の平原は葛まみれになっており色々と使えるので放置しており、特に葉は家畜の餌に仕える為北門の東側に異民族居住区を作ったのだ。そして葛は繁殖力高く色々と使える為に大通りを挟んで西側に流民なんかの居住区を建てていた。
そんな訳で偶に文化の違いでイザコザが起こりやすい箇所の一つであった。
対処できそうならサッサと対処すべきだろうと良は散歩の続きと称して白を懐に移しそちらに向かう。
市場を抜けてそのまま真っ直ぐ門へ続く大通りを進めば東に異民族用の居住区、西に黄巾や流民の者達の居住区が未だ拡張を続けて木縋が鳴っている。
異民族の区画は家畜の為、黄巾や流民の区画は人の為の家屋を増築しているのだ。
まぁ、今はそんな事はどうでも良い。
大通りは馬車道と規定している為、人通りがなくなったのを皮切りに遠く遠くに見える北門に向け馬を駆けさせ急いで向かう。
無言で馬を駆けさせていると色んな理由で壊れたまま放置されたボロい版築の城壁と櫓だけはソコソコ立派な北門が直ぐに視界に入る。
近付き速度を落とせば既に日も傾きだしたと言うのに門に人混みが出来ていて騒がしい。
人混みの中心は難しい顔をした屈強なフェルト生地の服を着た族長と、彼の一族に囲まれた困り顔の良と同年程度の男と自信に満ち溢れたと言うかドヤ顔イケメンの二十代中盤ほどの男の計三人の様である。
イケメンがフェルト族長に何かを頼み込み、困り顔が諌めている。
族長は唯横に首を振っていた。
「何かあったか!?」
「オォ、白虎ノ大人」
「焼何の族長さん。お待たせ」
「ガウ」
良の問いと白の一鳴きに一番最初に答えたのは涼州騎兵の羌族の焼何種の族長であった。彼も又、先程の村長の様に陳情書を持って来たりしてくれる人なので良のよく知る人物である。
彼等は呂布に預けられた騎兵の者達で従っていたナントカ族のナンチャラが馬ナンチャラと韓ナンチャラの争いが激化して巻き込まれたせいで部族と離れるハメになり、周囲の状況から呂布の声かけに頷いたらしい。
因みに上記の話は群雄、馬騰の事である。
…悲しいかな良は彼等の事を忘れていた。まぁ、涼州が何処だがわかってない事や字名だった事、顔見せの際の飯の途中の暇つぶしに話を聞いていたせいでもあるが。
閑話休題。
イケメンのドヤ顔が大仰に手を広げ気色を浮かべて割り込む様に語りかけて来た。
「おぉー、おぉー、噂の白虎県令殿か。
ちょうど良い。
彼等羌族の弓。私の知識欲の為に廉価の物では無く正規の物を三つほど買い取りたくてな。
昔の匈奴は見せてくれたと言うのに一張り十金でも首を縦には振ってくれない。私の後学の為に口利きしてくれないか?」
ニコニコとそう言って良を見上げる何処か病的な迄に色白なイケメン。なんかヘラヘラしててもイケメンと言うよくわからない男である。
「…無茶を申されますな奉孝殿」
今度は困り顔である。
困り顔は小柄で苦労人っぽい。雰囲気だけなら初めて会った時の崔州平に通づるものがあった。
ブレーキ役は分別あるらしいと判断して良は断る。
「羌の人との約束があるから無理だ。
弓の作り方は聞かねぇし探らねぇ。そう言う約束をしてる。
てか、あんた何処の誰だ?」
「・・・あぁ、悪い悪い。
弓はダメか…まぁ残念だが仕方ない。
私はそうだな…うーん、酒池と呼んでくれ字名は肉林とでも。
天下隅々を寝床として居るので何処とは言えんが」
「・・・適当すぎだろ。いっそ清々しいなオイ。…字名は奉孝で良いだろ。
そう呼ばれてたんだから」
「じゃあ、酒奉孝で」
「…で、其方さんは同い年くらいっぽいけど?」
「あ、私は此処に士官しに来たのです。
姓を王、名を粲、字名を仲宣と言い、齢は十八。
出身は此処兗州山陽群の高平になります。
師は書家蔡左中郎将。」
「…兗州出身なら陳太守ん所とかじゃなくて良いのかい?」
「ハイ師の弟子として面識は有るのですが若輩故に才有る者を求めると聞き此処へ」
「あぁ、助かるぜ。
他に何が出来るか教えてくれる?」
「…算術を少々」
「両方出来んの?」
「はい。それなりに出来ると自負しています」
「ッシャ!オラァ。
とりあえずどの程度か見る為に俺の従事として雇うよ。後々の俺の側近ってヤツさ。
あぁ!族長さん。ちょうど良いからコレでまた羊肉分けてくれる?」
そう言って羌族の族長に銅銭の束をいくつか纏めて渡す。
頷く族長が周囲の者に羊肉を取りに行かせていると驚いた顔をして王粲が聞いてきた。
「!!…雇って頂けるので?」
「・・・?むしろ歓迎するけど…。
同い年で片方得意ってのなら結構来てくれたんだけど両方となるとウチでは希少なんだよ」
様子を見ていた酒肉林が割り込んで来た。
「…うーん。仲宣の文才と算術、更に記憶力は尋常じゃ無い。
此の酒奉孝が認めるよ。…酒を奉り親の様に尽くすか。今度からこう名乗ろう」
「前半は解るけど後半何言ってんのコイツ」
「ハハ…怪しいかも知れませんが悪い人では無いんんですよ」
「…まぁ、良いや」
乾いた笑いを浮かべ良は酒奉孝はこうゆう人間であると諦めた。軽くため息を吐いて王粲の住む場所などをどうするか聞かねばと思い立った所で羌族の族長に呼ばれる。
「少シ良イカナ大人」
「どしたん族長さあっ!!」
話しかけられた為に族長の方へ首を動かす途中に族長の両手に支えられているある物を見て嬉しそうな驚きの声を出す。
「出来た!?遂に?いいの!!?」
嬉しそうに問う良に優しく微笑み其れを手渡す族長。見上げる頭上の白虎に落ち着けと言わんばかりに前足でデコをペシペシされているところが微笑ましい。
其れは弓だ。騎馬民族特有の物ではあるがその大きさは王粲よりも酒奉孝よりも族長よりも大きい。良と比べてやっと同じくらいである。
目敏く、興味津津な眼を向ける男は酒奉孝である。
「県令殿、県令殿。其れは何かな?
一見は彼等の弓。しかし余りに大き過ぎる」
「あ?あーアレだ。羌族の人達を此処に住ませる為に色々してた時に作って貰う約束してた俺用の弓。
違うトコもあるけどよく練習してたのはコーユーでかい弓だからな。つってもコレだと半弓ってトコか」
そう言って良の握る弓は此の中国では見たこともない様な大弓である。其れを半弓と称した所に酒奉孝は違和感を覚えた。
確か鄴に避難していた頃、公孫氏の治める遼東から逃げ出した名族の一人から高句麗の更に向こうに変わった弓を使う東夷がいるという話を聞いた事があるが…まぁ、まさかな、とその弓をよく見る為に思考を切り替える。
「白虎殿。私にあんなことを言っておいて、私の目の前でそんな物を手にするのは酷いじゃないか?」
「あ?あぁ…良いだろ。金はもう払ってるし此の弓は信用の問題だ。
実際、金払って出来た後に渡しても良いと思ったらくれっつてたんだからな」
「ソウ言ウ事ダ若キ漢人ヨ。
我等ノ秘中故諦メテクレ」
「え"ーだぁーの"ぉーむ"ぅーよ"ぉー!!
ホントちょっとで良いから少し。半刻でも良いから!!」
遂にガキの様に寝転がって手足をバタバタと駄々をこね出す酒奉孝。
皆の共通認識は面倒クセェである。
仕方無しに良が折衷案を出す。
「んじゃ此の弓を腕の真ん中まで引けたら一刻だけ見せてやるよ。其れでダメだったら諦めろ」
その一言にピタリと動きを止めて起き上がり不敵な笑みと共に言う。
「ふっふっふ!私の腕力が貧弱な自覚はあるが其れぐらいなら…まぁ、なんとか出来るかな?」
「いや知らんけども…」
そう言うと良は軽く脚を開いて掲げる様に弓を握り、そこから平行に下ろす様にスッと弦を弾く。
「うん。良い弓だ。こんな感じで引けば良いぜ」
弦を元の位置に戻しながら手に馴染む弓の評価を呟き弓を渡す。
其れを鼻息荒く…整った鼻をフンフンいわせて受け取る酒奉孝。
良を真似て足を軽く開き、弓を掲げる様に構えて…。
「ヌァん!!?」
奇声を発した。ちなみに弦は5センチ程動いたが直ぐにバイィンという音と共に定位置に戻った。「にぃ〜っ」とか「ふぉおおお!!」とか言って何とか弦を引こうとするも碌に動かせない。
力尽き果てゼーハー言ってる郭嘉を哀れんで族長がタネを明かす。
「因ミニ其ノ弓ハ弦ヲ張ルノニ五人モ必要ダッタ強弓ダ」
其の言葉に眼を見張り良を凝視する酒奉孝。良が苦笑いを浮かべて頭を掻きながら悪いと言うと固まった。
「郭嘉奉孝。一生の不覚」
「ん?」
脱力し項垂れながらボソリと呟いた酒奉孝…郭嘉の呟きに良の目が獲物を見つけた虎の様に煌めいた。
「なぁ酒奉孝。羌族の人達の弓について知る方法が一つだけあるぜ?」
「!!其れは…どんな?」
「簡単だよ。
ウチで働けばいい。羌族の人達の統率なんかを王方さんって人を親父に借りて頼んでる。けど騎将としては自他共に認める程凄い人なんだけど文官としての能力に自他共に悩んでてな。
王のオッサンを補佐して羌族の人達との信頼関係を築けばいい」
「…貴様。此の郭奉孝の事を知っているのか」
そう郭嘉。此の名前に良は覚えがあった。
なんかメッチャ頭良い人。そんな覚えが。
と言うか三国志演技を知る者で郭嘉を忘れる事は先ずないだろう。
「…まぁ、小耳に挟んだだけだが。
何なら義親父や魏脾将軍、陳軍師、高中郎将。其れか張校尉、成校尉、曹軍侯。
後は文官としての仕事が多そうだけど張陳留太守、王東平国相、秦済陰群丞には紹介状を書ける」
羅列したのは其々、呂布、魏続、陳宮、高順、張遼、成廉、曹性。
更に張邈、王階、秦宜禄である。
眼を鋭くすると郭嘉は問うた。
「全てが兗州牧の重臣。
県令殿は何故そこまで俺にこだわる?」
おちゃらけた雰囲気など何処かに吹き飛ばし、鋭く良を凝視し聞く郭嘉に良は余裕の表情で鼻を鳴らしてから言った。
「勘」
「・・・・・・・・・。
白虎殿は何故そこまで俺にこだわる?」
「いや、だから勘だって」
コレは事実とは少しだけ違う。
確かになんか出来そうと言う感覚はあったが元々、良自身は郭嘉をなんか凄い人と言う漠然とした認識をしていた。話してみてなんか凄そうと言う認識が強まった為に登用しとこうと決心したのだ。
其の説明が面倒なので勘とそう言い張った。
しかし其れでは郭嘉は納得しかねる様である。未だに良に鋭利な視線を向けていた。
「・・・解った。
じゃあアレだ眼前に陳平、張良か呂尚みてーなのが居たら味方に引き入れてぇだろ?
少なくとも敵対はしたくねぇ。
…つーか面倒クセェな。
気持ちは解るけど俺みたいな猪突猛進野郎にそんな事いちいち聞くんじゃねーよ
マジで勘でしかねーよコノヤロー」
「ふむ…無駄に持て囃したせいで胡散臭さが増したな。
だが県令殿の様な直感だけで物事を決めてしまう妙なのが居るのは解る。
実際に其れで兗州を手に入れたのが白虎殿の義父殿だからな。
県令殿の意思は俺を登用したいと言う事で良いのだろう?
ならば餌を出せ。司徒の招集を蹴った此の郭嘉を釣れる餌を」
そう言われると良は少し腕を組んで空を見上げて考える。
ソコソコの間を置いて口を開いた。
「…族長さんのトコの大老様って確か大秦や月氏の事について話せたよな?
確か若い頃に安敦て人の使者に会ったり西域から来た支婁迦讖て人にいろいろ聞いて長安近くまで護衛したんだっけ?」
「ウム。トテモ長イ旅ノ途中ダッタト聞イタ。ソシテ其ノ西域ノ月氏ノ者二、西域ノ事ヲ聞キ、商人ニ更ニ遠ノ大秦ノ事ヲ聞イタソウダ」
グルグルと思考を巡らせる郭嘉。
西域とは涼州の更に西向こうにあり100年ほど前に漢の勢力下では無くなり異民族の勢力下になった場所である。そこから商人なんかの行き来も最近途絶え今は未開の地。
更に大秦など其様な大国が実在し、有事に王を立て、有事が去れば王も又位を去ると言う面白い話は聞いたが其程度の認識しか無かった。
自分の生まれた四年前に使者を名乗る者が入朝したと言うが其れのことだろう。異国の献上品としてはさして珍しい物では無く郭嘉の見立てでは使者と言うのは偽りではないかと思っている。恐らく護衛したと言うのは此の男の事だろうと予想できる。
漢とは別の大国の話とは興味が出て来た。
否、又聞きだとしても唆られる。
長安と洛陽は未だに危うく其話が最も早く安全に聞けるのは此の兗州で間違いないだろう。
「…県令殿、王殿は兗州牧の従事だろう?」
「そうだな」
「確か県令殿は県を治めるだけのクセして丞を二人も任じて左右に分けてたな?」
「ん?よく知ってるな。
色々すんのに人が足りなかったんでそうなった」
そこで郭嘉はニヤリと…ドヤった。
「ならば県の丞相。国相の様に県相を新たに置いて其処に左右県丞殿のどちらかを置き、私を左右県丞の何方かに任じてくれるのならば白虎殿に仕えよう。
あ、あと職務中でも酒飲みたい」
「ああ、其れはダメ。様子見で先ずは左右県丞の手伝いと王さんの手伝いしてもらう。
袁覇さん達は諌めるくらいしかしないけど、下官とかに不信感を持たれると面倒いから下働も少しだけしてもらう。
ただし給料は弾むよ。酒はまぁ、度が過ぎなければ良いよ
「・・・解った。意外と冷静だな県令殿」
さて正直に言おう。
実は郭嘉は良に仕えるためにここに来た。
郭嘉奉孝という男は知識欲の強い男である。そして、其れと同じくらいに地元愛の強い男だった。
此の時代の地元と言うのは重要で有る。
呂布が張遼や張楊と縁を結び、李粛の懐柔や王允の謀反に乗っかったのも同郷故。しかし郭嘉は人の縁を除いて尚、天下の凡そ中心に有り情報の集めやすい地元を愛していた。
其地は豫州潁川。
鄴に避難していた頃は烏丸や東夷のことを聞きかじり其れなりに楽しく過ごしていたが黄巾の残党や袁術とかいう短絡的にしか物事を見れないバカの所為で地元が荒れるのには忸怩たる思いであった。
そんな時に呂布が皇帝を救ったという急報が入る。故郷が同じ郭図が元々朝廷に向かう事になっていたので其れに同行したが目にしたのは聞きしに勝る荒れた都であった。
あわよくば同郷の鍾繇と共に地元復興をと思っていた郭嘉は漢王朝を頼る物では無く使う物と評価を下げ、己が仕えるべき先を探した。
袁紹は人を使えず、皇帝は力無く、呂布は戦バカ、張楊は不安定、劉表は優柔不断、孫策はその内殺されるだろう。
そして何より自分は不真面目である自覚があった。
しかし郭嘉の望む故郷を救うという意味で一番将来性が有るのは黄巾の流民を取り込み異民族まで取り込んだ呂布だろうか。
何より、豫州へ出兵できる可能性が一番高い。
そんなことを考えながら朝廷からの出仕要請を断っていると王粲という若者に出会った。
曰く、士官の為に荊州に行こうと思ってたら豫州黄巾に呂布が攻め込んだらしい。
コレで郭嘉の腹は決まった。後は呂布周りのことを調べ上げ、自分の悪いとこに目を瞑ってくれそうなと言う意味で一番自分を活用してくれそうな者の元へ王粲と共に向かったのだ。
因みに才は優れているが見た目のショボい王粲を試金石にしたのは秘密で有る。
…流石に書家蔡邕の事を知ら無いのは驚いたがまぁ、田舎者ならこんなもんだろう。
「ソウダ大人、今日ノ羊肉ダ。受ケ取ッテクレ」
「おっ!!有難う族長さん。明日はガキンチョを向かわせるよ」
いつの間にか寝ていた白が鼻をヒクヒクさせて青い瞳を見開く。良の懐を飛び出し族長の周りをウロウロして肉をねだった。
「県令殿。此の白虎はよく躾けられているな」
「あぁ、白って言うんだ。頭いいからおちょくると噛まれるぞ」
「ハッハッハ。こんな愛らしい、其れこそ猫のような…」
話している途中。郭嘉の脹脛にチクリと何かが刺さった。
「……ハッハッハ白殿は誠凛々しく賢い。
だからその口を閉じずに少し離れてくれないか?
……県令殿。助けてくれ」
「・・・其れぐらいなら謝れば許してくれる。後、御世辞は嫌いだぞ白は」
「すまなかった白殿。許してくれ」
郭奉公。人生初の窮地を脱した瞬間だった。




