懐かしい地g・・・修行
硬直してから一時間ほど時が経ち、とりあえず落ち着いた良と商人は、天上人どうこうの誤解を解き、自己紹介をしていた。
「あー俺の名前は武井、字は良羽と言います。
齢は15です。多分めっちゃ東から来ました。
コイツは白。」
「ガウ」
三国志のドラマで見ていたポーズをまねて、拳を作りそれにあわせて手のひらをかぶせ礼をする。
そして良のオデコに爪を突き刺す白。
*ちなみに字の”羽”はつええ=関羽の羽とか項羽じゃん・・・
よし、もらったろと、適当にもらった。
名前も名字そのまま。考え無しである。
「私の名前は全法 、字を網金と申します。
下邳にて商人を行っているものです。」
同じく礼をする網金・・・目の前の若者の額に爪が突き刺さっているせいで顔は苦笑いだが。
「ところで良羽殿、町を探しておいでなら、ご一緒に小沛まで行きませんか?
良殿は逞しいですからな、賊も寄ってこないでしょうしな。
近いとは言え、このご時世。油断は、いけませんしな。」
「助かります。ご一緒させてもらいますよ。」
『つか賊て、マジか、本気で三国志かよ。』
網金のご厚意に甘えさせてもらい下邳まで一緒に行く事になった。
「網金さん思ったより遠いな、小沛は。」
いつの間にか寝ている白を、落とさないようにしながら言う良。
「そうですかな?ですが、もうすぐつくので、後少しの辛抱ですぞ良殿。
それにしても、良羽殿は実に逞しいお体ですな、なにか武術の心得でも?」
「・・・父方の祖父祖母、母方の祖父祖母そして父母にしばき回されました。
剣・槍・弓・武術とか特に得意ですね。
まあもう、会えるかどうかもわかりませんが」
「あ、いや・・・申し分けない。
やはり、戦は好きになれませんな。」
「あぁ、いや、死んだりは、して無いですよ。
ただ、会えない可能性が高いってだけで。
それに、たぶん親父達なら
”まああいつならどんな所でもでも余裕で、生きて行けるだろ、水さえ有れば何とかなる。少々の事で、死ぬような柔な鍛え方はしてない”
とか言ってると思うんで・・・。」
懐かしい地g・・・修行を思い出して遠い目をする良。
「良い、ご家族だったのですね。」
そして、それに対し勘違いをして言葉をかける網金。
「そうですね・・・五歳児に真剣なんて物、持たせなければ最高でしたね。
あと、化け物級ジジイから一本取るまで飯抜きとか、一日最低千本の矢を、的のど真ん中に、ぶち込まないと腕につけた重りを足すとか。
槍もって全力で追われたり・・・・・・・・アレこれ虐待じゃね?家帰ったら虐待の続きさせられんじゃね?」
よくよく考えると、よく今まで生きていたと思う。
そんな事を言いながら、少し涙ぐむ良。
「お、おぉ・・・。」
そして自分の勘違いに気づき、そして地g・・・修行の内容にどん引きする網金。
網金や護衛達に、慰められながら下邳を目指す良だった。