狂笑と戦果
曹仁の食客とかが解らなかったのでオリジナル武将的なものが出てきます。苦手な人は済みません。
暇つぶしにでも読んでってくれたら幸いです。
呂布、劉備連合の騎馬隊が任城へと続く道で敵の物見三騎を発見。
人馬の疲労具合や匂いなどで敵が大分急いで来たらしいとあたりをつけた呂布は陳到と千騎を迂回させ、自分は二千騎で敵への騎乗突撃の敢行を即座に決定。
そう進むこともなく休憩に入ろうとしていたのか慌てて武器を取り馬に乗ろうとしている敵を発見した。
見れば敵の軍列は街道に沿うように伸びきっているのが良く分かる。
それこそ経験の浅い良でさえも漠然と勝てそうだなと思わせる程に。
呂布は先頭に進み手で合図を出し街道を外れ敵の右側方位で言えば西側に馬足を落とさず回りこむ。弧を描くように敵先頭の騎馬隊を通り過ぎ後ろの歩兵に向かって進んで行く。
敵の歩兵の長々と伸びた先頭約五百。座りきっていた上先頭の馬群に視界を塞がれていたがために迎撃準備の全く出来ていない一団に騎射を放ちそのまま呂布を先頭にして切込む様に突撃。
呂布は響き渡る高笑いを発しながら奉天画戟を振り回す。
その左右で武器を振るう良と成廉。更に屈強な戦士達も口を孤月の様に釣り上げて人を塵の様に切り飛ばす。
ちなみに戦場の悉くを垣間見て怖い顔ランキングを付けるなら一位笑顔の呂布。超えられぬ壁を経て般若顏成廉。次いで踏ん張りすぎ良だろうか。
つん裂く金切声を上げて尿道全開で逃げ惑う兵達。
だが嘲笑ってはいけない。
目の前でさっきまで話していた仲間達の腕が首が胴が飛び回る。
命の危機から少しでも離れようとするも、突撃の中央に当たる場所にいた者など眼前の味方が崩れ落ち、周りには身動きの取れない味方が壁になり逃げられず。後は馬に弾き飛ばされ地面に横たわり挽肉になった。
勿論、雑兵の蛮勇か、正しく必死の思いで反撃しようと武器を振るう者もいたが圧倒的な間合いと技量の差で馬に傷を負わすことさえ出来ず弾かれ轢き殺される。
運悪く呂布に狙われた百人を指揮する名も知らぬ伯長に至ってはこの世の最後に狂笑を目に焼き付け唯恐怖に支配されながら首だけが宙を舞っていた。
武器を振り回しながらそれらを見る良は何故かタイムスリップ的な何かが起こる前に見た暴走族に金属バット一本で挑んだバカを思い出す。何処か冷静にそんなどうでもいい事を考えながら肝の底から浮かぶ様な衝動に身を任せ武器を振るう。
殺られる側は長く感じるがその蹂躙は亡骸を残し風のように過ぎていく。
呂布達の突撃は隊列を崩さずそのまま直進し湖のある東側に駆け抜けたからだ。
そして此の行動には訳がある。千五百の兵で矢印のような陣形を崩す事無く大きく楕円を描くように戻り敵を再度眼前に置き呂布は良を連れ今度は後方の兵と隔離された曹仁率いる騎馬隊の土手っ腹に突撃を敢行した。
そして今回は先程の様に通り過ぎる訳では無く敵深くに入り込んで襲いかかる乱戦である。
馬に乗り損ねた敵は馬体でもって弾き飛ばし踏み潰す。
馬に何とか乗れた者も焦りと急な展開について行けず駆け抜け様に首や手首に太腿などを切られ戦闘不能にされる。
そもそも此の急襲に対し今現在曹仁の騎兵達は馬に乗れる者は居ても馬を進めさせられる者は一人も居なかった。それ即ち超いい的である。
そして良はと言うと呂布に付いて馬を走らせ、ただ武器を構え進む。此れだけで敵は良の持つ偃月刀の刃に刈られ動けなくなった。だが、騎兵というのは基本訓練を積んだ精鋭だ。未だ数は少ないながらも何とか呂布達の攻撃を止めようと直剣を手早く抜き馬を何とか走らせ数十騎が迫る。
「ハァァアアアアアア!!」
敵が吠える。
「オォラァァアアアア!!」
味方も吠える。
呂布を筆頭に十数騎が交差する。
呂布が一瞬の間に三人の首を落とす。
良もそこそこの兜っぽい奴の首を交差時に斬りとばす。
「取ったぁどぉおおおおおお!!」
良はもう野性的な勝利に酔いしれ脳内のアドレナリン射出用蛇口がブチ壊れていた。
その後も漸くワチャワチャと迎撃の準備を整え反撃しようとする敵に馬を走らせながら腿だけで身体を支え武器を振るい、立派な鎧を着たものがいれば流れる様に武器を構え馬の突進力に自分の筋力フル活用した一撃で敵を馬上から弾き飛ばしている。
笑いながら5、6騎同時に相手にする呂布はもう此の際置いておくがその活躍は古参兵も目を見張るものがあった。
そうして一頻り暴れた後、呂布と良率いる騎兵は曹仁のいるであろう先頭目掛けて進んでいく。
呂布達が騎馬後方に突撃をした頃、良達の目指す騎兵の先頭。その場所に1人の大男を中心に勇壮な数百程の騎兵が現視界に入る。
皆、其々兜さえ被らず馬にまたがっていた。
「おのれぇっ呂布!
よくもやってくれたなぁ!!
皆の者戦うな!!引くのだ、只々馬を走らせよ!!
1人でも多く生き残り此の状況を曹操に知らせよ!!」
「待たれぃ曹仁殿!其れでは・・・」
「貴方も早く、敵は呂布ですぞ!!
抗父へ引きます。歩兵達へは馬を走らせながら撤退を伝えます!!」
一瞬で戦場の状況を理解し抗父へ向かい離脱を試みる曹仁。アホみたいに迎撃しようなどと考えず自分達の懐事情を鑑みて歩兵を捨ててでも呂布が攻めてきたという驚天動地の知らせと、能力高く希少で数少ない騎馬の中の自分の率いる精鋭騎兵と曹操の協力者を生かそうとした結果だった。
『騎馬という兵種は反転に手間取る。乱戦となるであろう今であれば尚の事すぐに追いつくことは流石の呂布でもできない。』
呂布が突っ込んできた湖側に呂布の乱戦開始と入れ替わる様に一気に三百程のものたちと共に離脱した。
「付いて来られるものは皆、付いて来い!!戦うなぁ抗父へ引くぞぉ!」
だが、騎馬戦。更には遭遇戦と言う一秒一秒の瞬間的な決断能力が何においても重要な戦いで呂奉先に勝る将は此の後漢という時代においては一人もいない。
何せ野生の感的な何かを持っているのだから殺し合いで人間が勝てるわけないのだ。
更にその獣思想を共有出来る部下。
「ガッハッハッハッハァ!!」
成廉がいる。
「何とっ!?」
曹仁の離脱の為の前軍として前を進んでいた者達を弾き飛ばしながら突然現れ猛進する成廉。
そして勢いそのままに戦場を離脱しようとしていた曹仁に目掛けて大斧を握り迫り来る。
今迄通って来た道の脇を味方を避ける様に駆け抜けていた為、曹仁達からすれば、突然現れた様にさえ感じられた。
歩兵への突撃の後、陣形から抜け五百名ほどを集め呂布達と離れていたのだ。
呂布に追われない様にする為と東湣だと遠すぎる為、元来た道を戻り歩兵達へせめて声をかけながら抗父に逃げるだろうという呂布の予想が的中した形であった。
まぁ、騎兵の特徴を良く知っている曹仁に対してわざわざ後ろの歩兵を突破し歩兵と分断しつつ反対側に行き、もう一度突撃して直感的に湖側に誘導し東湣に行きにくくしたのが効いたと言った方がいいかも知れないが。
こうなれば曹仁もやむ無しである。
自分の周りにいるニ百に満たない疲労困憊の騎兵でほぼ同数の呂布率いる騎兵から逃げれるとは思わない。
「任殿!!貴方だけでも逃げるのだ!!!
後方が騒がしい。
東湣から此方に向かっている惇にこの危機を伝えてくれ!!呂布は既に兗州に入り込んでいたと!!!!」
「しかし・・・っ否!!否であるっ!!
解った曹仁殿!無茶を為されるなよ!!」
「解っている。曹操を頼むっ!!!
牛銀三百の精兵と共に任殿を守れェェェ。」
一瞬迷うも力強く頷き馬を西に向け鞭を打つ。後方が騒がしいという事は、伏兵を仕込んでいたのかも知れない。未だ戦準備も出来ていないと思っていた呂布軍がこんなところまで来ているのだから最悪を想定すべきだろうと曹仁の指示に従い護衛として付けられた曹仁の食客牛銀に促され嘶きを上る馬に鞭を入れ大地を駆けさせる。
馬に跨りながら後悔と不安を振り払う様に馬足を上げさせる任俊を漸く迎撃の準備を終わらせ先陣に追い付いた黄色い頭巾の者達が追わせまいと道を塞ぐ。
そんな任俊の背を護衛の者達の間からチラリと見やった後、何とか持ってくることの出来た槍を持つ。
「全く持って愚かだ私は。」
「曹郫将軍お逃げぐャァ!!」
「っ!!?」
ドチャという音と共に味方の護衛や物見として曹仁よりほんの少し先に進んでいた二十余騎が上半身と下半身が分離して地面に叩きつけられる。
眼前に獅子髭の将。その将の後ろに控える馬から何から筋骨隆々な化け物達。
見知った顔との距離は既に声を上げれば互いの耳にその声が届くほどの距離であった。
「・・・!!?
成廉。成る程な、此処に到達するまでの速さから張遼か貴様かとは思っていたが。」
「オオォ!!やはり貴様が率いていたか曹仁。
好敵手よォ久しいな。又、死合おう!!
ガッハッハッハッハァ!!!
李鄒よ百騎預けるぞ!!
曹仁の逃がそうとしているあのヒョロイのを追え。但し深追いはするな。」
「ハハッ!!」
任俊へと向かい化け物達が駆け出す。
歩兵が妨害しているが、呂布率いる騎兵の足から逃げられるかは解らない。
その対応の早さにいっそ賞賛を送りたい。そんな事を考えた己に苛立ちながら敵を見据える。
『ッチィ。何とか惇に伝えてくれ任殿!』
「ガッハッハッハッハ!!
いくぞぉ!!!」
馬の速度を上げ顔に笑みを貼り付けて高く武器を構え成廉と百の兵が突っ込んでくる。
騎兵同士が擦れる様に交差する。
同時に金属の接触音。
「グゥアアァ!!?」
何とか馬から叩き落される事だけは防いだものの、顔に向かってきていた大斧の刃を受け流しきれそうに無かった為に、槍を両手で支え大斧柄の部分に槍の柄を交差させ弾く様にギリギリ防ぐ。勿論、自分の馬をそのまま進ませては自分の顔を切られるので馬足を緩めざるおえない。
『成廉。此の化物め・・・。
突破してそのまま逃げるつもりだったのだが無理そうだな。』
陣列はバラバラ、真正面に陣取った成廉の部下達により逃げ道を塞がれる。直ぐにでも乱戦となるだろうという事が感覚的に判ってしまう。
「ガッハッハッハッハァァア!!
一騎討ちだな曹仁。否、好敵手よォォオオオ!!!」
馬の首をひねる様にして曹仁に向かっていく成廉。単騎とは言え馬の回頭とはいえ早すぎである。
曹仁も真後ろから切られては防げぬ為回頭する。どう考えても成廉の方が馬術が上手く逃げる道も無い為逃げるのを諦めたのだ。
又も交差する馬。そして衝撃。
二合目、互いにパワータイプなためか空気が揺れる。
其れを合図にして、互いの部下も切り込んでいく。
満面の笑みの成廉と苦々しい顔の曹仁。
成廉の内から出る歓喜を抑えられぬと言外に語る表情に、自分の焦りを強く感じ汗の流れと焦りの奔流が止まらない。
『誰が好敵手だ此の獣め!!
張遼ならばまだ分かるが、貴様は私の上位互換であろうにっ!!』
・・・アレである。
テンション分押されるのだ。気分的問題と言うだけで侮るべからず、成廉の戦狂力は五十三万である。
回る回る。基本的に騎乗しながらの戦いになった時というのは、後ろを取られれば迎撃さえ難しく負けはしないかもしれないが不利である為だ。
故に敵にケツを取られぬ様に戦うのが常である。
何となし戦闘機のドックファイトの簡易版と言った風である。
「ッシァア!!」
「フハハハハァア!!」
三合目、曹仁の鋭い突きを大斧で横に払い腕をねじり斧を半回転させ、燕返しバリに鎧に守られていない曹仁の脇を狙う。
『速いっ!?』
咄嗟にである。頭の中に響き渡る警鐘の音に従い成廉の斧の回転とともに槍を手離し腰に挿している極太の長剣を抜き斧を防ぐ。
「グオオ!!?」
怪我は無い。だが腰にさしている剣は鞘から抜けきれず成廉の圧殺する様な大斧の一撃を受け流し損ね馬上から吹き飛ばされる。
曹操の一門の中でも特に大柄な曹仁の地に落ちる音。その崩れ去る音に気付きその場にいる兵皆の視線が向かう。頭から血を流す曹仁に率いられていた騎兵達は焦りと共に救援に向かうが、相対していた成廉率いる騎兵達に止められるか隙を突かれ殺される。
存外に長く、だが呆気なく。
曹仁軍は駆逐され気絶した曹仁は捕らえられる。
「敵将曹仁!!!
捕らえたりぃぃぃ!!!!
フハハハハハハァァアアアア!!!!!」
戦場に響き渡る声。
此の知らせによりトップの居なくなった曹仁軍は敗走を余儀なくされる。
そしてその声は勿論呂布達にも届く。
基本的に呂布軍の脳筋達は声がデカイのだ。
「ハッハッハ、ハーッハッハハ!!
さすが成廉。
井よ、まだ付いてこれるか?敵の歩兵を狩るぞ。」
「おう!!大丈夫。行こう。」
「ハッハッハ、ハーッハッハハ。
井よ。無理はするなよ。」
戦場に似つかわしく無い親が子を心配し慈しみ、子が親に良いところを見せようと不出来ながらも努力する。そんな心温まる雰囲気を醸し出すやり取りを彷彿させる空間。
周りに大地を皿に血だまりをソースに臓物と糞尿を添えた亡骸が無ければ何と無くほわぁと出来たかもしれない。
・・・無理か。
そんな虐殺的な戦いを終え、取り敢えず馬だけを奪い取った自軍の兵達を見やる呂布。
瞬時に敵の個々の強さを見極め、此れから一番面倒になるであろう騎兵を標的とし、歩兵と分断。さらに曹仁を誘導し兵を割ることを強要させ約七百対し千五百。約三百の敵には五百の兵を当て大兵に対する戦いとして常道のされど難しい各個撃破をなした男は何を思うのか。
答えは難しいことでは無い。
「ハッハッハ、ハーッハッハハ!!
流石は我が兵、我が臣下。
古の猛将達さえ貴様らを欲すだろう。
さぁ後は雑兵刈りだ!!」
呂布の場合、思った事を条件反射バリに言っちゃうし行っちゃうタイプなのだから。
ぶっちゃけ後は、蹂躙である。
微山湖沿岸沿いの街道と黄色い頭巾は赫く染まる。
戦果は捕虜にした指揮官10名と打ち取った兵は千と数百に捕虜は千人近く。
離散敗走した兵は数知れず。
敵が籠城も考えていた為か陳到が持ってきた兵糧など異常なほどの量である。
何より敵大将曹仁を捕虜にする圧倒的な勝利だった。




