第七話 「それぞれの事情」
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皆様ありがとうございます!
リリ様⇒ルル様に訂正しました。
単語登録を間違って登録してました
二人の治療は夜遅くまでかかった。
しばらく様子を見たが、目を覚まさないのでルル様の尻尾まで運んだ。わしを真ん中にして川の字で寝た。
久しぶりのひと肌は心地が良く、気持ちよく眠りに落ちた。
目が覚めると左右に人がいる事に驚いたが、すぐに二人の事を思い出した。
ふむ。傷口が無いか確認せねばなるまい。全身を視診・聴診・触診・打診(あそこは特に念入りせねば!)したが起きないのでわしだけ尻尾から降りた。顔や口の中を生活魔法できれいにしてルル様へ向かった。
「おはようございます。ルル様。」
「・・・・よくまぁ、わたしの上で出来ますね・・・。」
ジト目で見られていたが、反応すると後が怖いので全力でスルーして今日の予定を聞いた。
「・・・・・まっ良いでしょう。例の二人は私が起こしますので世話を頼みますよ。私はアルタさんの所へ行きますので。」
尻尾が揺れると頭上から二人が降ってきた。咄嗟に躱してしまったので二人とも頭から床に落ちた。
「うぅぅ。痛いです~。」
「・・・・痛い・・・。」
ルル様は一度、二人を見て問題ないと思ったのか、すぐにアルタ様の所へ向かった。
仕方がないので二人に再生魔術をかけることにした。
「二人とも大丈夫か?何処か痛い個所はあるなら言いなさい。昨日のうちに治療はしたが本人しか痛みはわからなんからな。」
二人は立ち上がり全身をチェックしはじめた。見えない背中は二人で協力して確認している。うむうむ。仲が良いのはいいことじゃ。
「ケガが治っています~。何所も痛くありません~。良かったです~。」
「・・痛くない・・・・治っている・・・・・・・どうして?」
落ち着いた頃を見計らって自己紹介してから、昨日の出来事を説明した。
「助けていただき~、ありがとうございましたです~。ワタシはラルチェ・フリーシアンです~。無人族の六白牛タイプで14歳です~。
今年は不作で税金が払えずに奴隷なりました~。家族15分です~。
本当は、1人分だけなのですが~、どうせ奴隷になるならみんなの分もと思いまして~。
ワタシはドジでおっちょこちょいなのでこんな事しか役立てませんから~。
それに仮成人なのでもしかしたら~、闘牛になれるかもしれませんし~。
闘牛は強いのですぐにお金を稼げますから~。
あっ~。知ってますか~?
牛タイプは成人すると闘牛か乳牛のどちらかになります~。
六白牛の女性は9割以上が乳牛になります~。
六白牛の牛乳はとても美味しいですよ~。
ワタシは闘牛になりたいです~。
アリスちゃんとは~、同じ船に乗ってましたので仲良しさんです~。
それから・・・・」
「うむ。わかった。また後で詳しく聞こう。」
あまりにも長いので話を止めたら残念そうにな顔をして「必ず!お話ししましょうね」と言われた。アリスに視線を向けて自己紹介を待った。
穏やかにゆっくりと自己紹介されたが、語尾を伸ばすのは癖か方言なのじゃろうな。そして、一度話し始めると止まらないようじゃな。しかも、嬉しそうにニコニコと話しているので止めるのも気が引ける。牛乳の時は自分の胸で搾乳の動作をしていた・・・・かなりマイペースなのじゃろう。・・・本当は厄介払いされたのかもしれん。
「・・感謝。・・アリス・ワンダー・・・闇人族・・ルルスタイプ・・19・。実家の商売が失敗・・・多額の借金・・・奴隷になった。仮成人・・・未経験。」
無表情で淡々と必要最小限の自己紹介をされた。まったく感情を感じられないので出来の悪いロボットと話しているような錯覚に落ちる。対照的な二人じゃな。それぞれに魅力がある。
二人とも首輪をしていたので奴隷じゃとわかったが、そんなに悲壮感がないのには驚いた。
ルル様と奴隷制度の話をした時を思いだす。
奴隷とは税が納められない者・借金が返せない者・犯罪を犯した者がなる。例外あり。
仮成人以上で子供は奴隷にしない。※仮成人とは後1年で成人になる者。
奴隷は契約した衣食住を受けられない場合や暴行された場合は、主を訴えても良い。
奴隷の首輪の能力で貞操は守られる。
奴隷の所有権は全て国や領主が持っていて、管理している。
国や領主が毎月、奴隷市を主催してレンタルしている。【業】が高いとはレンタル出来ない。
人気がある奴隷はオークションになるが高額になってもレンタル料や奴隷自身の買戻しの額には影響がない。主催者が儲かるだけなのであまりオークションにはならない。
納税日の後は大量に奴隷が出てくる事が多い。
借金の場合は。債権者が役場に届け出ると役場が調査をする。返済が出来ないと判断すると債務者を確保する。確保が確認されると債権者に支払われる。
2ヶ月レンタルされない場合は、別の国や領主に移動する。
(奴隷が大量に出た国は当然、貧乏で人手が余っている。逆に奴隷が少ない国は金を持っているが人手不足になる。そこで国家間や領主間のレンタルが起こる。貧乏な国は金が入り経済が回復できる、人手不足の国は安い労働力を得る。数年後、奴隷達は解放されて自国へ戻るので貧乏な国は民が居なくなる事は無い。 なるほど、ある程度は国家間友好があり、経済もある程度発達しているようじゃな。)
奴隷のレンタル料は一般市民の一年間の税金分を日で割った料金。
レンタルする方にも約半分の賃金で人を雇えるメリットがある。税金は年収の40~60%程度
奴隷からの解放は国が立て替えた分と利子10%を返せば解放される。
犯罪者は【業】の保有量を3倍した年数分を返せば解放される。
例外として永久奴隷がいる。
神々から危険と判断された者。危険なスキルを持ち、しかも、世界に悪影響を及ぼす思考を持っていると判断された者。神々から直接、金色の首輪を着けられる。スキルは優秀なので厳重に管理して有効活用している。国への貢献に反映して生活が豊かになる。豪邸を建てたり、他の奴隷を雇っている者もいる。
たぶん、わしがルル様の下に送られたのは監視をする為じゃな。永久奴隷の対象かどうかを判断しているのじゃろう。
そうでなければあのような拷問に近い訓練はさせないじゃろう。
・・・・ルル様の趣味でない事を祈ろう。
「あの~ヤマト様~。助けて頂いたのは有り難いのですが~、ワタシ達はお金やそれに代わる物を持っていません~。奴隷の首輪がありますから身も捧げられません~。どうすればよいでしょうか~」
「・・・コクコク・・。」
二人は困った顔をしてわしを見つめていた。うむ。アリスも表情があるのか。良い良い。
さて、どうするかの。「君たちの笑顔がわしの報酬じゃ!キラリ」なんて口が裂けても言えん。
奴隷の首輪はルル様にお願いすれば壊してもらえるので「報酬は体で払ってもらうぞ。ゲフゲフ」というのも有りじゃ。
イヤ・・・・そんなこと言って、ルル様を怒らせば永久奴隷の道へ前進する・・馬鹿げている。
「わしは、ダンジョンの50階を攻略せねばならん。可能であれば、二人とパーティーを組んで3人で攻略したい。当然、危険で命にもかかることじゃ。良く考えてから返事をして欲しい。しかしわしにはお前たちが必要なのじゃ。」
土下座をして返事を待った。二人は話し合っている声が聞こえる。うむ。動揺しているが断るような雰囲気は出てない。
最悪、断られたら50階がクリア出来ないと大陸に戻れない事を告げて、無理やりにでも連れて行けば良い。 そんなことを考えながら土下座のまま返事を待った。
「タケル様~。お供します~。お役に立てるかわかりませんがよろしくです~」
「・・・・・ヨロシク・・・。ガンバル。」
さっと立ち上がり、二人の間に移動した。右手にアリス、左手にラルチェの腰を抱き寄せた。
「ありがとう。絶対に死なせん。3人でクリアしよう!」
わし達のパーティーの初連携は、3人で円陣を組むように抱きし合うことだった。