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第5話 お前一体何者だ?

 夜までどうしたものか?



 イズンを連れ――俺は途方に暮れた。



 あの食堂を出てから、モカの街をふらふらと歩く。

 元々大きな街ではないのだ。

 見て回れる目当ての場所もない。



「少しお話いたしませんか? 」

「何をだ? 」

「私のことをまだお話しておりませんので」

 イズンがそんなことを言ってくる。

 すげぇ――訊きたくない。



「そう言えばイズン。このブリータ国の王都はディートだったな」

「……そうですが」

 この話題には――イズンは不機嫌になる。

 俺には超大事な話なんだよ。

「仕方がない。行き先をそこに決めよう。

 君がどう証言しようが、俺は腹を決める。

 やはり王女がこんなところでウロウロしているのは、大変よろしくないだろうからな」

「……嫌です」

「俺は嫌じゃない。

 俺はこう見えても「その道」では結構有名でね。

 いつ命を狙われてもおかしくない。

 その上君まで護るとなると、正直困るんだ。

 俺を好きでいてくれるなら、俺を困らせる真似は出来ないだろう? 」

 俺はイズンの良心に訴える策をとる。

 効果があればいいのだがな――。



「……それは無理です。

 私はあなた様とは離れられなくなりましたから……」

「あ? 」

「ですから……私の話をする必要があるのです、ユリウス様」

 どうしようか――無視しようか。

「あの木陰でいかがですか? 」

 俺の都合などお構いなしに、イズンは俺の手を引っ張って、街外れにあった木陰へと俺を誘導していく。

「こら……イズン」

 本気で怒らないとダメだろうか――この小娘には。



「きゃっ!! 」

 そうしている間に。

 イズンはガラの悪い男たちに――ぶつかった。

 完全にこちらの前方不注意だな。



「おい、小娘」

 よく言った。が、イズンを放っておくわけにもいかず。

「すまなかった。こちらの不注意だったな」

 俺が男たちに謝る。

「すみませんでした」

 イズンも謝った。

「あ? それで済むわけないだろう? こっちはこの娘がぶつかったせいで、服が汚れたんだぞ? 」

 イズンがぶつかった男がすごむ。

 そんなバカな。まぁ――こんな輩の常套文句だな、これは。

「それはすまなかった。だが、どこにもそんな汚れが見えないが? 」

「ああ? ここだよ、ここっ!! 」

 男が着込んでいるベストの胸辺りを指差す。

「君が汚れているのは……その心だと見えるが? 」

 あくまで紳士的に。男を怒らせる言葉を吐く。

 こちらは謝ったわけだし。面倒事は嫌いだが――不愉快なのも嫌いなんでな。

「……女の前でいいカッコしたいってか? 

 お前、ロリコンか? 」

 男たちが卑下た笑いを――俺に浴びせる。

 まぁな。イズンを見てりゃそうも言いたくなるだろう。だが、違う。

「……撤回しろ」

 俺は男に警告する。

「あ? 何だァ? 」

 男のひとりが俺の顔に、その汚い顔を近づけた。



「……お止めになられた方がいいですよ? 」

 何故か急に――イズンが俺と男たちの間に割ってはいる。

「なんだ、小娘? 」

「この方は「武器の魔術師」として名高いユリウス様です。

 とてもあなたたちが敵う相手だとは思いませんが……」

「……は? 「武器の」……って。

 手当たり次第にそこら辺の物を最強の武器に変える能力をもつ……化物のことか?

 ユリウスの歩いた後には……武器にされ身もココロもボロ雑巾のようにされた人と物の残骸しか残らない……という……あの? 」

 


 おい。すごい言われようだな。

 そこまで言われたのは始めてのような気がするが?

「そうです。そのユリウス様がこの方です。

 容赦なく人も物も武器へと変えていくユリウス様に、武器として使っていただける名誉を与えられるのは……この中のどなたでしょう? 」

 おい。貴様――イズン。俺は「人」を武器に変えた覚えはねぇぞ。

 それに、どうして昨日あったばかりの貴様がそんなことを知っているんだよ?



「おい……まさか……本当に「人でなしのユリウス」なのか? 」

「いや……でも……本当だったら……」

 おいおいおいおいおいおい。

「ここは……とにかく……」

 男たちが顔を見合わせる。

「……き、気をつけやがれっ!! 」

 そして――脱兎のごとく――俺の前から逃げていく。



「これで邪魔者は去りましたね。よかったです」

 満面の笑みのイズン――。

 貴様、一体何者だ?



「……では話の続きをいたしましょう」

 と、イズンは呆然と佇んでいた俺を、木陰へと連れて行く。

 なぁ――俺はお前に何をした?

 



 俺に頭を抱える暇も与えずに――イズンが木陰に落ち着くと。

 俺に「自分の話」とやらを口にし始めたのだった。


 


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