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第23話 エクスタスィは長くは持たない

「うぉぉぉぉぉぉっ!!」

「おおおおおおおっ!!」

 俺の〔ガグンラーズ〕とトオルという男の漆黒の槍が交わる。

 本当なら、涼しいほどの甲高い金属音でもしそうなものだが、俺たちの武器から発せられるのは――爆音。

 空気を揺らし、この音を聞くものの耳を痛めつける音量で辺りに響き渡る。

 そしてその音とともに、放電現象も起こる。

 別に雷が落ちたわけでもないが、それが俺たちの戦いで無理矢理引き起こされているのは明白だ。

 それは強大な力のぶつかり合いにより発した余剰の力が形になったもの。

 


 イズンたちは耳を押さえながら、俺たちの戦いを見ていた。

 いや。正直言うと、そんなことを見ているような余裕は今の俺には微塵もない。

 この男――トオルというやつが振るう槍には俺にそんな暇さえ与えない。

 こいつの戦闘経験は本物だろう。

 この俺が、だ。こいつの強さに引きずられて、〔ガグンラーズ〕の能力全開で立ち向かわないとならない状況を作り出し、俺もまたこの男の気迫に気おされんと、敵意剥き出しで戦いに没頭していった。

 


「ねぇ、ミスト姉ちゃんっ!!透兄ちゃんたちを止めてよっ!!戦う意味なんてないじゃんっ!!」

「……あのユリウスという人の力は本物だわ。

 ああなってしまうと、私の力で止められるかどうか……それに、あの女の子がどうでるか」



 ウルズとミストという女がそんな話をしている。

 そしてミストはじっと俺たちを見るイズンに目を向けた。

 イズンは俺たちの戦いを見ながらも、ミストたちへの警戒を止めない。

 俺とこのトオルとの戦いへ邪魔をしないよう。

 そしてイズンは俺の勝利を疑うことなく信じて見守っている。

 どうして俺がそんなことわかるのかって?なんでだろうな。ただ――そう思っているだけだ。そしてそれは間違いでないことも、なんとなくわかっている。




「……くっ!!」

 咄嗟にトオルが避けやがった。

 〔ガグンラーズ〕が狙いを外し、切先が大地を掠めた。その場所には掠めた勢いで、俺一人が楽勝で落ちてしまうほどの大穴が作られる。ま、これで落ちたら話にもならんな。

 ち。惜しいね。



「なかなかだな」

 負け惜しみか?

「どうもっ!!」

 俺は今度こそ、こいつの体を真っ二つにするために、〔ガグンラーズ〕を真横に振る。

 と、またトオルが避ける。そして今度は槍で俺の体を貫こうと、攻撃を繰り出してきた。

 


 この瞬間を待っていました!

 ここで〔ガグンラーズ〕の本来の姿が意味をなす。

 トオルの攻撃をかわしながら、俺の左手が二つに分かれたもう一本の〔ガグンラーズ〕をこの男の心臓目掛けて振り上げた。

「っ!!!」

 で、おいっ!!どうしてお前は槍で俺の剣を受け止めるっ!?

どういう反射神経してんだ、この野郎はっ!!



「……二刀流か……」

「俺と〔ガグンラーズ〕にこの姿をとらせたのは、お前が初めてだ。それは褒めてやるよ。

 さすがは〔エインヘリヤル〕様……」

「それは光栄だな……」

 俺とトオルは短いが、距離を置きながらそんな会話をしつつ、互いをけん制する。

 でも、本当にここまで相手が強いと気持ちがいい。

 おかげで戦闘が長引きやがる……ようやく全力で思いっきり戦える相手に出会えたっていうのになぁ。体力がそこまで持つかどうか。まぁ、意地でも持たせてやるけどな。

 それが、俺のやせ我慢だとしてもだ。



◆◆◆



 もう見る影もないほど、あのおばけ屋敷が建っていた敷地内は、俺とトオルの戦いで辺り一面がぼこっぼこに破壊されつくされている。

 あちこちに大穴が開き、原生林と化していた林は吹き飛び。

 そのうち綺麗な更地になるだろうなぁ。



 俺はふら付く足元に力を入れる。

 もちろん相手にそんなことは悟らせるつもりもない。

 だが、トオルの攻撃の勢いもだいぶ落ち込んできてる。

 へっ。相討ち狙いってか?それも面白くねぇな。どうせなら、力でねじ伏せて、相手の存在を綺麗さっぱり無くしてからぶっ倒れたいね。

 それは相手も同じってことか。

 漆黒の槍が青白く光を放ち始めてる。

 俺と同じで玉砕覚悟の大技狙いってことか……いいね。気に入った。

 俺もそうしてやる。たぶん、これが最後の攻撃になるだろうから。

 


 俺は体に残った全体力を〔ガグンラーズ〕に注ぎ込む。 

 そして二本に別れた剣を、一本の姿に戻し。白銀の眩い輝きが炎の形を纏って、俺の両腕ごと包み込み始めた。




「捕縛×全力」

 どこからともなく声が聞こえた。

 それはひどく落ち着いていて。トオルから感じた殺気ではない、それでも同格程度の強大な力の流れを俺の全身は感じ取る。

 トオルに全神経を集中させていた俺は、そいつの放った力の存在の感知に一拍遅れる結果になった。

 それはやつも同じらしい。

「……なっ」

「これは……悠かっ!?」

 俺とトオルの視界に、純白の光の軌跡が飛び込んでくる。

 蚊じゃないんだっ!!白い小さい光がぶんぶん俺たちの周りを飛び回っている――という状況なんだ。真面目に解説すると。

「このぉっ!!」

 くそっ!!トオルへ最大の攻撃を仕掛けようとしていた俺は、集中を分断され、このうるせぇ蚊のような小さい光の排除に向けざるを得なくなる。

 〔ガグンラーズ〕の光の炎を使い、焼き払うが、この光の蚊っていうのか?

 分散するだけじゃなくて、増殖してんじゃねぇかっ!!

 ようは「きりがねぇっ!!」

「あああああっ!!」

 トオルのやつっ!!あのやろ。何、大人しく攻撃するのやめてんだよっ!!

 俺は全身から光の炎を噴出す。一気に焼き尽くす為にっ!!



「いけません、ユリウス様っ!!その力は攻撃を加えれば加えるほど、力を増し、数を増やしますっ!!」

 イズンの声が俺の耳に届く――って、なんだそれっ!?

 早く言えっ!!

 と、俺がイズンの声に戸惑っているその間に、無数の数に増えた光の蚊は、俺の体に纏わりつき、俺の四肢に絡みつく。

「……なんだ、これはっ!!?」



「無駄だよ、ユリウス。ぼくのその攻撃は、無限に増殖し、最終的に対象の相手を捕縛する能力だから。諦めて」

 狼狽する俺に、優しく、でもその内容はけして優しくない声が聞こえてきた。

 振り返ると、そこには華奢な体つきの男と、少しだけその男より身長の低い金色の長い髪をした美女が俺の後ろに立っていた。

「あなたの力も限界でしょう?大人しく捕まって。けして悪いようにはしないわ」

 美女……この女の耳も長いし、胸も大きい。うむ。エルフ族か。

 ミストっていう女よりはまだ友好的に見える。

 いい女を侍らせて。羨ましいぞ、小さい男。



「でも……君ともう一度ここで会えると思わなかったよ。豪樹ごうき……」

 ……っ!!

 小さい男が放った言葉の一撃。

 俺はその男――確かどこかで見覚えがあるその男の言葉に驚きながら、酷い眠気に襲われて。不覚にも意識を手放す形になってしまった。

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