第20話 こういうの「ダンジョン」っていうのか?違うか
「これ……」
ヴェルが右手のひらに光の玉を作り出す。
おお。なかなか気が利く妹だな。
「ほう……ずいぶんと、まぁ……」
光に照らされ、室内が浮かび上がる。
建物の中も破壊尽くされた家具が破片となって散乱し、壁が崩れ、大穴があいていた。
なるほど。これはとても人の仕業とは思えない[混沌]ぶりだな。
魔法か、何かしらの戦闘か。いずれにしても何らかの戦いの後にも見えないこともない。
と、言うほど乱れきっていた。
「すごい乱れようですね」
イズンが呟く。
「ああ。何だかが潜んでいてもおかしくはないか……」
俺たちは館の内部に入っていった。
足音というよりは、ガシャ、バキ、バリバリ……。何だか硬い物を踏みつけて歩いている音しかしやしない。
それも四人が歩くと、うるさくてかなわない。
「階段があるが……」
二階へと続く階段がある。
ここは五階建ての建物だ。って。五階まで調べるのか……?
「ヴェル。お前たちはこの建物と異界が繋がっている穴を塞ぎに来たと言っていたな。
この中のどこら辺にあるのか目星はついているのか?」
聞くのが早いよな。まぁ、どういう答えか予想はついてるが。
「わからないから、調べるしかない」
「……そうか」
メンドくせぇ。いちいち調べろってか。
「二手に別れますか?」
と、イズン。
二手……かぁ。
「俺は別に構わないぜ」
「お前には聞いていない」
「なんでだよっ!!ムカつくな」
ひとりでウルズがわめいてる。これは元々メンドくさいので放っておく。
「私はユリウス様とですね」
当然のごとに言うんじゃねぇ。お前と誰が行くと言った?イズン。
「ヴェル。お前はどんな力が使えるんだ?」
「どうしてヴェルさんなんですかっ!?まさか本当に幼女趣味っ!?」
「俺の妹だぞ――っ!!」
俺がヴェルに聞いただけで、妄想女とクソガキが叫んでる。
「うるさい。ここには外見、幼女にしか見えないやつしかいないだろうがっ」
「私は十五歳ですっ!!」
イズンが叫んだ途端、ウルズとヴェルがイズンを見た。
「「え?見た目通りでまだそんなもんっ!?」」
見事にウルズとヴェルの声が同調する。
そう言えば。[エルフ]の生き物は無駄に長寿だったな。数百年とか千年以上とか。
そんなに生きて楽しいのか?と思う時があるが。
「お前たちはどうなんだ、ハーフエルフ兄妹」
「へんな風に呼ぶな。
まだ十二だよ。俺とヴェルは双子だから」
「お前たちだって人のことは言えんだろうが」
「だったらユリウス様はどうなんだ?あんたは相当の歳だろうっ?」
ムキになりやがって十二が。
「十七だ」
「「うっそ――っ!!」」
ウルズにヴェル、うるせ。
「ユリウス様はとてもそんな歳に見えないぐらい老けていますが、本当なんです」
イズン。殺すぞ、てめぇ……。
「倍はいっていると思った。あんまり歳じゃ、言っちゃ悪いと思っていわなかったけけど……」
もう一人殺したいやつが増えたな。ウルズ。
「その手の話には飽きた。
人生の先輩からの命令だ。二手に別れずこのまま行くぞ」
「私は風の力が使えるよ。ウルズは炎」
「……今頃ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
今頃俺の質問に答えてくれるヴェル。
威勢が良くて無駄に素直な兄に、マイペースすぎる妹か。
こっちもこっちで疲れるやつらだ。
こいつらの意見を聞いていると疲れるので、俺は勝手に進み出した。
その間にも気配を探るために、俺の意識を建物内に広げていく。
じんわりと、その空間に溶けていくように。
俺たち以外に、何か居る様子はない。
引っかかりがあるとすれば……この建物の下?地下があるのか?
俺に千里眼はない。
あくまで[探知]の力で探っているに過ぎない。
この建物の構造やらまでを探るには至ることのない、何かの[気配]を調べるに過ぎない力だが、広範囲に使えるので……まぁ、不便はない。
俺は他三人に振り向いた。
「ここに地下室みたいなものがある。
地下に行かれる場所を探すぞ」
「でしたらユリウス様……」
間髪いれずにイズンの声がする。
「ここに穴が……」
俺の後ろで、腰をかがめて何かを覗き込んでいる様子だ。
そうやらその前に穴でもあいているらしい。
「どれ……」
俺が覗き込もうとすると。
「落ちろっ!!」
と。にやりと笑って、俺の後ろから手を突き出してくるウルズを避け、その足をひと蹴りしてやる。
「……ぅわぁぁっ!!」
どこまでバカなんだお前は。素直に穴へ落ちるんじゃねぇよ。ベタすぎんだろう。
なんとか着地したみたいだな。そんなに時間はかかってないから、そんなに深い穴ではないようだ。
「あっっぶねぇじゃねぇかぁぁっ!!」
怒り任せに叫んでるバカ。否。ウルズ。
「俺は避けただけだぞぉ。お前が勝手に落ちたんだろう……」
「うるせぇ、避けんなっ!!」
無理言うな。バカガキが。
「放っておいていいよ。[あれ]はそう簡単に怪我はしないから」
俺たちにそう話しかけてくるヴェル。
お前……妹に見捨てられてんぞ、ウルズ。
「と、言うことは、それだけウルズさんが異常に頑丈だということですね」
お前のフォローはフォローになってないんだよ、イズン……。
「うん、そう」
素直に認める妹、ヴェル。
こいつらも、こいつらだな。
「早くお前らも来いよぉぉぉっ!!寂しいだろうぉぉぉっ!!」
ウルズが下から叫んでる。
本当にバカだな……お前は。俺は頭を抱えた。




