表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/24

第11話 なんだ…その「ドヤ顔」

「答えよ!! 汝は何者ぞっ!! 」

 大真面目な顔で、突然イズンがそんなことを叫ぶ。

 いや、ドラゴンだろ。相手。



『……グゥゥ』

 あれっ!? ドラゴンの動きがピタリを止む。何が起こったっ!!?

「答えよ!! 汝は何故ここにいるっ!! 」

『グァウっ……』

 おい。ドラゴン苦しがってるぞっ!! イズンはそんなドラゴンから目を全く逸らさない。ちょ……お前結構すごいのか、イズンっ!?



「答えよ!! 汝の体はどこぞっ!! 」

『……ゥゥゥゥゥ』

 え? ちょっと待て。イズンがそう言った途端。赤いウロコのドラゴンが――消えた?



「……ふぅ。こんなものでしょうか? 」

 息を吐きだして。俺に笑顔を見せる。

 俺はそんなイズンを唖然と見つめて。こいつが「ハーフエルフ」というのは本当なのか?

 と、今更ながらに考えてしまう。が。

 そんなことをしている暇はない。

 


 俺はドラゴンのいた茂みに向かう。

 イズンも俺の後に続いた。

「お前……これが何なのか、始めからわかっていたのか? 」

 俺はイズンの顔を見た。

 草をかき分け、俺が見つけたものは――俺の握りこぶし程度の大きさの白い石。

 何かの「魔術」を込めたものだと、俺にもわかる。

 手に触れることを憚るほど、「負」の力を感じるからな。



「はい。あのドラゴンには実態がありませんでしたので……。

 私が使った「呪文スペル」は相手の「存在」を問うものです。

 生きているモノには何の効き目もありませんが、この世界に実態のないモノに関しては絶大な効果を発揮します。

 この世界に「存在理由」がありませんから。そういう類の「術」です」

 「存在理由」ね……。何故か耳が痛い。

「で。お前は、これは何だと見る? 」

「「魔石」……でしょう。

 それでもかなり高等な魔術を施した「魔石」だと思います。

 ユリウス様が触られることを拒む程ですから……」

 イズンも「こういうこと」に関してはある程度使えそうだな。

「ふぅん。このような「魔石」がこの森にいくつも仕掛けられているってわけか」

「だと思います。調べてみれば見つかるはずです。

 この「魔石」のすごいところは、「力のないもの」には実害のない「脅し」だけの幻覚を見せて。ユリウス様のような実力者には実害のある「攻撃能力」を持った幻覚を見せた。

 それがドラゴンの「色」になって現れたのでしょう。

 赤は最上の「警戒色」ですので」

 イズンはにこにこと笑いながら俺に説明する。最高にムカつく「ドヤ顔」で。

「そういうことか……助かった」

 嫉妬を全面に押し出しても大人気ないので。俺は全てを抑え込み――イズンに礼を言った。 

「いえいえ。ユリウス様と将来を誓い合った仲ですもの」

 もう「取り返しのつかない」可哀想な「病気」を発症しているのだろう、この女。

 俺があのドラゴンなら――最上の「警戒色」でこいつを食い殺しているところだろう。



◆◆◆



 この森はそんなに広くないとは言え。

 俺とイズンだけでは結構広い。歩き回るだけで疲れちまう。

 結局「浄化」の魔術を施せるイズンと行動を共にせねばならず。

 こいつの妄想に心身が疲れ果てて――夕方を迎える。



 魔石は全部で五ヶ所に置かれていた。

 どこも人が入り込みそうな場所。

 そうしてこの森に入ってくる人間を脅かしていたわけか――。



「……ユリウス様は結構魔術に関してはあまりお詳しくないのですね」

 本当にこいつ、ムカつく。

「俺の能力は「武器精製」だからな。

 四大元素の構成やその類のことは調べた……」

「それは「魔術」の基礎中の基礎ですよ。

 「武器精製」の御力も、「魔術」の知識があればもっと攻撃能力を高めたり出来ますのに。

 「最強」の御力とは言え……もったいないですね」

 俺は煮えたぎる感情を抑え込み。ひたすらこいつの前では無表情に徹する。

「でも私がいれば大丈夫ですけどね」

 ニッコリと腹立つ笑顔になりやがって――。

 結局。それが言いたいだけだろうが、貴様は。

 ああ。本当にウザい。



「でもこれで……。

 エミュが言った「領主」やらの仕業の可能性が高くなっちまったな」

「そうですね。 

 これだけの魔術を施せる魔術師が何の意味もなく、こんな場所に「魔石」を置くはずもないですし……」

 何か――急に貫禄を増しやがったなこいつ。

 流暢に話しやがって。マジ、ムカつく。

「お前。お父上に頼めよ」

「嫌です」

 イズンは、相変わらずそれは「否定」する。

 お前が頼めば、俺は面倒なことをしないで済むんだよ。

「とにかく帰るぞ。俺は疲れた……」

「そうですね。帰って女将さんの手料理が食べたいです」

 それはいい。だが俺が疲れた九割以上はお前の責任なんだよ、イズン。

 気がつけ。自覚しろ。全く――。



◆◆◆



「領主の使いが来た? 」



 何とか日が落ちる前に俺たちは宿屋に着くことが出来た。

 そこで女将が俺たちに昼間の出来事を告げてきた。



「ああ。急にでね……私も驚いたさ。

 「ユリウス殿はいるかっ」って突然乗り込んできやがった。

 ドラゴンが出るっていう森に行っていると言ったら、血相変えて出て行きやがってね。

 なんだったんかね、あれは? 」

「ほう……森ではそんなやつに合わなかったな」

 くそ面白い展開になりやがったな。あちらから出向いてくれるとは。

「どうされますか……ユリウス様」

「そうだな……もう一度、その使いとやらが……」

 


 俺がイズンにそこまで言いかけた時。

「失礼する」

 良質な絹の衣服に身を包んだ男が、数人の連れのような連中を率いて宿屋の扉を開けた。

「「武器の魔術師ユリウス殿」がこの宿にいると聞いて参ったのだが……戻られたか? 」

 そう女将に訊いた男の足。白タイツじゃねぇか。うわぁ……これ今身分の高い方々の間で流行っている衣装なんだろう?

 なんだかすごくこいつがイズン以上の「バカ」に見えるのは何故だろうな?




「ああ。あんたの目の前にいる人が、お目当ての「ユリウス様」だよ」

 女将が俺を指差す。

「俺に何かようか? 」

 この男を直視すると笑ってしまうので、俺は男の「顔」だけを見るようにする。

 下見たら――ダメだ。大爆笑する。

「丁度良かった。そなたに頼みたいことがあるのだ」

 笑える男は俺にそう言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ