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それから、真実の愛で結ばれた二人は。

『真実の愛で結ばれた恋人たち』が結婚して、ふた月が経ちました。


 あれからわたくしはフリーになったわけですが、どうにも皆さまから誤解されているようですわ。


 本日友人のお茶会に招待されて出席したら、あのパーリィに参加していなかった方々から「婚約者に裏切られてしまったのでしょう。お労しいですわ」と同情をされてしまいましたわ。


 彼女たちの情報ネットワークは市井にも及んでいるようで、ジョーイたちが今どうしているかも教えてくださいました。




 ジョーイはパーリーのあと、『ルナさえいれば他に何もいらないのだろう? 安心しろ。わたしたちも、家名に泥を塗ったお前など要らん』と両親によって子爵家から除籍されました。


 ルナはというと、わたくしのお父様がたいへんお怒りで、ルナを即刻クビにしました。


 ジョーイとルナは遠くの領地にて、二人で平民として暮らしを始めたようです。



 ジョーイは知り合いのところに行って仕事を紹介してもらえないか頼んだようです。

 けれど貴族からは「婚約者がいながら他家の使用人と恋仲になった不誠実なクズ」と後ろ指をさされ、平民の間でも「もし雇ってうちの従業員に手を出されたらかなわん」と追い返されるようです。


 ルナも仕事を探すものの「婚約者がいる男を寝取るアバズレなんて怖くて雇えるわけない」と門前払いだそうです。




 お茶会から帰ってきて、わたくしはばあやに聞きます。


「破局まで秒読み……と皆さんから聞きました。ジョーイもルナも、お互いさえいればどんな苦難も乗り越えられる、真実の愛は永遠だと言っていましたのに。愛ってそんなに脆いものなんですの?」


「ああいうふうになりたくなければ、軽々しく運命や愛なんて口にするものではありませんよ、シンシアお嬢様。さぁ、ミートパイを焼いてありますから、おかけください」


 ばあやは何事もなかったように澄ました顔をして、紅茶とミートパイを用意してくれます。


 淹れたてのストレートティーに焼きたてのミートパイを添えて、じっくりと味わいます。



「ありがとう、ばあや。今日のミートパイも絶品ね」

「お褒めにあずかり光栄です、お嬢様」




 わたくしはソファに腰を下ろして、グレルを見上げます。


「グレル。あなたはわたくしが結婚できるまでは縁談は受けないと言いましたが、わたくしに遠慮することなんてないのですよ。あなたが言ったように、婚約解消からしばらくの間はまともに縁談が来ないと思います。縁談が来るまで待っていたら、あなたが婚期を逃してしまうかもしれません。ですから、まずはグレルにいい奥様を見つけようと思うのです」


 名案だと思いましたのに、グレルはなんだか乗り気でない様子。なんとも言えない表情で肩を落とします。


「えー、あー、心配無用です、お嬢。僕は見ての通りゴツくて人相も悪くて、愛想もあまりよくないですから、たいていのご令嬢は顔を見た途端泣いて逃げ出します。縁談が来るはずもないですから」



「大丈夫。あなたはわたくしが知る殿方の中で一番頼りになる人です。ですからあなたが結婚を申し込みたいくらいに好きな人がいるならば応援します。なんならわたくし、その方にあなたの良いところをプレゼンしにいきましてよ!」


 意気込んでグッと拳をかためたら、グレルは諦めたような笑みを浮かべて姿見を手の平で示しました。


「……なら、そこにある姿見に向かって言ってください」


 鏡を見ながらプレゼンの特訓をしろということかしら。

 そうね。本番で噛んでしまったらプレゼンも何もあったものではないですからね。


 グレルにいいお嫁さんができるように、わたくし、がんばりますわ!!!!






 END

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