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執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?  作者: Gai


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第36話 卑怯、とは言わない

バトムス対ルチアの模擬戦のルールは、少々特別。


ルチアが足裏以外の部分を地面に付けてしまうと、その時点でルチアの敗北が決定。

明らかにバトムスが有利なルールじゃないか!!! と思われるだろうが、バトムスとしては一応辺境伯家の令嬢に鉄拳をお見舞いし、ダメージを負わせて後から

ごちゃごちゃ言われるよりよっぽど良い。


その特別ルールもあって、 ルチアはバトムスとの模擬戦を始めたばかりの頃は、とにかく転ばされることに怯えていた。


バトムスはただ小手先の技術で相手を転ばせるのが得意というだけではなく、単純な戦闘力も子供にしては高い。

だからこそ、相手を転ばせる技術が活きる。


「はぁああああああッ!!!!!!」


結果……ルチアはここ最近、転ばされることを警戒して後手に回ることは無意味だと、寧ろ後手に回ってしまえば、そこから一方的に押されるだけだと理解した。


(ふ~~~ん? なんか……前よりも、大剣の振りに勢いがあるって言うか、変に迷いがない感じ、だな)


とはいえ、既に実戦を経験しているバトムスはその勢いからくる圧など、そよ風に等しい。

なので、いつも通り大剣を躱し、弾きながら転ばせようとした……が、ルチアは足払いを慌てて躱すのではなく、勢い良く飛んで着地。


「っ、せやッ!!!」


「っと……なんだよお嬢。ちょっと強くなったか?」


「当然、でしょ!! 訓練は、毎日欠かさず、やってるんだから!!!」


その言葉に嘘偽りはなく、ルチアは毎日欠かさず大剣を振り、訓練を続けていた。


偶に行うバトムスとの模擬戦を行った後、観戦していた騎士から、自分がどのようにして負けたのかも聞き、次に活かしていた。


そんなルチアの努力が実を結んだのか、これまで行われた模擬戦の中でも一番の接戦。

そう感じた一部の騎士たちは盛り上がり始めるも……バトムスの護衛として付き添ったことがある騎士たちは……勿論ルチアの成長を喜んでいる。


喜んではいるが……それでも、どうしてもルチアがバトムスに勝てるイメージが湧かなかった。


「はッ!!!!!」


「むっ!!!」


横薙ぎの一撃に対し、バトムスは木剣を盾にして受け止める。


(っ、いける!!!!!!)


完全に受け止められたという訳ではなく、押せばそのまま薙ぎ飛ばせる。

ルチアは両腕に精一杯の力を籠め、その感覚を信じて薙ぎ飛ばそうとした。


「っ!?」


だが、次の瞬間……一瞬にして、大剣から感じていた重さが消えた。


「っと、ころせ」


バトムスは体を回転させ、空中で一回転しながら大剣を受け流し……着地。


その後、体が流れたルチアの首根っこを掴み、無理矢理地面に落とそうとした結果、ルチアの尻が地面に付いてしまった。


「そこまで、勝者バトムス」


審判の騎士がバトムスの勝者宣言を行ったことで、一部の騎士たちから残念がる声が零れた。


「まっ、前よりは良かったんじゃねぇの、お嬢」


「…………騙したでしょ」


「ん? 何をだよ」


「ちゃんと、受け止められたくせに、騙したでしょ!!」


ルチアの発言に、何のことだか解らないといった表情を浮かべていたバトムスだったが……耐え切れなくなったのか、思わず笑みを零してしまった。


「ふっふっふ、バレたか。そうだよ、わざとだよ。その方が、あのまま力押しでどうにかしようとしてくれると思ったからな」


横薙ぎの一閃が放たれた時、バトムスはあえて全力で受け止めなかった。


自分が薙ぎ飛ばされない様に……だが、あえてやや押されてみせた。

結果、見事ルチアの感覚を騙すことに成功。


「ッ!!!!!!」


「そんなに睨んだって無駄だっての。騙されたお嬢が悪いんだからよ」


「……もっと、正面から戦いなさいよ!!!!」


騙すという行為が、卑怯だとは思わなかった。

まだ、戦場での卑怯と呼ばれる行為は寧ろ光栄な事など、そういった事は知らず、まだ理解出来る歳でもなかった。


だが……それでも、バトムスが悪い事をしたという感覚はない。

だからこそ、卑怯だと叫び散らかさなかった。


「嫌だよ、めんどくせぇ」


「っ!!!!!!」


それでもと、大きな声で伝えたルチアの頼みに対し、バトムスは面倒だと一蹴した。

これがまた……ルチアの怒りに触れてしまい、二回戦が勃発しそうになるも、バトムスはニヤニヤと笑みを消さなかった。


「今回は仕方ないからギデオン様から代金を貰わない様にするつもりだけど、二戦目をするなら、話は別だな~~~~」


「うっ!!! …………次は絶対にぶっ飛ばすわ!!!!!!」


「へいへい。期待せず待ってるわ」


手をひらひらと振りながら、訓練場から出て行ったバトムス。


この後、ルチアも今日は本格的な訓練は予定になかったが、急遽ぶち込んだ。

次こそは本当に絶対にぶっ飛ばすと、燃え滾って大剣を振り続けたルチア。


「そうか、バトムスがそう言ってくれたんだね……それじゃあ、今回は甘えるとしよう。まぁ、ルチアの小遣いはきっちりカットするけどね」


「っ!!!!!!」


夕食後に改めて今回の一戦に関して報告しに行くと、父親の口から今回の模擬戦を行う上で決めていた約束を思い出し、ルチアはバトムスからすれば理不尽な怒りを爆発させることになった。

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