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執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?  作者: Gai


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第25話 斬れるかい?

「もう、大丈夫か」


バトムスの言葉に、子熊は小さくこくりと頷いた。


「……ある程度バトムスの言葉を理解してるようだな。それに……………………やっぱりそうか」


「何か解ったんですか?」


「その子熊はマーサルベアって言ってな、Bランクのモンスターなんだよ」


「…………びっ!!!!????」


一瞬思考が停止し、パロットが何を言っているのか解らないと感じたバトムスだが、数秒後には理解した。


(え、えぇ~~~~~~~~…………ま、マジ? 君、本当は超凄いってこと?)


「……?」


子熊……マーサルベアは首を傾げるだけで、非常に可愛い。

非常に可愛いのだが、バトムスも戦闘技術を学んでいる身であり、常日頃からモンスターと戦うことが多い。


だからこそ、先程までゴブリンたちに虐められていた子熊が、実はBランクモンスターであるというギャップに驚きを隠せなかった。


「多分な。でも、それだとやっぱり、なんでBランクモンスターがゴブリンなんかに

って話だよな…………ん? あぁ……そういう事か」


「また、何か解ったんですか?」


「なんとなく。まず、マーサルベアの子熊が一人で行動してたのは、目の色が赤だけじゃなく、黄色もある。本来、マーサルベアの瞳は赤色なんだよ」


「……そう、ですね」


オッドアイ、という言葉がバトムスの中に浮かんだ。


前世の知識を持つバトムスからすれば、珍しい……非常に珍しくはあるが、だからといってどうこう思うところはない。

寧ろ……ちょっとカッコ良いとすら思った。


だが、前世が中坊とはいえ、前世とこの世界での違いについて、ある程度把握してきている。


(迫害された……って事なのかもしれないな)


ふざけるなと叫びたい。


人間の世界と、モンスターの世界……どのような感覚の差があるのか、バトムスには解らない。

ただ……自分たちと違うから見捨てた、迫害した。

そんな光景が容易に想像出来てしまった。


(っ…………でも、だからって俺に出来ることは、ないもんな)


考えても仕方ないと思い、バトムスはマーサルベアの子熊をもう一度優しく抱きしめた。

それが嬉しかったのか、子熊もバトムスに優しく抱き着いた。


「……パロットさん。こいつを、引き取ったらダメですかね」


「冒険者で言うところの、従魔にするってことか」


「まぁ……そんなところです」


「ん~~~~~~……屋敷内で、一緒に暮らすことは無理だと思うぞ」


「お金はあるので、こいつの為に立派な小屋を用意します」


(そうだ。バトムスはこう見えて金持ちだったな)


当主であるギデオンとあれこれ話し合い、商売で成功して懐は温かいどころかアチアチだという話を聞いたことがある。


「それもそうかぁ………………俺はただの一介の騎士だから断言は出来ないが、バトムスの頼みなら、当主様は断らないと思うぞ」


「……とりあえず、頭を下げてお願いしてみます」


連れて帰る……の前に、バトムスは自分の気持ちを押し通すのではなく、再度マーサルベアの子熊と対面。


「なぁ、俺たちのところに来て、一緒に暮らさないか」


「………………っ!!!」


両手を握りながらそう伝えられたマーサルベアの子熊は……再度、大粒の涙を零し、何度も……何度も首を縦に動かした。


「そうか。それじゃあ、一緒に行こう」


本日の狩りは、ここで終了。

バトムスはパロットと共に街へ戻った。


「すまん、とりあえず従魔の証を一つ貰っても良いか」


「かしこまりました」


門兵はバトムスとパロットと共にモンスターであろう子熊がいることに驚いたが、門兵もバトムスという少年が、普通の少年と違うということにはなんとなく気付いていた為、特に深くツッコまなかった。


「っ!? パロット、それにバトムス……その、子熊は?」


「色々とあって、バトムスがこの子を助けたんだよ。んで、これから当主様に屋敷で一緒に生活しても良いかを判断……する前に、まずは一応水浴びをした方が良いだろうな」


「そ、そうだな……解った。直ぐに準備させよう」


騎士たちも門兵と同じく、バトムスをある意味信用しているため、その場では詳しい事情を聞かず、直ぐに水やタオルの用意をメイドたちに伝えた。



「冷たいだろうけど、まずは綺麗さっぱりしような」


「~~~~~~っ」


子熊は水の冷たさを感じながらも、決して悪い気はしなかった。


そして大人しくバトムスに体を拭かれ、文字通り綺麗さっぱりした。


「その子熊が、バトムスの連れてきた子だね」


「っ、ギデオン様」


「…………」


急に現れたもう一人の人間。


子熊は敵意は感じられない、しかし自分を助けてくれた人間、その人間と共にいた人間の様な好意も感じられず……どうすれば良いのか解らず、困惑していた。


「はい。是非とも……こいつと、一緒に暮らしたいと、思いまして」


「そうか………………バトムス」


「はい」


「君は、この子がモンスターとしての本能に目覚め、この屋敷で働く人々に怪我をさせてしまった時……君が責任を持って、この子を斬れるかい」


子熊の眼が、左右で異なることに気付き、何故バトムスが子熊と共に暮らしたいと申し出て来たのか直ぐに解った。


その優しさを汲みたいとは思う。

だが、屋敷のトップとして……その優しさを汲み取った結果、屋敷で働く者たちが怪我をするという事態だけは防がなければならない。


「…………っ、勿論です!!!!」


「……うん、解った」


覚悟を決めた眼を見て、ギデオンはマーサルベアの子熊を屋敷で飼うことに了承。


その後、直ぐにバトムスに撫でても良いか尋ね、数分ほどモフモフし続けた。

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