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第八話 バミュール商会の最恐

本編にもどりまして、どうぞ!

「起きろ、バカ野郎が。・・・・・・起きろっつてんだろぉぉがぁぁ!!」


「いぃったいだろぉが!」


 朝から、ギベアに拳骨をくらった。昨日はあの後、一双でワショク?というものを食べた。あれはもう1回行っていい!っと、それは置いといて。結局宿に戻ったら、気絶するように眠りについた。


「さっさと起きないからだろ?もうかれこれ、5回は起こしたぞ!・・・はぁ~、まあいい。とりあえず、支度しろ、バミュール商会に行くぞ」


 あっ、忘れてた。


「こっんのバカが!」


 ・・・・・・痛い、拳骨をまたくらった。手加減をしらないなぁー、ギベアのやつ。


「ギベ・・・水泉、何を着れば良い?」


「ああ、これを着てください」


 そう言うと、ギベアが良い質と分かる着物と羽衣、そして髪飾りを渡してきた。・・・いつ買ったんだろう・・・


「ああ、菊香様が寝てるときに。っていうか着替えていただけませんか?」


「かしこまりましたー」



「着替えた」


「おお、馬子にも衣裳ですね」


 こいつ!・・・ってよく見たら、ギベアは髪を梳かして軽く結んで、はねっけのある前髪が軽く碧色に染まっている。喋らなければ、才色兼備の美男子なのにと思ったりした。


「まぁいい・・・・・・ふぅー。・・・水泉、参りましょう」


 エヴァのように、「鈴の音のような魅惑の声」と「誰も目を引く魅力」を意識して演じる。


「ふーん、かしこまりました。・・・私の命を握るのは菊香様、貴女様にございますから」


 ありがとう、ギベア。そして(すまない)。


 俺たちは、宿主に代金を支払い。その足で、バミュール商会へ向かった。


「で、話は通してあるの?たしか、バミュール商会内では、2つの派閥ができていると聞くけれど・・・」


 そう、バミュール商会は2つの派閥ができている。1つは、多様な国にもっと進出して行こうという者。

そしてもう1つは、ホルデライデの領主様ともっと交友関係を結ぶため、今の商会主の娘をホルデライデの第二王太子殿下に嫁がせる、という者。この2つの派閥が今争っている。


「ええ、もう手を回しています。昨日会った、菊地様がバミュール商会の商会主の次男なんだそうです。昨日上手く会合をしていただけるよう言ってあります」


 ああ、昨日はすぐ寝落ちしてしまっていたからな。こいつ、油断がならないな。


「そうこう言っていると、ついてしまったわ」


「では、菊香様。参ります、ご準備はよろしいでしょうか」


 俺は、胸の前で手を組んで腹を決めた。


「よろしいようですね」


 こくっと頷くと、ギベアが門のような扉をノックした。すると、門が開いた。それと同時に俺は薄く口角を上げた。


「ようこそ!バミュール商会へ」


 そこには、制服に身を包んだ、従業員がずらっと並び、奥に杖をついた老婦人と菊池さん、そして・・・誰だかわからないが、若い男性がいた。


 スッと老婦人が前に進み出た。


「ようこそ、お越しくださいました。わたくしは、バミュール商会の商会主をしております、ベレーナ・ベイ・キクチと申します。今回は、娘の菊池姶良(あいら)の御友人の上雲玲公爵令穣、朱鷺原従者様をお招きでき感激にございます。お待ちしておりました、さあ中へ」


 へぇ、菊池さんのお姉さんは姶良さんというのか。ベレーナさんは、1番近くにいたメイドに別室へ俺たちを案内するよう命じた。



 客室に案内され、メイドと執事がお茶を出し「少しお待ち下さいませ」と言った。


「ふぅ。何とか入れたな、水泉」


「ええ、以外にスムーズで驚きましたが、良かったですね。菊香様」


 少し、バミュール商会の話をしていると、菊池さんとベレーナさんが来た。あの男の人はいないみたいだが・・・いったい、誰なんだろう?



 疑問に思っていると、ベレーナさんが口を開いた。


「お待たせいたしました。今回のご用件をお伺いしても?」


「ええ、ですがその前に・・・・・・。菊池よぉお前、キーク。だよなぁ?」


 俺は、目を見開いてギベアを見た。


 おい!ギベア、ベレーナさんがいるだろうが!!?


「ああ、大丈夫だよ。この人、キークの能力で暗示がかけられた、操り人形(ネウロパストム)だよ」


 その時、菊池さんが指をパチンッと鳴らした。すると、菊池さんの容姿が変わり、はねっけのある長い前髪を右に垂らして、フードを被った洒落たスーツに時計の鎖を垂らした、君主の剣(グラディウス)の制服からまさに執事のような格好になり、跪いた。


「いやはや、やはり気づいておられたのですか。さすが我が主、ミリューシュ様の七欠片(セブンズ)、ギベア様」


「やっぱりか、なっ、言ったろカイ?俺の・・・まぁ、本体の元従者。紹介する、こいつはミリューシュ時代の秘書兼執事。その前は、天貴近衛騎士団の騎士隊長をやってた。キクトレート・ヤンカー」


 たしかギベアがいつかに言っていた、天貴近衛兵団は、天界の主、天王神と天女公の近衛騎士で、とんでもない実力で、たった13人ほどしかいないらしい。その隊長って・・・この元従者、怖いし大物すぎる!


「ご紹介に預かりました、キクトレート・ヤンカーにございます。ヤンカーとお呼び下さいませ。ところで、こちらの()()はどなたでございますか、ギベア様?」


「!?」


 ばっと、ギベアを見ると、のほほんと「何がいけないんだ?」と言ってきた。


「もともと、上から魔力を被せただけだからな?それにキークは、()()()()()()から、強い者にとって見破るは簡単だ。なんてったて大天使のさらに上、天王神と天女公の近衛騎士を務める天貴近衛騎士団のもと隊長だぞ?こんなの見破るのは朝飯前だよ」


 ヤンカーが会釈する。


 まあ確かにこの人の実力なら・・・ってそうじゃなくて!!


「って、堕ちてないのか?魔力がとても《天力》のそれじゃなかったから、てっきり、菊地さ・・・ヤンカーも堕ちたものだと思っていたが・・・」


 すると、ヤンカーがスッと前に進み出て言った。


「いいえ、ギベア様が仰る通りにございますよ。わたくしの場合、体は天界にございます。魂のみ、こちらの世界に来ております。ああそうそう、華陽・・・カヴィーラも同じく魂のみ来ております。かれこれ5、60年ほど七欠片(セブンズ)の皆様の様子を(みな)でお守りしておりました」


 ギベアが、少し寂しそうな目をして言った。


「遅くなって、すまなかった」


「いいえ、遅くはございませんよ。しかし、わたくしは怒りがまだ納まりません。・・・・・・ミリューシュ様を堕とした後、わたくし共は、天王神様と天女公様。ギベア様のご両親に堕ちたと報告しました。すると、あの方たちは・・・・・・笑っておられた。やっと、消えた。わたくしたちの、唯一の汚点が、と」


 自分の子じゃないからと⁉ギベアが俺を教練してくれた時、ギベアが両親に殺したいと思われている話してくれた。


 ちらりとギベアを見ると。


「っははは!やーぱり、あの方達は相変わらず俺を殺したかったみたいだなぁ。ミリューシュの時は、俺の姉さんや生みの親(両親)に関する物を、俺の目の前で壊していくくらいは、日常茶飯事だったからな」


 なんて事だ・・・。沈黙が数秒流れると、ヤンカーが口を開いた。


「とりあえず、ギベア様。この男性はどなたなのですか?」


「ああ、こいつはーー」


◇◇◇


「ーーという成り行きで俺の主で、復讐を手助けすることになったから。そして、俺の兄弟たちの封印を解きに行く」


 ギベアが、俺の成り行きを手短にまとめ、これからの目的を話した。


「なるほど、ギベア様の主であれば、わたくしの主。・・・・・・カイ様、委細承知いたしました。とどのつまりは、カイ様方をベゼルガイダークにお送りすれば、よろしいのですね」


「ああ、頼む」


「かしこまりました」


 そう言うと、容姿を変えた時のように指をパチンッと鳴らした。そこには、以前あった時と同じ「菊池朗清」がいた。


 屈託のない笑みで喋れば、もはや、キクトレート・ヤンカーなどいたのかと思わせるようだった。


「上手く手配しておくさかい、ちっと待っててもらってもええですか?」


 そう言うと、操り人形(ネウロパストム)状態のベレーナさんを、ヤンカーは俺たちの話した部分のみ会話情報を上書きした。


 ヤンカーが詠唱する。


記憶(メモリア) 執行印 人形の賛歌』


「ええっと、何でしたっけ?」


「上雲玲様と水泉さんをベゼルガイダーク行きの貨物御車にお連れするんでしょう、おばあ様?」


 さりげなーく、嘘吐くなぁ~とヤンカーを見れば、薄く笑いかけて来た。こっわ・・・


「取りあえず、ベゼルガイダーク行きの貨物御車は2日後に出ますんで、お好きに観光してはどないですか?何なら、俺がお連れしますよ?」


「ええ、それがようございますよ」


 ギベアを見ると、頷いたので、それでお願いした。


「では、バミュール商会の運営する高級宿にご案内しますんで、そっちで休んどって下さい」


 そういうことで、話し合いは終わった。

ご拝読ありがとうございます。

今回は、ほぼ、菊池さんの話になっちゃいました(笑)

次回は少し観光と戦いをお届けします!

最後にもう一度、読んで下さりありがとうございます!!

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