番外編1 ギベア過去編 大天使ミリューシュ
ギベアの過去編です!どうぞ!
ー6000年前
「大天使ミカエル殿下、ご誕生ですよ!」「大天使ミリューシュ殿下、弟君が創られたのですね!心からお喜び申し上げます! ふふっ」
野次共が僕をバカにしたいのが見え見えだ。
僕に、弟ができた日。それは、僕が両親に、見限られた日。僕の両親は天界の最高神で、父上が天王神、母上が天女公。つまりは僕は嫡子で、いずれの次期天王神だが、弟が生まれたということは、両親は僕を次期天王神から天王神候補にしたということ。両親は俺が天王神になってしまうのを止めたいらしい。知ってたけどね?
こいつら、僕がそんな状況になったのに気づいていてこんなことを言ってるな。でも僕はゆっくりと、薄く口角を上げた。
「ええ、僕にとってとても喜ばしく思っています。弟に祝福をありがとう、みんな」
しゃべりかけてくる野次共に毎回こう言うのだが、そうとうめんどくさい。とりあえず、この後両親の王がいる宮天神殿にでもいくか。
僕は、近くの執事に声をかけて、天宮馬を連れてくるよう言った。
しばらくして、天宮馬が来て、乗り込んで宮天神殿に向かった。
しっかりと、行く前に「拝謁申し上げたいのですが」という言を伝えているので、特に難なくスムーズに入れた。
両親が玉座で座る前に僕は首を垂れて、挨拶を述べた。
「偉大なるこの天界が主、天王神様と全ての天使の母、天女公様のご尊顔を拝見でき恐悦至極に存じます。お二人におかれましてはーー」
「長々とした挨拶は良い。今日は其方の弟、ミカエルのこであろう?」
天王神が挨拶をわたった。めんどくさかったし、もう把握しているようで何より。
僕は顔を上げて玉座にたたずむ両親を見つめる。
「ええ、お察しの通りでございます。弟・・・ミカエルを創ったのはなぜですか。やはり天女公様は、私を憎んでおいでですね?」
天女公は一瞬顔をゆがめた。
やっぱりか。僕は本当のこの人たちが創り出した子ではない。先代女王公の弟だから、天女公は、自分の創り出した子を天王神にしたかった。そして、一番手っ取り早いのは、僕を殺すこと。でもーー
「しかし、大天使の私を消滅させることはできない。ゆえに、ミカエルを創った。そうですね?」
大体の天使は殺せる、といっても消滅させるというほうが正しい。天界の母である天女公は天界にいる全ての天使の消滅と創造を司っている。しかし、天女公は自分が創り出した者しかそれが通用しない。まぁ、僕は今だいたい、30000歳くらいかな?現天女公様は25000年くらい前にその任を負ったと聞いているが。
「それはーー」
「ええ、私はあなたに消滅して欲しかった。ですが、フリューツェル様の弟君である貴方は私の眷属ではない。そのような者に天王神にさせるつもりは全くもってございません!」
天女公様は天王神様の言を渡ってまでおっしゃりたいらしいが、私はそのことを最初から気づいていましたよ。僕を見る目がいつも殺意にあふれておりましたから。
「天女公様、いえ、母上。私は天王神にはなりません。我が弟、大天使ミカエル様のため、この力をお貸しし、相談者の地位をを拝命したく存じます」
しばらく沈黙がながれた後、母はほんのりと微笑みうなずいた。
「いい答えです。さすが、我が息子です。これからも、次期天王神ミカエルのため励みなさい」
僕はもう一度首を垂れて、ひざまずいた。
「感謝申し上げます。天女公様」
◇◇◇
3000年後ーー
「ミリューシュ兄上、次回の会議に我が妻、フリューリアと娘のミネルヴァを見学させたいのだが・・・」
僕は薄く微笑んだ。
「ああ、構いません。天王殿下のお心のままに」
ミカエルは、パッと笑顔になり「ミリューシュ兄上、感謝します」と言って去っていった。
ミカエルが見えなくなり、自室に戻尾朗としたとき、突然力が膨張し、僕は胸を押さえた。
「うぐっ、かはっ」
そこにたまたま僕専属の側仕えが通りかかった。
「主様!大丈夫ですか⁉・・・やはりまた、《天力》が膨張しておいでですか」
《天力》の膨張に気づいてる?何とか誤魔かすか。
「だ、大丈夫だから。少し、体調が優れぬだけだ。心配をかけてすまない」
そう、僕の力はどんどん膨張している。このままだと、正気を失ってしまうかもしれない。その時には、堕ちるしか・・・・・・
「主様、貴方様は・・・時が来れば堕ちてしまおう、と、お考えなのではないですか?」
バッと驚いた顔で側仕えを見た。側仕えは、痛々しい表情をしていた。
「知って、いたのか?いつからだ。気取られぬよう、気をつけていたのだがな」
「少し前から、主様は書物を読み漁っておられました。どれも、堕ちた大天使・・・邪神を封印、もしくは消滅させたという文献ばかりでした」
バレてたか・・・
「ふ~。おかしいなぁ~、僕、しっかりと人がいないことを確認したはずだったのに?まっいっか、ええーと、お前の名前は何だったか?」
側仕えは跪き、言った。
「私目の名は、キクトレート。キークとお呼び下さいませ。我が主、大天使ミリューシュ殿下」
僕はうっすらと尚感じる痛みを吹き飛ばすよに言った。
「分かった。キーク、このことは皆にも黙っておいてくれ。頼む」
キークは、一瞬顔を引きつったが、拳を胸の前に当て、ただ「委細承知いたしました。主様」と言った。
その後、僕の力は膨張の一途をたどった。そして、等々次膨張すれば、体の自由が利かなくなってしまうところまで悪化した。
「うっ、あぁぁ!かはっ。・・・・・・ち、くしょう。もう無理かもしれねぇな。堕ちるしかない、か」
俺は、キークと、この秘密を話した12人を部屋に呼んだ。
「貴方様は、ミカエル様の相談者をしながら、膨張に耐え続けておられています。もう、お休みになって下さいませ」
「すまないな、お前たち。ここに呼んだのは、他でもないお前たちに、堕としもらおうと、思った、んだ」
そう言った瞬間、キークたちは、驚いていなかった。
「・・・・・・委細、承知いたしました。貴方様堕とした後、天王神様と天女公様にお伝えいたします」
ああ、有能な側仕えを持ててよかった。
「後を、頼むな。キクトレート、カヴィーラ、ジークレン、パテール、ノウティカ、ベルト、ラべリオス、ネル、ソベレール、ローゼ、ナークリート、ギィーセイン、セレール。最後の命令だ、俺を堕とせ」
全員の名を呼び、一人一人に付いていた、俺との主従契約を解除していった。
最後は、皆泣きながら、ミリューシュを堕とした。
その後、堕とされたミリューシュは邪神となったが、ミカエルの《天力》により、7つの魂に分けられ封印された。長い長い永遠とも思える時間を、7つのミリューシュの魂は眠り続けた。ミリューシュの側仕え・・・配下達は、天界から、姿を消した。しかし、そのことに気づく者はいなかった。
ギベアの・・・ミリューシュの過去、両親から見限られたミリューシュ。
そんなミリューシュの唯一の支えが、13人の側仕え達。
これをご拝読いただいた、読者様にも、大切な支えてくださる方はいらっしゃますか?
ご拝読ありがとうございました!