第七話 ベゼルガイダーク観光は波乱?
「はぁぁぁぁ!?あいつらが、お前の従者?そしてそいつらの魂を持ってたから、はかっらてくれるだって!?なんで先に言わねぇんだよ!」
「落ち着け、落ち着け。しょうがなかったんだよ、まさか本当にそうだと思わなくてな。それと、素がでてるぞ。まぁ、あいつらの首に刺青があって確証が持てたんだけどな~」
今、俺らはギベアの能力で何とかベゼルガイダーク内に入ることができ、宿屋で一息ついているとこだ。俺が、なぜか警備隊が捜索を始めないことに不信がって聞くと、まあーこんな感じである。
「ごほんっ、すみません。また取り乱しました。で、す、が!!そういうことは、戦闘中に伝心でお伝えください。それと、早く姿変えて下さい、街の人がドン引いてたでしょっ」
力は変えて、この国の平均的な強さに調整はしたけど。平々凡々すぎて驚いてたしな・・・
「あぁ~、わりぃな。ほいっと」
ギベアが魔力で俺たちを包み込むと、そこにはマッシュの青年から毛量が多くはねっけのある髪を軽く取りポニーテールにしたベゼルガイダーク風の刀をさした20代くらいの青年が立ってたんだが、俺はというと鏡を見ると・・・
「おい・・・ギベア・・・」
なぜか、俺が喋る声は可憐な少女のようだ。
「ん?なんだ?」
ギベアが意地の悪そうな顔をしながら問いかけた、100%分かってんだろうが・・・
「なんで俺は女になってやがる!!?」
そう、俺はなぜか女の姿になっている。腰までありそうな長い髪を軽く集めてまとめた巫女と呼ばれるベゼルガイダークの聖堂に使える女性風の身なりになっているのだ。
「いいじゃねぇか、きれいだしばれにくいねぇだろ?それと、可憐な声でそんなこと言うなよ?」
半笑いでよく言う、完全にふざけてやがるな、こんのバカ野郎が。怒りで口角がピクピクしているのが分かる。
「おい、聞こえてるぞ。これでも心の声は聞こえてるからな!まっ、今日は日がもう傾き始めてるし、明日起きたらバミュール商会に行くぞ。取りあえずはまず、そこらへんの食事処で夕食を取るぞ」
「は~い」
「口調も仕切り直しておけよ。それと、ここでの俺らの設定は、リディニア王国から観光に来た令嬢のベゼルガイダークのお友達とその従者でホルデライデに用ありってことにしとくから」
ため息が出そうになるが、落ちつけ。よし、学園での令嬢のふるまいをまねてみるか。ほんのりと口角を上げて、軽く手を頬にあてて。そう、・・・エヴァのように。
「ふう・・・水泉、さっさと食事しましょう。しかし、ここのマスターは驚きませんか?いつの間にか見知らぬ者が泊まっていましたら・・・」
「そちらのほうはご心配なく、私がどうにかしておきます」
「そして、今宵の私目の名は水泉、でございますね。では、我が主菊香様、食事に向かいましょう。おっと忘れていました」
(いいか、なにか話す時は伝心を使え)
(ん?分かった)
俺たちは明日の予定をもう一度確認して、外に出るため、宿屋の店主に鍵を預けた。ギベアの言った通り、店主は(謎だが)違和感を持っていないようだった。「いってらっしゃい」と、言ってくれてるくらいだから。
あっそうだ!
「すみませんが、ここらでおすすめの美味しい店を知りませんか?」
「店ですか。そうですねぇ~、・・・あっ、そこの通りを少しいった所に「一双」という食事処の和食がとても美味しいですよ」
「ありがとう」
俺たちは宿屋をあとにして、その「一双」という食事処を目指した。
「菊香様、まさかあなた様がちゃんと喋れるなんて、思ってもみなかったですよ?」
完っ全に、馬鹿にしてる。このバカ野郎がっ!
「しかし、お嬢様も初めてでしょう?ベゼルガイダークは。私目は、一度来ているので、ご案内いたしーー」
そこで水泉は喋らなかった。
(カイ、落ち着けよ。ここから数百メートルか先に、どいつかは分からねぇが、君主の剣がいる。わりぃが、遠回りするわ)
俺はこくりとうなずいて、ギベアの後ろをついていった。俺たちは、裏路地に入っていった。んだが、
「よぉ、兄ちゃんたち。こんな所に入ってきてぇ、盗んでくれと言わんばかりだぜぇ?」
「おい、出たぞ。王道の盗人共が。めんどいし、俺がなんとかするか?お前がすると、肉片になるぞ」
「そこまで言わなくたっていいじゃねぇかよ。まっ、その通りだけどな~」
俺たちが、余裕ぶっこいて喋っていたら、怖気づいていると思われたようで、そいつらのボスみたいなやつが言ってきた。
「なにやってんだぁ?怖気づいて、従者に身代わりになってもらうかぁ?」
がはがはと笑っている盗人共を見ていると、めんどくさくなった。
「水泉、ちゃっちゃとヤるわ」
「後片付けがめんどいから、半殺しでたのみますよ」
「・・・・・・頑張る」
俺は、にやぁと笑うと、魔力を操作し「身体強化」をオリジナルで構築した。
「んじゃ、終わらせよっと」
「はぁ?何を言いてるんだーー」
なぜ今、このボスが全部話せなかったかというと、俺がとんでもない速さで距離を詰めて、拳を3発みぞおちに叩き込んで、回し蹴りしたからだ。これでも大分、手加減してる・・・大分な。
「ひっ、お頭?だ、大丈夫ですか・・・お、起きてくださいよぉ!?」
俺が、ボスを半殺しにしたために、部下の雑魚どもが怯えているようだが・・・中には俺に殴りかかてきそうな、己の弱さと愚かさを分からないやつもいるようだ。よし、こいつらも半殺しにーー
俺が距離を詰めようと、前に出そうになったときだった、ギベアが、ガット俺を捕まえて上に飛び上がった。その直後、俺のいた場所に刀が両方向から交差されていた。俺がもし前に出れば、串刺しになるところだった。
そして少し距離をとって降りた。危なかったぜ。
「あいがとうございます、水泉。助かりました」
「いいえ、菊香様。それより、早く離れましょう。あいつら、君主の剣ですね。片方の男は菊池でしょう、もう片方は知らぬ顔ですね」
「ええ、早く離れましょう」
俺たちが大通りに戻ろうとすると、知らない男が振り向いて来た。
「お待ち召されよ、美しき女性と獰猛さが見える従者殿よ」
((やっぱり、さっさと帰れなかったー))
「貴殿らが、こやつらの頭を半殺しにいたしたのか?」
口を開き、問いを投げかけたのは、菊池とまた別の毛先が赤みがかった短髪の男だった。
「いいえ、全くもって知りません、首切り衆のお二方」
「ふむ、しかしそうはいかぬでしょう、我らの太刀筋と気配を読み、見事に飛びさすられておられたそちらの従者殿も、貴女も我らの気配を感じ取っておられた。故に、あなた方のお名前をお聞かせいただけぬでしょうかな?」
無理か、と思っていると、ふうっと息を吐いてギベアが作った笑顔と設定で演じはじめた。
「その前に、そちらのお名前をお聞かせいただけぬでしょうか。私たちはベゼルガイダークの隣国、二バルトセの小貴族の者で、首切り衆の皆様を見たことは無いのですが、噂はかねがね。しかし、名もわからぬのです。お許しくださいませ」
「ふむ、そうであったか。我の名は千時陽炎、そしてこの者の名は」
「菊池郎清言うねん。よろしゅう」
ここにきて喋り出したかと思うと、菊池の名を知り少し驚いた。
「私は、上雲玲菊香と申します。こちらは、従者の朱鷺原水泉と申します」
「紹介いただいた、水泉でございます」
明らかに怪しんでいるようだがどうする・・・・・・
「あっ、思い出したで!水泉はんと菊香様!昨年は、俺んとこの姉さんがお世話になりました。千時はん、こん方たちは俺の姉さんの友達なんですわ。なかなか会わんかったがに、顔を見てもしっくりきまへんでしたが、お名前聞いて、思い出しましたわ」
(ナイスフォロー!菊池さん!)
千時さんは、少し怪しんでいたが、同じ首切り衆の仲間に言われ、ずいぶん納得したようで、盗人をつれて帰っていった。
「さてとじゃあ~、一双行きましょう!水泉!」
「はい。我が主であり唯一の友の子の命なれば」
いかがでしたか?なんとか七話まできました!
(やったー!)
今話までお読みくださり、感謝しかありません。ぜひこれからも、お付き合いくださいませ!