第六話 遭遇した剣
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まさか自分がそんな魂もちだと初めて知った俺は、ただ今、度肝を抜かれて半失神状態だった。
「おい、なに半失神状態になってんだ?さっさと、教練始めるぞ。早くベゼルガイダークに行くぞ」
俺は、はっとなって動き出した。ギベアは、どんどん進んで行った。少し歩くと開けた場所に出た。
「ここらあたりでいいか」
「兄さん、何するんですか?こんな所まできて」
質問を投げかけると、ギベアが、馬鹿かお前?教練って言っただろうが。と、突っ返した。
「はぁ。いいか?こんな所で《地力》を用いて能力なんて使ってみろ。俺らはただでさえ今俺がお前分も魔力を抑えてんのに水の泡だろ!」
そう言ってギベアが印を組んだ。
「だからそのためにこうするんだよ」
『時 執行印 世界の時』
その瞬間俺の体を何かが抜けたような感覚になった後、世界の時が、止まった。
「ど、どうなって、いるんですか。兄さん」
ギベアは、何事もなかったかのように言った。
「ん?時を止めただけだ。まぁ厳密には本来の時間の1時間をこの世界の時を止めると半年の時の速さになる。これで、いつまでも教練出来るだろ?」
おいおい、ギベアそれはもはや世界の根本に干渉するんじゃなっ・・・まっいいか。
その後、ギベアに《地力》用いた能力。炎・影・時、の顕現方法や印の説明を受けた。
「いいか、まず印についてだ。印っつうのは、俺らの能力を顕現の手助けや、己の《地力》を大きくするものだ。弱いやつほど印は長く組み合わせをする必要があるんだよ」
「ん?」
でも、ギベアはそんな長々と組んでいないような・・?
「言ったろ《地力》を大きくするために印を組むんだと、強いやつはそれなりに魔力量がある。だから《地力》をそこまで大きくしなくても強大な力を作りだせるんだ」
なるほど、だからギベアは印を簡単に組むのか。それに、長く印を組むと戦闘中の場合は隙を見せることになるしな。
「そういう事だ。・・・ギィ、今更だがお前、《天力》・《地力》と魔力の違いは分かるか?」
「あっ、はい!リコールヴィアで学びました。《天力》とは、天界に住まう神達の神聖な魔力の事で清らかであり、信仰によって加護として、人間に与えることもできると。また、《地力》とは《天力》の対になるもので、邪神や魔のモノが、変換した最悪の力だと。そして、魔力とは生きとし生ける全ての者が量は違えど持ちうるものなんだと・・・。この解釈で相違ありませんか?」
ギベアは、満足そうにうなずいた。
「ああ、その解釈でいい。それじゃ、基礎もできたところで何だが、ギィ、育ちの良さを隠せよ。んじゃ、戦い方を教える」
その後、印の組み方や能力を顕現させる方法も教えてもらった。と言っても、能力名の詠唱と印をそれに合ったようにするだけだがな?そして今、ベゼルガイダークの国境付近まで来ていた。
(よし、あそこの大門城壁を越えるぞ。気をつけろ、城壁の上に見張り台があるだろ、あそこに紅白の袴と呼ばれるものを着た男女がいるだろ)
(はい。あの方達が君主の剣でしょうね。とんでもない力をこの距離で感じます)
あの教練の時に伝心の仕方を教えてもらい、会話を可能にした。前までは俺の心をギベアが一方的に読めるだけだったからだ。
(それじゃ、ちゃっちゃとやってやろう)
ギベアが印を組んだその時だった。
「おやおや?妖かと思うたが、くせ者であったか。妙に強い気を感じたのだがなぁ、気のせいであったかえ?」
俺たちは、あっけに取られた。
こいつは、いつの間にここに来た?いや、そんなことより戦闘態勢に入れ!本能的に構えた。
(落ち着け!)
ギベアの声ではっとなった、もう一人いたはずだ、男がいたはず・・・。
その瞬間、首筋に悪寒が走った。俺は、瞬間的に飛び上がって空中で印を組んだ。
『炎 執行印 炎上』
俺のいた場所の少し後ろから爆発するように炎が燃え上がった。
「うわっ、なんやこれ!?」
男が飛び退る。
「あぁ、せっかく新調した服やったのに、どないしてくれんねん。はぁ、華陽お嬢も何勝手に行ってはんのですか」
「おお、すまんな菊池よ、ついつい待ち切れのぉてな。だが刀をそう早う振りかざすものではないぞ?」
いつの間にか現れた二人はベゼルガイダーク独自の武器なのか、刀と呼ばれている細長い剣と、とてつもなく大きい扇のようなものを持っていた。
どうするギベア。こいつらから逃げ切るのは至難の業だぞ。
先にギベアが動いた。ギベアは、立ち上がりフードを脱いだ。
「これはこれは、あの伝説の君主の剣様方ではないですか。私共はただの旅人、見逃していただけませんか?」
「すまんな、せやかてそれは出来んのや。他国の方々は俺らをグラディウス?って呼んではったりするけどな、俺らの国では首切り衆とか言われとんのや。せやからな、俺らの誇りは何人たりとも触れさすわけには・・・・いかんのやっ!」
切りかかって来た菊池をギベアは笑ってよけなかった。菊池が目を見開く。それもそうだろう、なんだってギベアが菊池の刀を鷲掴んでいるのだから。
「あ~あ、せっかく戦わず穏便に終わらせようと思ったのに、どうしてくれるんですかぁ?」
菊池が飛び退くと同時に華陽が巨大な扇を振り下ろした。
『風神舞 疾風殺衣』
(おい、ギベア!こいつら、『天力』を・・・加護を持ってやがるぞ・・・!)
(ふんっ、なるほどな、だからこいつらがこんな人間離れした強さをもってやがるんだろうよ)
『雷神舞 雷鳴突き』
今度は菊池が距離を詰めて来た。だが・・・
「こちとら、本物の神と人間捨てたやつが相手だぞ?」
俺は、ギベアが印を組むのと同時に目を向けてきた意図を理解し背中合わせで俺も印を組んだ。それも、いつもより長く。
『影 執行印 黒煙香』 同時に詠唱した。
俺たちの周りがとんでもない量の影と化した魔力が覆う。俺達と華陽たちの間が閉ざされ見えなくなる。
「っ、待ちやがれぇ!」
菊池が刀を振るう気配を感じたが、ギベアがそれより早く詠唱する。
『時』
◇◇◇
黒煙が落ち着くと、そこにはあの侵入者は消えていた。
「あぁ~、逃げていきおったですね、華陽お嬢」
「そうじゃの、しかし・・・彼の主様は復活されたと聞き及んでおったが、良かった。・・・しかし、主様と共におった者はなんであろうかえ?まぁ良い、我らは主様のため上手くやるとしようかねぇ。のぉ、菊池?」
「ええ。というか、あの御方最初から我らにお気づきになっとったでしょう?」
「ふふっ、さぁどうであろうな?まぁ、覚えておられぬやもしれぬのぉ、姿も変わったしの。じゃが主様、我ら《天貴騎士の13人》はまだあなた方ご兄弟をお支え続ける所存に御座いますよ。我ら唯一の主、ミリューシュ様の七欠片の1柱。傲慢の王・残酷非道のギベア様」
そう言って二人は微笑み、風が吹いたかと思うと姿を消した。
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