第五話 ホルデライデへの旅支度
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「親父、なのか?本当に」
親父からの返答はない。
「いいか、俺達七欠片はみんなミリューシュの魂だ。ミリューシュは、死人の管理も天使時代にやっていてな、その名残で死人を自分の従者にできんだよ。ただし、意思は持たない」
だから、死人を持っていたのか。しかしこいつ、いつ親父の事知ったんだ?会う機会なんてなかったはずだけど。
俺の心の声を聴くと、俺の力を戻してくれながら話してくれた。
「ああ、正直言って、誰を使っても良かったんだがな、イデが使ってくれと言っているような気がしたんだよ。・・・イデは、あいつが幼稚園時代にな、お前と同じようにこの断崖にふらっと来たことがあったんだよ」
◇◇◇
「あなたは、そんなことで怒っておられるのですか?」
その日、断崖の上に小さい人の気配を感じてな。あわよくば殺して暇つぶしにする気満々だったんだよ。だけどな、イデは声をかけてきた。イデは、その年に見合わない口調で言ってきた。俺はその時、ミカエルの封印に腹がったてしょうがなかった。3000年もたってたのにな。
「はぁ?何だとガキ?」
「あなたがなぜ怒られているのかいるのか分かりませんが、あなたには、僕よりも長い時があるんでしょう?なら、その時間を怒るなどという事に使うのは面倒じゃないですか」
俺はその言葉に今までの自分がバカらしく見えてな、俺はイデと会話するようになった。イデは五大マフィアの関係者という事が分かった。俺らはよく話をした。
「ギア聞いてよ!今日学校で剣術コンテストがあってね、優勝したよ!」
「そうなのか!イデは本当に剣術が好きだな」
俺たちは、愛称で呼ぶほどの仲なった。毎日イデが来て雑談の日々、俺にとっては唯一の友との小さな幸福の時間だった。・・・しかし、イデは大きくなると、もう来ることができないといった。
「ギア、お前の正体は残酷非道のギベアだろ?」
「・・・」
俺はとうとうイデにばれた、終わったと思ったよ。
「俺は、もう少しで任命式が終われば五大マフィアのボスの1人になる。もう、来れない」
「そうか、なら俺はまた長い時を眠るかな。封印解けないし」
「解けたらヤバいって。・・・まぁ、それはおいといて。それでギア、俺は最後に頼みをしに来た」
「ん?頼み?いいぞ、俺の唯一の友の頼みだしな」
「ありがとう、俺が死んだ時ーー」
◇◇◇
「もしかして、その頼みが・・・っ」
「そうだ。イデは自分が死んだときに俺の従者になりたいと言った。意思は消えるぞと言ったにも関わらず・・・。そして契約も結び、この前、イデの魂が俺の下に来たよ」
親父、良かったな。
「なるほど、それでか。・・・騒いで、すまなかった」
「いい、あいつもそうなることが薄々気づいていたんだろ。で、俺たちの昔話は捨てるとして」
ギベアは、親父に向き直り命令した。
「イデ、俺たちの肉体を守れ。何人たりとも近づけるな」
その言葉を聞くと、首を垂れた。
「よし、んじゃ行くぞ」
ギベアは、印を組んだ
『時』
その言葉と共に意識が切り替わる。
◇◇◇
どれくらい意識が飛んでいたか。目を開けるとそこは、小家の屋根のようだった。
「起きたか?眠り姫さんよ」
視界に頭の影が写りこんだ。そこには、マッシュヘアの男が立っていた。
「あんた、誰だ?」
見覚えのない顔だし、俺はこいつに会うのは初めてだ。
「バカか?お前。俺だ、ギベアだよ」
ギベア・・・。ギベア!?俺は、飛び起きた。
「おま、お前がギベア!?もっと小さかったはずなのに」
「はぁ~、言っただろ。商人に乗り移るって」
あっ、そうだった。じゃあこの体は、誰かの体か。
「そうだ。どうやら、ここの住人は兄弟で商いをやっていたようでな。で、これからホルデライデを目指すんだが。その前に、お前に新しい名前と、《地力》をマスターしてもらわねぇとな」
「新しい名?」
「そうだ。もし、カイという人物を気取られては困るからな。そうだなぁ、お前はこれからギィークと名乗れ。それと、自分のことは僕と言え。そのほうが社交的だしな」
「分かった。じゃあ、お前にも名前を。ガレック、それが兄さんの名前ですよ」
ぐふって音が聞こえて、ギベアが腹を抱えて笑っていた。
「わはははっ、兄さんねぇ。そんなこと、微塵も思ってないだろうになぁ。ははっ、まぁいいよ、ギィ、飯用意しておいたから食え。その後、これからの事を考えて《地力》の扱い方だ」
周りを見ると机に料理が並べられていた。俺は、オカンか!っと突っ込むのを抑えた。
「わぁ、美味しそうですね。まさか兄さんが料理できるなんてね~」
「馬鹿にするなギィ。俺でも出来る」
◇◇◇
「美味しかったです」
俺が手を合わせると、ちゃっちゃと皿を片付けた。
「食ったなら、まずこれからを話すぞ」
俺はうなずき、この体の少年の記憶と照らし合わせて、グリードの封印を解くためにどうやって交易国家ホルデライデまで行くかをギベアと話した。
「まず最初に、交易国家ホルデライデは検問が厳しい。そのため、小さな商人の団体は入ることが難しい、が、大きな商隊などは検査員も甘い」
「ああ、俺もお前が寝ている間に少し街に下りて情報収集してきたが、ここらの街だとホルデライデに向かう大きな商隊はないらしい。だから」
そう言ってギベアは地図を取り出して広げた。
「このままホルデライデに行く前に、西の大国、君主制国家ベゼルガイダークに行き。ベゼルガイダークで主にホルデライデへの動きが多い、バミュール商会の商隊に入る。そして、ホルデライデの領土のどこかに封印されたグリードを探す」
いい案だ、だが根本的にベゼルガイダークは強い者しか入国を許されない国だが。
「ああそれだが、心配はいらねぇと思う。俺らは、《地力》で姿を隠し忍び込み容姿などや強さも文句ないくらいにしとく、予定だが・・・」
「君主の剣たちが国境に少なからずいるでしょうね」
「ああ」
ベゼルガイダークには、君主を守る絶対の騎士の精鋭、君主の剣と呼ばれる者たちがいる。彼らは1人1人が一騎当千の力を持っていて。総勢19人ほどしかいないにも関わらず、戦争で1人でれば必ず無傷で敵将の首をとって帰ってくるほどの実力だった。
「もし戦う事になってしまったら、兄さん勝てますか?」
「1人くらいならねじ伏せれる。2,3人でこられると、ちと厳しいな」
「ギィ、お前は言えば俺の分身みたいなもんだからな、《地力》さえマスターすれば勝てる」
「っと、いう事で、今からお前に俺の能力のレクチャーをしてやる。まず、お前の素質を見る」
ギベアは、どこからともなく球体を出して言った。
「これは、魔力素質測定器っていうんだが、今から俺が《地力》、もとい魔力量を見せてやる。だいたい、一般で30~50くらいが平民の魔力量で、俺みたいな堕天使はっと」
ギベアが魔力を流し込むと『魔力量 推定45000』という数字が表示された。
「45000⁉何ですか、この意味わかんない数字は!」
「だいたいこんなもんだぞ、堕天使はな。ただし、俺みたいな堕天使はいわば元大天使だ。本気を出して生命力をも糧とすれば、そうだな、60000くらいはいくぞ」
ろ、6万。マジの化け物級だな。
「まっ、だがお前も俺の魂を持っているとしてもせいぜい1,20000が関の山だろうがな。よし、やってみろ」
俺は、言われた通りに魔力を流し込み、測定した。しばらく測定したところで、結果がでた。
俺たちは度肝を抜かれた。
「はっ、わはははは!こりゃあすげぇ。お前はどこまでも面白い!」
魔力素質測定器に写し出された数字は、
『魔力量 推定50000』
「お前は、恐らく元の魂がとんでもねぇ化け物級の神か、邪神だよ。こりゃまた、すげぇ君主のようだ」
いかがでしょうか?
そして、またも遅くなり申し訳ございません。なかなか書けない日々でした。
とうとう、ホルデライデを目指すようです!さてどんな旅でしょう?
また、カイの元の魂は誰なのか?引き続き見ていただければ幸いです。