第四話 ギベアという堕天使
とんでもなく遅くなりすみません。
ご拝読ありがとうございます。
「改めて、俺は大天使ミカエルの影ギベア。カイ、今からお前の従者だ」
そう言うと、ギベアはおれの前にニヤリと笑いながら首を垂れた。おれは、自分の中に二つの魂があるのが分かる。俺は、もう戻れない。
「ギベア、確認だ。お前の能力はなんだ?」
ギベアと契約を交わしたときに少し能力について分かった。邪神となった者は、堕ちる前に操っていた《天力》の属性・・・簡単に言えば、火魔法とか水魔法とかそんな感じだ。が、《地力》にもあるっぽい。
「ああー、俺の能力は影とかだよ。あっ、言ってなかったか。まず、上級の天界に住まう者、んーー。めんどい!天使って言うぞ。上級の天使が堕ちた場合大抵のやつは、陰と何かを使う」
「なぜ?」
「簡単だ。扱いやすいんだよ、堕天使っつう上級の邪神の《地力》は、力が強すぎて並大抵の属性だと耐えれないんだよ、だから陰をつかうんだよ。まぁ使い方はそいつによるけどな」
そういうことか、じゃあーー
「ギベア、お前はどう使うんだ?」
ギベアは、ため息つき、やれやれと首を振った。
「バカかお前?言ったはずだ、見て覚えろと。わざわざ、手厚く教えてやるわけねぇだろ」
なるほど、まぁギベアが言うことも分からなくはない。《地力》の扱い方を教えるとそれに伴い、そいつの過去が視える。なぜなら、その魂が過去への渇望を捨てることができないために、過去の己に関することを言うと過去の記憶を嫌でも喋るからだ。だが、教えてもらわねぇとこれからに重要だ。
「ギベア、本当に教える気はねぇか?」
「くでぇぞお前!」
間髪いれずの回答ありがとう。ん~しょうがねぇな。ほんとはこんな手使いたかないんだが。俺は《地力》をオーラに変換し、そのオーラをギベアのコア付近に集めこんだ。その瞬間ギベアの周りに鎖が絡みつき俺の瞳が濃い藍色になった。
ギベアがギョッとなると苦笑した。
「お前がまさか命令の執行を使えるなんてな」
命令の執行。それは、主従関係を契約により結んだ者ができる、従者の生命力を糧として命令を無理やり受理させる契約神ミスラの秘術だ。
「あぁ、知り合いがね」
『契約神ミスラの下に契約する主従は、従者のの生命を糧としーー」
「分かったよ!教えてやるよ。ただし、長くなるぞ」
ギベアは向き直り、真剣な表情でしゃべりだした。
「まず、俺は堕天使だが3つの能力を行使する。1つは言った通り影、そして時と炎だ。俺の固有能力名ーー傲慢の罪」
ん?傲慢?どこかで・・・
俺が頭をひねっていると、「たく、バカが。これでも分かんねぇのかよ」そう言って髪をかきあげた。
するとそこには、ミカエルの《天力》の痕が付いた六つの天使の翼を持った暴れ狂うライオンの刺青がはいっていた。
俺はその事に直ぐに気づき、顔を上げると、ギベアは、やっとか。とでも言いたそうな顔をしつつ過去を振り返るようにしゃべり続けた。
「知ってるか?昔、大天使ミカエルの兄で、恐ろしいほどの力を持つ大天使がいたという。そいつはミカエルのよき相談者で、唯一の血縁者だった。しかし、そいつは自身の膨大な力のためにゆっくり堕ちていった。そして、とうとう傲慢な最悪最恐の堕天使となった。その天使であったころの名は、ミリューシュと言ったらしい」
ああ、そうだ。そして確かその後ーー
「堕ちたミリューシュは弟ミカエルの手により、傲慢の罪で封印された。その時、強すぎるミリューシュの魂を七つに分け、七つの大罪をもつ堕天使として、そしてミカエルの影として7柱は封印された。その中で最もミリューシュに近い力を持っていた者の名は・・・ギベアリューシュであったと。そして残酷非道のギベアと言われて恐れられ続けたと」
言い終わるとギベアは、はぁぁと大きなため息をつき、もの凄く怒っているのがわかる笑顔で喋った。
「さて、ここまでくればバカでも分かるな。俺の正体は最悪最恐の堕天使、ミリューシュの七欠片。残酷非道のギベアだよ!」
半やり投げ気味の告白に引き気味の俺である。まぁやばい奴と契約しちまったわけだな。
「まさか、お前がねぇ。っで、俺に封印を解かせたのか」
ギベアが頭をかく。
「ああ!そうだよ!まぁいずれ分かることだったがな。それでどうする?契約解除か?主であるお前が言えば契約解除ができるが」
契約解除?こんなラッキーチャンスを逃す方がバカだ。
「いいや。良いことを聞いたような心地だ。このままお前の兄弟の封印解いてやるよ」
ギベアは予想としていた答えではなかったためか、虚を突かれたような顔をした後、笑い出した。
「っはははは!良いなお前、やっぱりいい!俺は運がいいらしい。弟ミカエルに封印されたときは、恨み言を吐くのも疲れていたが・・・くっ、はははは!良いことを聞いたような心地、か。本当に面白いな」
何かお気に召してしまったみたいだな、めんどくさい事に後々ならなければいいがな。
「とりあえずギベア。まずどこの兄弟を助けに行くんだ?」
「ん?ああ、んとなぁ~。どいつが一番ちけぇかな?」
そう言ってギベアが目をつぶり、《地力》をオーラに変換し、もの凄い速さで広げていった。
「おっ、見つけた、見つけた。そうだな、一番近くで大欲非道のグリードだな。あいつは少しめんどくさい性格だが・・・まぁ何とかなるだろ」
「・・・嫌な予感がするけどな。まぁそれはおいておくとして、どこにいるんだ?」
「んとな、ちょっと待てよ。・・・ああ、ここから北西に6000キロさきの交易国家ホルデライデだな」
うん。6000キロ?一番近くて?・・・何言ってんだこいつ。徒歩でどんだけかかると?
俺の心の声が聴こえたからだろう、ギベアが殴る3秒前の表情である。
「失礼な、俺だってそんなこと百も承知だ、バカが。いいか、俺らの体をここに残して魂のみを跳ばす。ただ、俺も封印から目覚めてほんの少ししかたってねぇから跳ばせて5000キロ程度だ。そこでだ、俺たちはそこの商人のやつに入り込み、ホルデライデを目指す」
「なるほど、それなら良いな。ただ俺たちの体はどうする?ここは海の中だ、魚の餌になるぞ」
ギベアは、おっと忘れていたと言って、それは大丈夫だと簡単に言ってのけた。
「いいか、俺はミリューシュの七欠片だぞ?そんなこと朝飯前だ」
そう言うと詠唱をしだした。
『我がな 残酷非道のギベアの名において 炎炎の地の果てから 我が従者 イデワルドを呼び起こさん』
は・・・!?イデ、ワルドだと。死んだはずだし、親父は邪神でもないし堕天使でもない!
「落ち着け」
俺の心の声を聴いて、ギベアが言った。
「はあ!?落ち着いていられるかよ!親父がいつお前の従者になったんだよ!」
「はぁ。少し黙れ、バカが」
ギベアが言ったとたんに全身の力が抜けた。ギベアの声は驚くほど澄んでいた。俺は倒れこんだ。見上げると、親父が現れた。そして見えたのは、首に暴れ狂うライオンにひれ伏すライオンの刺青だった。
それは、親父がギベアの従者であることを知らしめるものだった。
いかがでしょうか?今回も面白いと思ってくだされば幸いです。
それでは、皆さまにミカエルの加護がおつることを