第十五話 学校見学中のトラブル
皆さまひーーーさしぶりです!!
朝、俺とヤンカーはベレネッツァ王立学校高等部へ向けて馬車を走らせていた。ちなみにギベアは酔ってしまうので留守番中。
「午前中だけなんですぐ終わりますよ」
「そう、ですね」
正直、俺はもう「学校」なんて所にはいく気がない。俺の大切な友達は、逆賊に組したと冤罪をかけられて今は牢獄の中に入ってるんだろう。きっと恨んでる・・・。だからもう友達は作らないし、見たくもない。
「おっ!見えてきましたよ」
ヤンカーが窓を覗いて言った。俺も窓を覗いてみれば、そこには豪邸のような佇まいに「ベレネッツァ王立学校高等部」と書かれた石碑があった。よく見ると中に制服を着た男女が教科書のようなものを持って移動している。
「あー、ちょうど今から授業ですからねー。きっと教室に行ってるんですよ」
「ふーん」
あんまり興味ないな。でもまーいいか、上手に欺けるし。
学園の裏に回り、馬車を止めて降りた。
「それじゃぁーいきましょっか?」
「はい。取りあえず、頑張って10代の振りをします」
全然自信はないけどね。
そこから、ヤンカーに案内を頼んだ。教室や食堂に実験室にグラウンドまで、大体すべて案内してもらった。
「ここが魔法薬の管理室であっちが魔道具の貸し出し所ですよ」
「へぇー、そんな場所があるんですか。・・・あの、少し気になったのでお聞きしますけど、菊池さんすごくここの事詳しいですね」
「ええ、俺は中等部から高等部まではこっちに留学で来てたんでよく知っとるんです」
「すごいですね、留学かぁ」
俺は留学希望は出さなかったからなぁ~、マフィアの仕事も貴族の仕事も忙しすぎてやらなかった、というかめんどくさかったからだな。
その後、移動教室で出ていた生徒が昼時となって食堂に向かっていた。
「俺たちも食べて帰りません?」
正直まだここの生徒に会いたくはないんだけどな・・・。このまま嫌だと言ったら余計ヤンカーに付き合わされる気がするからな。
「ええ、いいですよ」
俺たちは食堂に入った。
実際は食堂というよりもレストランという印象だな。シャンデリアが天井で輝きながら生徒が貴族ゆえだろう、とてもいい素材を使って料理が作られていく。
「あの、ちなみに僕たちって部外者ですけど、ここを利用してもよろしいんですか?」
「大丈夫です。ここは主に貴族であればほとんどの方が使えます。ある意味、学校の中にあるレストランですね」
ここで言う「レストラン」というのは貴族御用達という意味合いが強いんだろうな。
「それじゃあ席に座りましょっか」
食堂・・・ある意のレストランに入ると、案内人が席へ案内しメニューを言う。
「本日はお越しくださりありがとうございます。本日のメニューといたしましては、2つコースがございます。国産のホルデ牛を使用いたしますAコースと、魔獣メルコニアの卵と肉を使用いたしますBコースになっております。いかがいたしましょうか?」
「今日はどちらの方が人気ですか?」
まずは聞いてみるとする。
「本日はAコースの方がよくご注文されます」
「では、僕はAで。菊池さんはどういたしますか?」
「それじゃあ、Bコースを」
「承知いたしました」
しばらく料理が来るまで2人でこの学校の事を話した。そしてもうしばらくしてさっきの案内人が2人分の皿を持ってきた。
「こちらが前菜のーー」
その後、コース料理を堪能してレストランを出た。
「えっと、とりあえず校内はこんな感じです。どうしましょうか?帰ります?」
「ええ、そうしましょーー」
「無礼者!!出ていけ!」
俺が喋ってる途中でとんでもない大声で罵倒する声が聞こえた。
「何だ?」
その声の主はどうやら中庭にいるようで、俺たちも中庭に移動した。
「どうして平民の血が入る下賤な者がここにいるのだ!?」
中庭に行くと既に人だかりができていた。よく見ると真ん中に倒れこんでいる生徒と威張り散らす生徒、それに付き従う生徒たちがいた。俺は近くの女子生徒たちに声をかけて詳細を聞いてみた。
「すみませんが、どうしてこんなことに?」
女子生徒たちは少し遠慮がちに言った。
「あそこにおられる方はウィックリー公爵の嫡男であられるヴィクター様で、倒れこんでおられるのがミザリ男爵の次男でケイル様ですわ。ケイル様は・・・その、ミザリ男爵の側室の子共なんですの」
「でも、貴族が側室を取ることは珍しくありませんよ?」
「いえ・・・その側室の方が実は平民の方らしく、でも側室となったからには貴族となりますわ、しかし、それを知ってウィックリー様がお怒りになり、挙句の果てに殴りかかることになってしまいましたの。でも、教師の方々は公爵家であるウィックリー様に逆らえずこんなことに・・・・・・」
なるほど、よくある平民差別。しかし、王立学園でここの歴史を学んだ時に少しかすった程度に覚えた公爵家の名のリストに、たしかミザリ公爵もいたか。
とりあえず、止めなくてはいけない。このまま放っておいたらもっと手ひどい仕打ちに会う。
「菊池さんほんの少しだけ、力を使わせて下さい」
このままはいけない。何より、俺自身が平民上がりであることをけなしたくない!
「いいや。俺が行きますよ、待っとって下さいね?」
ヤンカーはさっきまでの貴族風の格好から服をしれっと《地力》で君主の剣の正装に変わった。見ていたものはドン引きの一言である。
まぁ、それはそうだろう。君主の剣というのはどこの国でも一度は聞く完全武力の塊だ。しかも、聞いたところによると貴族でもあるらしいが、ベゼルガイダークは武力を重んじるためにあまりそこらへんは気にしないらしい。
「おーい、そろそろいい加減にな?」
「はぁ?どこの誰が崇高なる私に口を聞いて、いる、の、だ」
ウィックリーは、ヤンカーを見た途端に口が開いたまま閉じなくなっていた。
「武力国家ベゼルガイダークの君主に使える忠実な君主の剣の菊池朗信ですが?」
「菊池様!?あの君主の剣のお方なんて!!」
どこかの女子生徒が言った言葉を聞いて、周りにいた生徒は一斉にざわめきだした。
「君主の剣だって!?」「なんでそんな大物がこの国来てんだよ?」「とにかくかっこいいですわ」「確か、陛下の顔見知りだとか・・・」
周りのざわめきを無視するようにヤンカーはどんどんウィックリーに近づいていく。
「なっ、君主の剣だと?なんでそんな方が・・・」
「俺はたっまたま、ここに足を運びたくなっただけなんやけどなぁ。ちゅうか、さっさと散れよーお前らー先輩からの忠告やで。言っとくが俺も元は平民や、やけどな、俺は実力で君主の剣にまでなった。俺は今お前より高い地位におる。そんままおごっとったら・・・・・・分かるな?」
ヤンカーは底冷えするような目でウィックリーを見ていた。ウィックリーは最早恐怖で指さえ動かせずにいた。
(カイ、君は取りあえずこの周りの生徒たちを散らしてもらえますか?)
(分かりました)
俺は手を広げ思いっきり叩いた。すると案の定こちらを全員・・・厳密にいえばウィックリーと取り巻きたち以外がこちらを見た。
「皆さん、もうすぐ次の授業が始まります。移動を!」
声に少し《地力》をこめ、生徒たちにほんのりと洗脳をかけた。すると生徒たちはそれぞれの教室へ向かった。残るはウィックリーと取り巻きたち、それとケイルに俺とヤンカーのみだ。
「さて、ミザリ公爵のご嫡男君と愉快な仲間君たち、君たちも戻りや。あっ、それと俺んことはあんま広めんとってな?他の子に言っといてくれ」
ウィックリーは取り巻きたちを放って一目散に逃げ、その後を取り巻きたちが走っていく。
「あの、私も戻ってもよろしいでしょうか?」
倒れこんでいたケイルはもう立ち直り、ヤンカーと俺を見た。
「いいや、君には少し話がしたいんや。そやなー、サロンで話がしたいんやけどええかな?」
「サロン」というのは王族が学校へ通う際、食事や極秘の談話をするための場所。
ケイルは面白そうにうなずき案内してくれた。サロンは、使われていない教室の中に仕掛けがあり、その奥にサロンはあった。中はとても美しく整備されていた。
「どうぞお座りください」
「では、お言葉に甘えてっと言いたいですが、まずは挨拶ですね」
ヤンカーの言葉のなまりが抜けている。
俺とヤンカーは最敬礼をし、ヤンカーが祝福の言葉を口にした。
「エリック・ぺネル・ホルデライデ皇太子殿下。この素晴らしき煌々たる良き日に、ホルデライデが守護神ピッリッツェレーネの祝福が貴方様に贈られることを切に願っております」
その時、ケイル・・・もとい皇太子殿下の髪と瞳がホルデライデの皇族にのみ発言する紫紺色になった。
「やぁ、シンそして上雲玲殿。ホルデライデへようこそ」
どもども!金木犀 稜です!
いやぁーほんとに久しぶりですね。長らく書けずにいたのでやっとです。
今回もまた新キャラくんたちのオンパレードでしたね!
ウィックリーくんはこのまま下げるつもりはないので、お楽しみに!
それでは皆様、ご拝読ありがとうございました!!




