第十三話 交渉と残酷な追手共
遅くなりました!
しばらく抱き合って少し。
「いやぁ~すんません。久方ぶりに妻に会ったものやったんで」
「私も旦那様にお会いできてうれしゅうござましたが、お客様にそんなお姿を見せてしまい、申し訳ございません」
いちよう設定は崩してないけど・・・。
「でもやっぱ、俺の妻は美人で可愛くて・・・俺の最愛の姫やなぁ~」
これを愛妻バカとでもいうのだろうか?まぁ、すごく奥さんが好きなのは分かるけど。
「何故菊池さんの奥さんがこの国の皇女殿下なのですか?」
「ああ、んーと俺の奥さんは実は天界の者なんですわ。俺の奥さんの名前は」
「待って旦那様。・・・お初にお目にかかります、ギベア様。キクトレート・ヤンカーの妻です。挨拶はこのくらいにさせて頂きます。失礼ですが、この横のお方はどなたでしょうか?申し訳ありませんが信用がおけぬ方に名はお伝えできません」
どうやら怪しまれてるみたいだ。俺はリコールヴィアで習ったこの地方の挨拶をした。
「申し遅れてしまいましたね。まずは王位継承権第1位マリアベル・ぺネル・ホルデライデ皇女殿下。この素晴らしき煌々たる良き日に、ホルデライデが守護神、ピッリッツェレーナの祝福が貴女様方に贈られることを切に願っていると共に、私の名を名乗る事をお許し下さいませ」
マリアベルは驚いた表情を見せた。そりゃそうだ、いきなりこの地方にしか通じない挨拶をしたのだから。
「・・・許します」
「ありがとうございます。私の名はカイ・ガルシアと申します。わけあって今は上雲玲菊と名乗っております」
「キークの嫁。こいつは俺の契約者だが信用していい」
「・・・・・・ギベア様もそうおっしゃるならば、分かりました。私の名はリヴィアベレン・ヤンカー。天界の母、天女公様の侍女頭であり旦那様であるキクトレート・ヤンカー様の妻です。どうぞリヴィアとお呼び下さいませ」
リヴィアさんはぱっぱと自己紹介を終えたが、俺にはどうも気がかりなことが残った。
「ええーと、リヴィアさんは天女公の侍女頭?」
「はい」
「マジですか?」
「はい。マジです」
おいおいすごい人パート2なんだが?と思うのもつかの間。俺はリヴィアさんに今までの事、そしてこれからせんとする事を伝えた。
「そう、ですか。ミカエル様を・・・」
「リヴィーはミカエル様の世話係として務めて長かったんです。というか俺達のような「世話係」という仕事に就いた者ならどんだけ短い期間やろうと主を我が子のように愛し、慈しむもんなんですよ。俺もあなたを俺なりに慈しんだつもりですよ?」
決して責めていない、それは分かる言い方だけどギベアは俯いてしまった。
「でも、だとすればリヴィアさんにとって私たちの考えることは自らの子を害そうとする敵です。それでも協力していただけるのですか?」
それはギベアも気になっていたことだろう。
「カイ様、ギベア様も。私たちは世話係ですが「第二の親」です。親であれば子の過ちは正します」
それにヤンカーも頷く。これを聞いて俺に再度決心がついた。
「では。そろそろ母上が参りますので」
リヴィアさんがそう言うと俺たちは席に着いた。丁度その時女王が戻って来た。
「申し訳ありません。お客様をお待たせしてしました」
女王は美しい所作で礼をした。
「とんでもございません。皇女殿下との語らいはとても有意義でした」
「そうですか、それは良かった。では菊池。私に何用ですか?ただ挨拶だけならもう帰っているでしょうに」
は?俺はそんな事聞いてないぞ?だって挨拶だけだと・・・。ギベアを見れば怪しい笑みを浮かべている。おいおい何か嫌な予感がするぞ。
「はい。女王陛下にはこちらの菊様をこの国の学園、ベレッツァ王立学校高等部1年に編入させて頂きたいと考えております」
・・・・・・マジかよ。
「分かりました。手続きをしておきますのでその方の書類を後にベッターに提出して下さいね」
「ありがとうございます」
え、そんなあっさり決めていいのか。
「では要件も済みましたでしょうか?」
「ええ。ありがとうございました、女王陛下並びに皇女殿下」
「久しぶりに会えて良かったです。お母さま、では」
「それではもうすぐに馬車がくるでしょう。ご機嫌よう」
二人は挨拶をして出ていった。俺はすぐヤンかーとギベアに詰め寄った。
「おい!どうなってんだー!」
「まあまあ落ち着け。詳しい事は馬車の中で話してやるよ」
こんのアホが。
「誰がアホだ」
拳骨を直後にくらったのは言うまでもなかった。
少しして馬車が来たので部屋を出て門に向かった。馬車は女王が用意させたのだろう。明らかに馬車がグレードアップされている。
「さっすが女王陛下」
ギベアが少し嬉しそうだった。まぁ、来るときギベアは馬車だけは酔ってしまうらしく凄く疲れていた。その証拠に馬籠などでは酔っていない。でもまあ来るときの馬車よりも楽だから酔いも少ないだろう。
「では出発いたします」
馬車が動き出せば俺は二人にもう一度問った。
「で?何で俺はこの国の学校に入れられるんだ?」
俺はもうリディニアの高等部までの学園を卒業してるから学びはもう大丈夫なんだが。
「これはキークと話した結果なんだが、俺らはグリードを探す。だが「観光・商業」の異国滞在は1ヶ月が限度だ。だからカイ、お前を王立学校に通わせる事で異国滞在の目的を「留学」に変える。本当は不可能だが、キークの女王との友としての関係でねじ込んだ。っていう事だ」
これは力技だな。
「分かった。だが何で俺だ、け」
その時、俺は見た。リディニア王国の紋章を持った鎧を来た騎士を。
「どうしたんだ?・・・・・・カイ、冷静になれ」
ギベアが俺の拳を握った。気づいていなかったが、俺は血が出るほど拳を握りしめていた。
「大丈夫だよ。俺は、冷静だ」
騎士たちは30人ほどいた。明らかに何か探している。手元を見ればカイの顔が描かれた指名手配書だった。
「あいつら、こっちに来てますね。俺が相手をしますんで」
キークが扉を開けた。
「御止めしてしまい申し訳ありません。ただ今指名手配犯を探しておりまして、カイ・ガルシアというこの顔の男を知りませんか?」
「さぁ?知りまへんなぁ~。この男は何をしたんだい?」
「この男は我が国の神、大天使ミカエル様の愛娘様をたぶらかした大罪人のゴミ、イデワルド・ガルシアの息子です。ぜひ情報がございましたらリディニア王国にご連絡を」
「ええ、分かりました。進んでくれ」
馬車が再び動いた。
「・・・・・・親父がゴミ、ね・・・。なら俺はどんな最低なんだ?」
俺の言葉をギベアもヤンかーもただ静かに聞いていた。
どうもこんにちは!金木犀 稜です。
毎日暑いですねぇ~。
それはそうとヤンカーの奥さんはな~んと天界の人でしたね!(まあヤンカーが空の上の人だからな!と思った方が少なからずいる気はするけど・・・)
ちなみにカイは今大学3年くらいです。この中だと子供になったり女子になったり目まぐるしいですけどね(笑)
それではブクマ等々応援よろしくお願いします!!また次でお会いしましょう!




