第十二話 隠し事と謁見
今回は恋愛要素ほんのり込みです!
「あっ水泉と菊池さん、お帰り。二人で風呂に入っていたのか?今から俺も風呂に行くとするよ」
「ええ!とても良い所です。菊様もどうぞ」
俺は洞窟から戻って来て自分の体に施した術を少し改良して洞窟の記憶を読まれぬようにした。かと言ってギベアが読もうと思わなければ読めないんでけど。まぁその作業が終わり、「よし!風呂行こう!」と思った所だった。
「あっ菊様~風呂から上がったらホルデライデの特産品、リピーネの実から作ったジュースでも飲んで下さいよ。氷魔庫の中に入ってるんで一度どうぞ」
「そうですか!それは良さそうですね!水泉と菊池さんもそれを?」
水泉は片手に「ネレーン・セルワイン」と書かれた少し小さめの酒瓶を突き出した。
「これはリピーネの実から作ったワインだそうです。とても美味しいのでぜひと言われまして」
なるほど。だからあまり分からないが少し頬が薄い赤に染まっていたのか。
「分かった。では行ってくるとします」
俺は着替えとタオルを持って二人の横を通りすぎようとした、その時だった。
「ちょっと待て、カイ。お前何か、隠してねぇか?」
ギベアが俺の肩に手をかけた。
「何の事かなぁ?水泉」
◇◇◇
カイが俺らの横を通りかけた時、微かに何か《地力》を使った痕跡を感じた。俺はカイの肩に手をかけていた。
「ちょっと待て、カイ。お前何か、隠してねぇか?」
この俺がここまで至近距離でないと気づけないほどきれいに隠れている。そんな事、教えた覚えはないけどな。
「何の事かなぁ?水泉」
あくまでも白を切り通すつもりだな。
「何の事?しらばっくれるな。お前から《地力》を使った痕跡を感じるぞ!」
頼む、この勘が当たってくれるなと、本心が聞こえる。
「・・・・・・実は・・・・・」
俺とキークはその口からこぼれる言葉を聞き逃さんとして耳を傾けた。
「部屋で《地力》の実験をしてたんだよ!いやぁ、ちょっとミスって丸焦げになりかけたからそれを隠蔽しようとめっちゃ頑張ったんだけどなぁ。ダメだったか~」
想像していた事よりかけ離れすぎて二人でズッコケそうになった。
「あははは~」
「あははは~やないですよ。勝手に実験せんとって下さいよ?あっ!忘れてましたけど、夕飯は離れの小部屋で食べますんで」
「分かりました!では~」
カイの後ろ姿を見ながら安堵しているのを感じる。心を読んだが本当にその通りだったからだ。
「よかった・・・」
「ええ。ほんまに。もしかしたらグリード様に合われたんかと思ってまいましたよ」
そうだ。弟グリードの気配がわずかながらに一瞬、勘違いかと思えるその微かな気配を俺もキークも感じていた。
「キーク。後でこの宿の者にカイの尾行をさせろ」
「仰せのままに、我が主」
キークは少し会釈をした。俺たちはそれぞれの部屋に戻り、夕飯の時間まで待った。
◇◇◇
「あっぶなぁ~」
危ういとこだったな。まぁいい。と・り・あ・え・ず!
「風呂だぁぁ!!!」
汗をたくさんかいてさっさと風呂に入りたかったんだよ!
俺は8階へ向かった。着くと、そこには貴族時代に入っていたのと同じ豪奢な風呂がたくさん作られていた。俺は1鐘分浸かって出た。もちろんヤンカーが勧めていたリピーネの実から作ったジュース、「リピーネルジュース」を飲んで。これが最高だった。
部屋に戻る途中誰かに見られている事もなんとなく分かっていたが、知らないふりをした。
「お食事のご用意が整いましてございます」
7の鐘がなる少し前にリックが食事を知らせに来た。
「分かったよ。ありがとう」
俺はリックに案内され部屋を後にした。ヤンカーの言っていた離れの小部屋に案内されたが、そこにはすでにギベアが座っていた。
「あっ、来られましたか」
「ああ。ところでー菊池さんは?水泉」
「ああ、菊池さんなら手洗い場へ行きました。すぐに帰ってくると思いますよ」
ギベアの言った通り少ししてヤンカーは帰ってきた。そこにタイミングよく料理も運ばれてきた。
「やっぱここの料理は旨そうやなぁ。あっそうや!水泉はんと菊様、飲み物はどないします?」
そう言ってヤンカーはメニュー表を俺らに渡してくれた。
「んーそうですね。・・・この精霊水から作る銘酒飲み比べの「紺」を私に、「玉」を菊様に頼む」
勝手に頼んでくれちゃったが、まぁいっか。
「んじゃ俺はいつものを」
菊池さんも注文を終えて、しばらくは雑談をした。
「それとお二方、明日はこの国の女王陛下と第1王位継承権を持つマリアベル皇女殿下に挨拶に行くんでついてきてもらいます」
「あの、菊池さん。女王陛下と皇女殿下だけですか?国王陛下は?」
貴族時代にホルデライデも学びはしたがあまり政治はそこまで勉強しなかった。遠い国というのもあるけれど、あまり情報がなかったというのが本質だ。
「ああ、お二人は知りませんでしたね。この国は主に女性が、女王陛下が権力を持ってて、国王陛下よりもその貴き女王陛下より生まれた皇太子殿下の方が力を持ってはるんです。つまり、男は王家においてあんま力を持ちません。やけど、この国は国王を優遇しないのに平和です。何故だか分かりますか?」
俺とギベアは首を横に振った。
「この国の国王は代々この国と契約しているブルジャワ公国出身がほとんどです。そのため、この力関係が通常なんですよ。この国には今、女王陛下とブルジャワ公国出身の国王陛下、そしてお二人の間に三人の御子がいます。王位継承権第1位を持つマリアベル皇女殿下。王位継承権第2位を持つテリック皇太子殿下。そして王位継承権第3位を持つヴィル皇太子殿下です」
そこからしばらくして料理も来て、その王位継承権話をした。
「ご馳走になりました」
料理を食べ終えて、明日に備えて寝た。
(起きろ!!!!!!!!!!!)
朝はギベアの伝心で目を開けた。
(っるさい!起きてるよぉ!)
そこから正装に着替えた。昨日の話によると、少し早めに王城に行くため朝ご飯は帰ってきてからだそうだ。
「そいじゃまっ、行きますで」
ヤンカーがオーナーに頼み馬車を用意してくれたので、それに乗り込んだ。
「あっ、そういやお二人・・・特に菊様はマナーとか大丈夫ですよね?」
「ええ。余裕ですよ菊様も私も」
「そうですか。それは良かったですわ」
しばらくして王城に着いた。門番の騎士が案内してくれて、来客用の部屋に通された。しばらくして女王陛下と皇女マリアベル様が入室された。お二人とも目を引くほどの純白の瞳と漆黒から茜色に変わる美しいグラデーションの髪をお持ちだった。俺たちは席を立ち、最敬礼をした。そして代表でヤンカーが祝福の挨拶をした。
「マリア・ぺネル・ホルデライデ女王陛下、並びに王位継承権第1位マリアベル・ぺネル・ホルデライデ皇女殿下。この素晴らしき煌々たる良き日に、ホルデライデが守護神、ピッリッツェレーナの祝福が貴女様方に贈られる事を切に願っております」
ああ~やったなぁ、貴族時代に散々言わされ続けた物だ。
「お久しぶりですわね。君主の剣菊池郎清。貴方に会うのは本当に久しぶりだわ。だけどごめんなさい。私は少し会議に出なければならないの、少し外すから娘と話をしていて頂戴な」
そう言って、女王陛下は客室を後にされた。その時だった。菊池が前に進み出て皇女殿下に近づき、いきなりキスをしてしまった。
「え、えぇぇ!!」
大声を出すと、すぐさまギベアに抑えられた。
「うるさい」
「で、でもギベア!?皇女殿下にいきなり、キ、キスするなんて!不敬罪に問われるんじゃ」
「安心しろ。こいつらは夫婦だ」
「はい?」
この国の皇女がヤンカーの妻!!!!????
一人「?」マークが頭を飛び交ってる俺をほっといて、ヤンカーは少し涙を見せていた。そして皇女マリアベルを抱きしめた。
「早く会いたかった!!アフロディア!!」
皆さん学生は夏休み期間に入ってます。社会人は旅行に出かけます、ダラダラします。金木犀 稜です。
どうも皆様!最近暑さが異常ですね。まぁそんな中書いてます、もちろんエアコンつけて!
さて、なんとキーク君の奥さんはホルデライデの皇女様でしたねぇ~。
果たしてこの皇女様何者なんでしょうか?
次回はこの皇女様の正体がもちろん分かります!!
そして今になってリディニアから追跡者!?
という内容です。最近はなかなか連載出来ずすみません(汗)
それと連載なのですが、もう一作と交互に書いておりますのでいろいろ遅かったり不手際があると思いますが、応援よろしく願いします!




