第十話 ホルデライデ、到着
ひっっっさかたぶりの俺ユイ十話です・・・(汗)
ど、どうぞ!!
あの後、俺は丸2日眠ってしまっていたらしく、もうホルデライデ行く準備が整ったそうだ。
「でー、なんでこんな格好なの?」
俺は今女の姿ではないが、謎に低身長の10歳くらいの男の子みたいになってる。
「あ~だってその方が何かと便利かなぁ~と思ってよ」
おい、目が笑ってるぞ、しっかりと・・・
「便利なわけあるかぁぁ!!」
思いっきり言い放っても、ギベアはヘラヘラとしていた。
「もういい!っで、これからホルデライデに行くんだろ?」
「ああ、だからこれに服とか入れとけよ。終わったら下こい」
ドカッと投げ渡されたのは旅行用鞄だった。すると、ギベアは部屋から出て行こうとしていたが、伝心で喋べりかけてきた。
(これには中が見えないよう細工がしてある。これに《地力》で暗器をいくつか作っておけ)
俺は察した。何かあるなと。
とりあえず、言われた通りに《地力》で暗器を作り、着替えなども適当に入れて下に降りた。もうすでに荷馬車が用意され、ギベアとヤンカーが喋っていた。ギベアが俺に気が付き手をふった。
「遅せぇぞ。もう荷物を積み込み始めてるから、菊池に渡せ」
「すみません。遅くなりました(ギベア、お前のご要望に応えたせいで!)」
俺は取りあえず荷物をヤンカーに手渡した。俺の心の声がどうしても聞えるギベアが薄くにんまり笑っていたのは見なかったことにする。
しばらくして、荷馬車へ積み込み完了とヤンカーが教えてくれたので、俺たちは馬籠に乗り、ホルデライデへの旅が始まった。ヤンカーいわく、ホルデライデまで約4時間ほどで着くらしい。その間、暇なのでギベアにヤンカーについて聞いてみた。俺とギベアが1つの馬籠で、ヤンカーとヤンカーの秘書なる者が1つの馬籠を使っている。
「キークのことは、俺も実はよく知らないんだ」
そう前置きして、ギベアは語った。
◇◇◇
キークは、ミリューシュが幼少の頃からの世話係だ。幼いミリューシュはとても手のかかる子供だったと聞いている。実の両親には、ほとんど会ったことがない。それにもう覚えてもいない。つまりは面倒くさいガキだったってわけだ。それにミリューシュは生まれながらに《天力》が強く暴走のようなものをよく起こすから、キークは大変だったと思う。まぁ、別にキーク1人で見てたわけじゃないけどな?
そんなこんなの面倒なミリューシュの幼少の頃の小さな事件を話してやる。
その日、俺は熱を出して朝から床にふせっていた。やっぱりその日もキークは俺に朝食を運び、汗を拭い、着替えをさせてくれた。
「ねえ、キーク」
「何でしょうか?ミーシュ様」
このころは、キークの計らいで愛称で呼び合ってた。前に言ったな、キークはミリューシュの秘書兼執事だと。実際はそんなの肩書で、ミリューシュの・・・俺の兄のようないやつだったんだ。
「ははさまは?」
「・・・・・・申し訳ございません。天女公様は、お仕事が大変なご様子でして・・」
「そうか。では、ちちさまは?」
「・・・・・・申し訳ございません」
キークは俺が両親が恋しかったのを一番知っていたし、あいつ自身も両親が恋しかった時があったから、俺が可哀想で仕方なかったはずだ。
「わかったよ。もう、だいじょうぶだから・・・さがって?」
キークはとても寂しそうな目をしていたのを今でも覚えてる。ありゃ今になると堪えるな・・・。
「かしこまりました」
キークが出て行った後、俺はずっと泣いていた。それから、さすがに泣き疲れて寝てしまったんだ。目を開ければもうヨルになっていた。天界のヨルは少し独特で、天王神が闇の結界を張るんだ。そうじゃなきゃ、ずっと朝のままだからな。
そんな時だ、俺を殺しに来た暗殺者がいつの間に部屋に入り込み、俺の寝台の横にある水差しに毒を入れてたみたいでな?気が付かずに飲んでしまったことがあったんだ。よくある話だし、実際、天使を毒なんかでは殺せない。ただ、猛烈な痛みのみだ。俺は吐き気をもよおしながら、執事呼びのベルを鳴らした。
鳴らして1分もかからなかったと思う。キークとたまたま一緒にいたカヴィーラがとんできた。
「ミーシュ様!!なんて事だ。カヴィーラ、解毒薬とネズミの掃除をお願いします」
「はい!!」
キークはテキパキと指示を出していたが、その顔は焦りに満ちていた。俺がキークの焦った顔を見たのは今まででそれが最初で最後だ。
「ミーシュ様!大丈夫です。今、解毒薬を運ばせています、辛抱してください」
「キー、ク・・・?」
俺はこの時、目が機能しなかった。毒の影響だろうな。
「はい、こちらに、ここにキークはおります」
「ぼ、くは・・・き、っと、のぞ、ま、れ、なかっ、た、いき、ものだ」
どうせ今回も今の天女公が仕組んだことだろうと思ってたし。実の両親たる神も俺を全く見ようとしなかったからな。
「いいえ!!あなた様は決して望まれない生き物ではありません。この世に天使として現れた。私はこの奇跡を愛しているのです。簡単に私から奪わないで下さいませ。あなた様がそこまで分かって下さらないのならば・・・ミーシュ様、私を眷属といたして下さい」
俺はその時恐ろしかった。俺のせいで一生を縛り付けることになる。なんでかって?眷属っていうのはな、その対象を己の分身体のような存在にするってことだ。俺は常に命を狙われる。俺が死ねば、まだ先を生きれるキークは俺と共に死ぬことになっちまう。そんなことにする俺が恐ろしかった。
「い、いや、だ、よ。ゲホッ、ゲホッゲホ」
「ミリューシュ様、解毒薬を持ってまいりました!」
そこに入って来たのはカヴィーラだった。カヴィーラは、俺に解毒薬を飲ませてくれた。その薬は、天界の神聖水を混ぜたもので、とても良く効くが、代わりにすごい眠気が襲ってくるんだ。
「キーク、僕は君を眷属などにしたくはないんだ。聞き入れて?」
「ミーシュ様、これが私の最初で最後のお願いなのです。お聞き入れ下さい」
俺はこの後、いやいや受け入れたよ。こんなことを兄弟に言われたらもう何も言えないだろ?それに、眷属の契約は、体に刺青を入れる、天界の神聖水から汲み上げたものをインクとして使うから、契約をすれば最後、もう二度と契約は破れない。
「ありがとうございます。私の頼みを聞き入れていただきまして、これからは、より一層あなた様の秘書として執事として、そして・・・兄弟として精進させて頂きます」
まぁ、この後ほかの者たちも眷属にしてくれとせがまれて大変だったけどな。
◇◇◇
「っとまー、こんな感じで、俺の側仕え13人、特にキークには頭が上がらない。・・・っておい、なに涙目になってんだ、お前」
あれ、いつの間に涙目になってたのか。
「いや、ちょっと何となく良い兄弟だな、お前の側仕えは」
「ああ、俺の最高の兄貴だよ」
その後は、ホルデライデの名所や特産品、経済、政治を雑談した。
「見えてきましたよ~」
御車さんが声をかけてくれたので、馬籠から少し顔を出した。
「す、すげぇぇぇぇ!!!」
そこにあったのは、崖のような岩山に建った巨大な城とそれを階段状に取り囲む城下町だった。すでに日が陰り始めているのに、あそこは光を集めたように明るい。
「ああ、とうとう着いた。交易国家ホルデライデだ!」
どうも、稜です。
すいません・・・・久方ぶりになってしまいました。
もう一本の小説を書いたりしてて・・・すいません!!!(涙)
謝罪だけでもあれなので、少し小話でも、実は、キークには恋人がいるんですよ♪
後々誰か分かります!少し予想でもしていただければ面白いかと・・・!ちなみにカヴィーラは既婚者です。




