表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/16

第九話 カイと暴走

この前、感想をいただいて最高にうれしかったです。

ぜひ何でもいいので感想をいただきたいです!

「こちらの宿で少し休まれてから、後で俺が迎えに上がりますんで」


 ヤンカーはそれだけ言うと、宿から出ていった。通された部屋は、ベッドがついた、この国独特の和風と言われる雰囲気が香る部屋だった。入った瞬間に目を見開き、フリーズしてしまうほど豪華で、後で請求されるんじゃないかと一瞬冷汗が出るほどの部屋だった。


「ギベア、ここ本当にタダか?」


「タダ、のはずだが・・・怖いな」


「ああ」


 あのヤンカーの事なので、元主もこんなんである。


「さて、取りあえず姿を一旦戻すぞ、その姿中は、魔力を吸い取られ続けるからな」


 ああ、だから昨日気絶するみたいにすぐ寝たのか、魔力を取られていたのに《地力》で能力を使ったんだから、そりゃあそうなるわ。


「まぁそういう事だ。俺は慣れてるから多少能力を使ってもピンピンしてるが、お前は、な」


 やっぱ、腹立つな!ギベアのやろぉ


「どうでもいいから、取りあえず解いてくれ」


「はいよ」


 被っていた魔力が消えて、爽快感に包まれた。


「よし、姿も元に戻したことだし。んじゃ、ここの服に着替えてフロントに行って、貸し切り風呂の鍵をもらいに行くぞ」


 貸し切り風呂、抜かりないなぁヤンカー。


「ああ、キークは本当に支えてくれてたよ」


 先に着替えて、部屋の扉に向かう後ろ姿様に言ったが、俺は聞こえていなかった。ただ、少し見るとやっぱりヤンカーの・・・元従者達の話になるとこんな感じだ。


 俺もちゃっちゃと着替えて、先に行ったギベアを追っていった。ギベアは、もうフロントで鍵を貰ったらしく、階段で2階に降りると、鍵を持って立ちつくしていた。ここの高級宿は、4階で構成されていて、俺たちの部屋は3階のスイートで4階がお風呂とかだ。


「遅いぞ、()()


 なるほど、普段のラフな感じでも部屋の外だと兄弟設定を使うわけだ。


「すいません。というか、兄さんが速いだけです」


「まあいい、四階まではエレベールで上がるぞ」


「はーい」


 へぇ、この宿にはエレベールがあるのか。エレベールは、人が10人ほど入れるくらいの空間に、転移陣を掘り、各階の同様の場所に人・物などを飛ばすというもの、建設に金がかかることなどから、ほとんど一般の所では作られない。


 そういえば、ガルシア邸だとエレベールを応用して、横棟の移動に使ってたっけ?


「乗れ」


 エレベールに乗り込み、内側にある壁に、手を当てる、すると体内にある魔力を活用し、4階に移動した。


「ついたぞ、ここの『皐月(さつき)』って書いてるとこだ」


 見ると、数か所扉があり、『楓』・『桔梗(ききょう)』・『牡丹』などと、ベゼルガイダークにしか咲かない花の名が書かれた扉があった。


「あった、ここだ」


「ええ、皐月と書いてあるので、ここで間違いないようです」



 入ると鍵を閉め、服を脱いでお風呂を満喫した。久方ぶりのお風呂は最高だった。


「いいお湯でしたね」


「ああ、良かったなぁ、あれは」


 そう喋りながらフロントに行き、鍵を返した。そのタイミングで、ヤンカーが迎えに来た。


「どないでした?ここんとこの風呂はお気に召しましたやろか」


「ああ、いい湯をありがとう」


「そうですか。それは良かったですわ。んじゃ、ベゼルガイダークをご案内いたします。外の馬籠にお乗りください」


 1階に降りると、外に、馬車のような物を待たせていた。


「すんませんが、こっから結界を張らさせていただきます。ご容赦ください」


「やはり君主の剣(グラディウス)となると、ある種の名士(アイドル)のような存在ですから人だかりができてしまうのでは?」


 俺が言うと、ヤンカーが頭を掻きながら照れくさそうな演技をして言った。


「ええ、まあそうなんです。だから、いつもは周りから隠れるために、ある限られた人にのみ俺に見える結界を張って過ごしています。道行く人には、ただの平々凡々な人に見えておるんです」


 それだけ言って、馬籠に乗り込み、こっちに手招きしてくれたので、俺たちも乗り込んだ。


「お邪魔します。っで、これからどこに連れて行ってもらえるのですか?」


「そうですねぇー。「楼善幸(ろうぜんこう)」っちゅう老舗の和菓子屋に行こう思てます、今はちょうど三つ鐘がなりましたし。もう予約しとりますよ」


「楽しみだな、ギィ」


「はい!甘味は好きです」


 エヴァが好きだったな、ベゼルガイダークの華宝っていう和菓子がおいしいと1つ分けてくれたっけ、とても綺麗だったな。


「それは良かったですわ。ついでに華陽お嬢も呼んでありますよ」


(いっとくが、キークは表面上「お嬢」って呼んでるけど、立場はキークの方が上だぞ)


(えっ、そうなのか!)


 とか言っていたら馬籠が止まった。いつの間にか、外は人通りの少ない裏路地のようだった。


「着いたのですか?」


「いいえ、もっと先のはずなんやが・・・してやられましたわ」


 ひきつった笑みを見せながら言ったが、にしては余裕があった。


 外に生物・・・人間の気配がする、8、いや13かな。どうしたもんか、3・4人、強い魔力を持っているな。まぁ、それだけだけどな?


「いったん僕がやってきます。待っておいて下さい」


「いえ、俺が行きますよ」


 乗り出そうとする菊池の姿をしたヤンカーが答えた、いつの間にか紅白の袴をまとっている。


「菊池様、ギィに行かせて下さい」


「せやけど」


 諭すギベアと、諦めないヤンカー。その時、ギベアがヤンカーに耳打ちした。何と言ったかは分からないが、ヤンカーが一瞬苦しそうな目をしたがすぐに戻り言った。


「わかりました。ガレックはんの言う通りにしますわ」


「ありがとうございます」


 俺はそれだけ言って、馬籠の扉を開けて飛び上がってすぐ印を組んだ。


(フランマ) 執行印 焔球華』


 華のような焔が、面前の敵を焼いていく。まるで華が人を喰らうように。


「おいっ!どうなってやがる!話がちがうじゃねえかよ!貴族の娘をさらうんじゃなかったんじゃねえのかよ!!」


 なるほどね。掴みかかってくる敵を格闘技で払い落とす。


「こいつ強ぇえぞ⁉」


「厳密に言えばおめぇらがよえーだけだぞ?」


「なにを言いやがる!おい!あいつらを連れて来い!」


 リーダー格の男が、下っ端のやつに命令した。あいつら・・・どいつが来るんだ?楽しみだなぁ


 ん?楽しみ?何を思ってるんだ、俺・・・・・・。そうこうしてると、奥から人影が現れた。身構えて、何の印を結ぶか頭をフル回転させた時だった。


 奥からやって来たのは、信じられないモノだった。


「おい・・・どうして、()()がいるんだ」


 奥から連れて来られたのは、俺たち()()()()()()()()と同じくらいの年の子が2人だった。兄妹に見えた。


 後ろから、ギベアとヤンカーが嘆く声が聞える。


「ふんっ、こいつらはガキだが顔だちもいいし、《天力》が使える希少なガキだ。本当は貴族のやつに売る前に使いたくはなかったが、しょうがない」


「何を、言っている。子供は、お前らの道具じゃないぞ!!」


「はっ、知るかよ!やれ、ガキども」


  兄妹が俺に手を突き出している。


 許せなかった。俺はその瞬間、とんでもない憎悪がうごめいたかと思うと、意識が落ちた。あるのは、意識が落ちる寸前、ギベアが「カイ!」と叫んだ声だけだった。


◇◇◇


 次、目が覚めると、そこはあの宿の部屋だった。


「起きたか。しばらくは安静にしてろ」


 ギベアが腕をくんでこっちを見ている。無表情なのに、どこか寂しそうな、後悔しているような表情に見えた。


「ギベア、俺はいったい・・・?」


「お前は、暴走を起こして、手が付けられなくなっていたんだ」


「あっ」


 そうだ、あの時俺はあいつらが憎くて憎くてしょうがなかった。それでーー


「あの後、俺とキークでお前を何とか止めた。キークに至っては、元の姿に戻って《天力》の力を使っていた。俺も使わざるおえなかった。これは俺の監督不行き届きだった。すまなかった」


「いい、俺が全て、悪かっ、た、か、ら・・・・・・」


◇◇◇


「寝ましたか?」


 いつの間にキークがいた。カイが寝たのを計らってきた・・・というかさっきから薄く、記憶を曖昧にさせ眠らせる「誘夢香(ゆうむこう)」焚いていたからだろうが。


「ああ、まさかこいつがこんな力を持っていたとはな」


「ええ、驚きです。この力はもはや七欠片(セブンズ)の皆様にも匹敵します」


「そうだな、少しこいつについて調べてくれ。頼んだ、キーク」


 キークは跪き、ただ一言「承知いたしました」と言って出て行った。


 俺はカイの横に座り言った。


「俺がお前を憎ませないようにしてやるから」


 そして、今日は終わった。

いかがでしょうか?

観光要素は次回に見送りになってしまいましが、戦闘シーンを入れてみたのですが、カイが暴走してしまって、すぐ終わってしまいました(汗)

今度どこかで、ギベアとヤンカーの戦闘を引っ張りだそうと思います。

ご拝読ありがとうございました!引き続きなにとぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ