第二話 犬
赤ん坊が追放された場所は聖なる森の中だった。
せめてもの罪滅ぼしなのだろうか?
それともあまり生物が立ち入らない場所に追放して証拠隠滅を図ったのか、、、
どちらにせよ赤ん坊は生き延びた。
ここから先、生きていくことができるとはとても思えないが。
◇◇◇◇◇◇◇
ここは町からそう遠くない、鬱蒼とした森の空き地。
古く、原始的で少し神聖なな感じがする。
かすかな小道が町の方向に続いている。
赤ん坊はここを通って連れてこられたのだろうか
小川が地面から流れ出し、空き地を通り抜け、また地面の中に消えていく。
赤ん坊は生まれたばかりで見るもの全てが新しい。
ただ小川の水面を見つめているその姿は側から見ると異質であった。
小さな水の流れが地面から湧き上がり、空き地を横切る。
赤ん坊は静かに泣いていた。
◇◇◇◇◇◇◇
そこへ小さな犬がやってきた。
村からの小道を走り、空気の匂いを嗅ぎ、シュンに飛びかかった。
いや、飛びついてきたのではなく、まるで自分の子供のように優しくシュンを触り、どこか森の奥へ行こうとしているようだ。
しかし、犬には体に対して少し大きすぎるようで、その場に留まっていた。
赤ん坊は静かに眠った。
◇◇◇◇◇◇◇
その犬が初めて口を開いた。犬は人間の言葉を話すことができるようだ。
「どうしてここにいるの?まだ生まれたばかりじゃない?」。
赤ん坊は目を覚まし、目の前に見知らぬ犬がいることに気づいた。不思議なことに、恐怖心はないようだ。
「アブ?」
「ううん?どうしたんだろう、、、取り敢えず見てみるか」
犬は魔法を発動した。
*魔力視*
そして犬はまた口を開き、話し始めた。
「ふうん、そう言うことか」
老人のような、賢くて力強いような、あるいは好奇心旺盛な少年のような声だ。
「多分魔力がないから追放されたんだね?」
彼は少し怒ったように言った。
「全く人間は、、、自分の子供くらい責任を持って育てればいいのに。」
「まあいいや、*聖体化*」
犬は、まるで神話に出てくる美少年のような姿に変身し、鳥の羽でも持っているのかのように赤ん坊を優しく抱え、暗く蒼い森の奥に消えていった。