第三話 平仮名会話は読みづらいので早めに脱したい
「まま、まほーおしえて」
鍛錬に入ろうとしたが、魔法についてもこの世界についてもほとんど知らないことに気づいた。
父は放っておいて、母に聞いてみる。
「あら、ヨナタンくんは魔法に興味があるの?」
おっとりした母が父の頭を撫でながら答えてくれる。
「うん、まほー使いたい」
「そうねぇ。でも危ないことはしちゃダメよ?」
「うん!わかった!」
そこで父がむくりと起き上がる。
「なんだ、ヨナタンは魔法を使いたいのか。何かやりたいことがあるのか?」
「うん、ぼくぼーけんしゃになりたい!」
「なんだと!パパのような冒険者になりたいだと!なんて出来た息子なんだ!パパは嬉しいぞ!」
父が俺を抱き上げる。パパのような、とは言っていない。
「しかしお前にどんな適性があるか分からんからなぁ。まぁちょっと難しいかもしれないが、少し説明するからな」
適正?何かステータスのようなものがあるのだろうか。
「12歳になると、教会で適職の儀というものを受けるんだ。そこで自分のジョブを知ることになる」
ふむ。ジョブ制の世界なのか。ゲームみたいだな。そして魔法もジョブに左右されると。
「ぱぱとままはなんのジョブなの?」
「パパは『大剣使い』だ。これは大剣を使うときステータスに補正がつき、上手く大剣を使いこなせるようになる」
「ママは火魔法使いよ。他の属性の魔法も使えるけど、火の魔法を使うのが得意なの」
父がサイドチェストをしながら、母が火魔法を手に灯しながら答えてくれる。本当にゲームみたいな職業だな。
「まほーつかいじゃなきゃ、まほーって使えないの?」
「そんなことは無いわ。ただ得意になるから、魔法が得意な職業じゃない人はあまり威力が出なかったりたくさん使えないことが多いわね」
「えー、ぼくまほー使いたいなぁ。ジョブって、どうやって決まるの?」
「ランダムだとされているけど、12歳までにした行動に影響されることがあると言われているわね。ママは料理のお手伝いをして小火騒ぎを起こしてしまったことがあるわ」
「パパは小さいときから兄さんと剣で遊んでいたからな。リーチの短さを補うために大きめの剣を使っていたんだ」
ふむ。では魔法を小さいときから練習していれば魔法使いになれる可能性があるのか。別に魔法使い以外でも魔法が使えればいいのだが。
「ほかにはどんなジョブがあるの?」
「『料理人』とか『商人』みたいに戦うことに関係ない職業もあるわ。貴族の人はそのまま『貴族』という職業になる人が多いみたい」
「戦闘だと『弓使い』や『斥候』なんかもあるな。たまに、珍しい職業になる人もいるぞ」
「珍しい職業?」
「ここ最近はあまり出ていないが『聖女』や『剣聖』、『聖騎士』なんかになると、領主や国がスカウトに来るらしい。おとぎ話では『勇者』なんかが定番だな。なんでも、初代国王は『勇者』で、魔王を倒し新しく国を立ち上げたと言い伝えられている」
『勇者』ね……。異世界転生した俺も勇者の可能性があるんだろうか。使命とか何も言われていないし、関係ないことを祈ろう。ずいぶん面倒そうだ。
「ふーん……。ぼーけんしゃは、戦うジョブじゃないとなれないの?」
「そんなことはないぞ。ママも言っていたが、魔法は練習すれば魔法使いじゃなくても使えるし、剣だって剣士じゃなくても使える。練習次第だな」
「そうなんだ!じゃぁやっぱり、ぼくまほー使いたい!それで、ぼーけんしゃになるの!」
父と母が目を合わせる。母はため息。父は熊のような顔でにっこり。ちょっと怖い。
「やっぱり男の子ねぇ……」
「がはは!いいじゃないか、男の子はやんちゃなぐらいでいいんだ。
いくつか約束がある。
1つ、危ない魔法や練習は、パパかママの見ている前でしか使わないこと。
2つ、魔法を練習するのと同じくらい、剣も練習すること。
3つ、学んだ力を、友達や弟妹に向けないこと。
4つ、自分の将来を、冒険者だと決めつけないこと。
5つ、いかに力がついても、12歳でジョブを授かるまではまだ子ども。ジョブを授かるまでモンスター退治は禁止だ。
3歳のお前にはまだ難しいかもしれないが、守れるか?」
1と3と5はいい。当然のことだと思う。2と4はどうしてだろうか。
「2と4はなんで?」
「どちらも同じ理由から来ているが、ヨナタン、お前の可能性を広げるためだ。
たとえば、魔法と剣が得意な『魔法剣士』や『聖騎士』になれる可能性もある。いろんなことを経験しておくのは、決して損にはならないと俺は思う。
それに、必ず冒険者になる必要はないんだ。兵士になりたいと思うかもしれないし、商人のジョブになって商人になりたいと思うかもしれない。逆に、木工職人のジョブになっても冒険者になりたいと思うなら、それでいい。
どんなジョブになっても、どんな将来になっても、パパとママは絶対にがっかりしないし応援し続けると誓おう。どうだ、約束だ。守れるか?」
父は真剣な目で問いかける。3歳の子どもにこんなに真剣に話してくれるなんて、良い両親だと思う。
「うん、やくそくする。そしてやっぱり、ぼくはぼーけんしゃになる!」
「ははは、分かった!パパとママとの約束だ。それじゃ早速訓練だが」
「待って、パパ」
「ん?どうしたママ」
「う、生まれるかも……陣痛だわ」
母が苦しそうな声で陣痛を告げる。威厳のあった父の顔がみるみるポカンとしていく。
「い、医者ーーー!!!」
どうやら訓練開始は後日になりそうである。
感想、ブックマーク、レビューお待ちしております。
誤字については誤字報告からお願いいたします。




