第二話 親の赤ちゃん言葉は冷静に見ると見苦しい
二話目です。
「もしもーし、パパでちゅよ~~~~~」
突然だが、どうやら転生したらしい。
気付いたのはついさっきだ。
この世界の父が、大きくなった母のお腹に
「もしもし、パパでちゅよ」
と言っているのを聞いて唐突に記憶が蘇った。
そんなにコールセンターで働いていたことが魂に結びついていたのか。かなりいやな思い出し方だ。
そもそも、もしもしって。コールセンターでもしもしは禁句だ。理由は忘れたが、使うべきではない言葉のリストに入っていた。
それなのにもしもしで思い出すのか。重ね重ね、いやな思い出し方だった。
今の自分には、この世界での記憶と前世での記憶の両方がある。
前世ではコールセンターの管理者をしていた。独身。両親は他界済み。親戚付き合いもなければ兄弟も無し。唯一の家族と言える、飼っているモルモットは無事だろうか。
35歳になって、少し早いが孤独死というものを意識し始めていた。24時間家のトイレに電気が灯らない場合、友人に通報が行くことになっている。両親も他界しており頼れる人がお前しかいないんだ。申し訳ないがモルモットのことは頼んだ。
仕事は中途半端になってしまった。だがきっと変わらずあのセンターは続いていくのだろう。過労や心労で鬱のような状態になる管理者は多い。大抵は休職したあと、復帰せずに辞めていく。それでも職場は多少の忙しさを増すだけで問題なく稼働するものだ。うん、俺一人いなくなったところでさして問題はないな。
モルモット以外だと案外未練は無いな。階段で俺を押した人は「あっ……」と押した瞬間に言っていた気がする。どうか気に病みすぎないでほしい。終電だったんだ。みんな疲れていた。しょうがないこともある。
それはともかく、今回の人生だ。ラノベみたいに記憶を持ったまま転生してしまった。
今生での名前はヨナタン。男。苗字はなし。先日3歳になった。銀色の癖っ毛がパーマをあてたみたいにくりくりしている。
両親は健在だ。母は長い銀髪をストレートにおろしており、かなり見た目は若く美人だ。おっとりした人で、よく長男の俺をかわいがってくれている。父は熊のようなガタイにくりくりの茶髪。どうやら銀髪のくりくりは両親をほどよくミックスして遺伝したようだ。それ以外の造形は母に似ることを期待しよう。きっと美少年へと成長するはずだ。
そして母は現在妊娠中。かなりお腹は大きくなっている。もうすぐ弟か妹ができることになる。楽しみだな。
前世は一人っ子で、両親も早く他界したうえ親戚付き合いもなく孤独の身だった。今生では家族を大事にしよう。
母はいつも家にいるし、いわゆる専業主婦なのだろう。家は集合住宅ではなく一軒家で、間取りは俺の知る限り2LDKだ。日本ではあまり見ない、輸入住宅のような作りだ。名前が和名で無いことから考えても、日本ではないのだろう。窓には透明なガラスが張っている。透明なガラスって地球だといつからあったのだろう。電子機器を見た覚えがないことから考えて、文明レベルが生前の地球並みということは無いように思える。
しかし今のところ、俺は両親と一緒に寝ているのだがいつ子どもが出来たのだろう。いや今思うと、今日は別々に寝る練習をしましょうねと言われた日があったような……考えても得をしない気がする。深く考えるのはやめよう。
そして父の職業は『冒険者』だと自分で言っていた。そう、冒険者である。どうやらここは地球ではないようだ。
冒険者といった職業もそうだが、不思議な仕組みでつくランプ、手から火種を出して料理に使う母、子どもの手の届かない場所に立てかけている大剣が証明している。魔法ありの異世界だ。テレビやパソコンは無いし移動は徒歩か馬車だが、冷蔵庫のようなものが台所にあるし、トイレは水洗だ。文明レベルはいまいち読めない。もしもしという言葉は電話が由来だったようだがどこから来たのか。
転生するにあたって、白い空間で神と話すようなテンプレを体験した記憶はないが、これはいわゆる『幼少期から魔力量を鍛えて最強に』というテンプレは実行できるのではないだろうか。魔法には大変興味がある。
冒険者という職業にも憧れがある。前世ではパソコンで出来るMMORPGを複数はしごしていたし、モンスターをハントして武器を育てていくゲームもしていた。異世界転生ものの漫画や小説もたくさん読んでいた。この世界の文明レベルによっては知識チートでお金持ち生活、ということも目指せるかもしれない。しかしやはり、冒険者やモンスター退治、ということへの憧れが強い。せっかくの転生人生、後悔のないように生きたい。
そうと決まれば母のお腹に頬ずりしている父は放っておいて鍛錬だ。せっかくの転生だ、楽しませてもらおう。
キャラ名は大好きなある作家さんから一部お借りしています。ダメだったら変えます。
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