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第5話 ぼうぎゃく?

 金髪碧眼のそこそこイケメン姿の皮を被ったエイを先頭に置いて、日差しの届かぬ深い森の獣道を歩いていく。


 リアンによる機械を使った事前調査によると、この道を抜けた先に人の手の入った道があり、その道を道なりに進むと集落があるんだって。

 その集落までの道は険しく、人が訪れることはあまりないと。

 だから、私たちは珍しい旅人となる。


 私は目的地が集落と聞いて、ちょっと落胆。

 剣と魔法の世界なら、欧州風味の街並みが連なる光景が見たかったのに……。


 残念だけど、それはまたの機会に。


 私は目的地となる集落を訪れる準備のために、エイと同じように学生服の上からくすんだ白いローブを纏う。

 学生服の姿だと目立ちすぎるからね。

 あと、ローブがくすんでいるのは旅人を装うためと、この惑星にはあまり真っ白な布を作る技術がないから。



 森を見回す。

 乾燥していて木々に元気がなく、表面はカサカサ。葉っぱは青々として多いけど、一部分には枯れ葉が混じっている。水が足りてないのかな?


 木から視線を外して、もう一度周りを見回す。周囲は地球にありそうな森の風景。全然他の星の雰囲気はない。それでも、あちらこちらに視線を飛ばして何か珍しいものはないかと首を振る。

 すると、先行するエイが歩みを止めて、こちらへ顔を向けてきた。


「落ち着きがないようだけど、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」

「そうか? それとだけど、集落では何が起こるかわからない。だからしっかり心を落ち着け――」

「わかってる、それも大丈夫だから。見ての通りスカートだけど、中には常にレギンスを履いてるからね。だから、下着のことなんて気にすることなく、容赦なしで敵を倒せるよ」


「別に戦いを想定して尋ねた問いじゃないんだけどな。心の話なんだけど」

「心?」

「十四歳という少女。この突飛な状況。混乱はあるんじゃないか?」

「ああ、そういう話。う~ん、そうだねぇ……びっくりしてるけど、まぁ、大したことないよ」



「いや、大したことあるだろう、連れ去った俺が言う話じゃないが。過去に何度かワレワレの姿を地球人に見せているけど、恐怖で怯える人たちばかりだったぞ。そうだというのに、どうして君は?」

「それって大昔の話じゃない? 今どき、宇宙人に(さら)われようが、突然異世界に飛ばされようが、そこまで動揺する人はいないよ。良くある話だし」


「それは物語としてだろ。それが現実となれば、動揺があってしかるべきなんだけどな。さすがは地球、いや宇宙随一の暴虐の力を持つ者だね」

「はい、ぼうぎゃく?」

「何でもないよ。ただ、君は変わってるという話」


「ええ~、地球外生命体から地球人として変わってるなんて言われたくないなぁ」

「言っとくけどね、俺は君たちを深く調べている。だから、君よりも深く地球人に精通しているんだからね」

「そうかなぁ? あ、道が見えてきたよ」



 森の獣道を抜けて、道へ飛び出す。

 その道はとても狭く、二人並んで歩くのがやっと。

 おまけに、すぐ隣は柵のない崖。高さは軽く百メートルは超えてる。

 視線を崖から戻して、遠くへ投げる。


 てっぺんが霞むほど高い山々に囲まれた場所。リアンの情報通り、人があまり来なさそうな雰囲気。

 私は再び崖下を覗き込みながら声を上げる。

「うっわ、落ちたら死ねる。それで、どっちに進むの? 右? 左?」

「東側。君から見て右。そこに人口三百人程度の集落がある」

「おっけ~。その集落に動力となる……えっと、なんだっけ?」


「生命体の意識が結晶化したクニュクニュがある」

「そう、それそれ! それの正確な位置は?」

「集落から外れた場所だよ。何らかの生命体の腹の中にあると思われるね」



 そう言って、エイは白い靄を産み出して、長方形の姿をした板に変える。そして、それを覗き込んでいる。

 板の表面には地図っぽい図形の映像が出てるから、あれは私たちの持つスマホやタブレットみたいなものかな? グーグ〇マップっぽい感じ? カーナビ?


「そのタブっぽいのでわかるのは、地図とクニュクニュの位置だけ?」

「いや、探査装置としての役割も有してるから、色々調べることができるよ」

「なるほど、スマホより便利そう。えっと、生命体のお腹の中にあるって言ったけど、どういうこと?」


「さてな、墜落の衝撃でこの探査装置『セムセム』も調子が悪くて、詳しくはわからない。ある程度の予測はつくけど、詳しく調べるのは現地についてからにしよう」

「うん、わかった。じゃあ、集落に向かおう! ふふふ、異世界の人たちかぁ~。いや、異星人かな? ともかく、魔法があるのなら、それがどんなものか楽しみ~」



 私は足取り軽く体を東に向けて、崖が寄り添う危険な道を歩いていく。

 その後ろからエイ。

 彼は長身のボディースーツには見合わない、溜め息にも似た声を漏らしてる。


「まったく、この状況で物怖じしないというのは面倒がなくて助かるけど、そのぶん不安が増すなぁ」

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