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負け犬の勝利

作者: 郷新平

ついにタイムマシンが完成した。

様々な人の思惑がタイムマシンを通して、果たされていく。

勝者は居ると言えるのか?

■久野研究所前 

 一台の円形のポッドを白衣を着た男女混ざった、大勢の人が囲んで、ポッドの中を見守っている。

 中は膨大な機械に埋め尽くされている。その中心に一台のシートがあり、全身を覆う宇宙服のようなスーツで顔の部分が覗ける部分があるスーツを身に纏った人物が居た。

 カメラの前でニュースキャスターが緊張の面持ちで、中継を始めた。

「今、世紀の瞬間に立ち会おうとしています。各国で関係が不安定な中、明るいニュースが生まれようとしています。」

キャスターがポッドを撮影する。

「タイムマシンで過去に人を送ります。発信前のわずかな時間の中、博士が取材に答えてくれます」

 カメラの前に30歳半ば前後の白衣の男性が佇立した。

「久野博士、現在の気持ちはどのようでございましょうか?」

「まずはこの不可能そうな案件に、協力していただいた皆様と家族に感謝の気持ちを表したいと思います。これは間違いなく、歴史に名を遺す実験になります。被験者として、参加してくださった女性の方には感謝の言葉を送りたいと思います。」

 久野博士が女性に目をやるとみずほらしい服を着た女性と笑顔で肌が褐色の赤子を抱いている。

「お兄ちゃん、おめでとう!」

「由紀、こんなとこまでありがとうな」

 周囲から暖かい拍手が鳴り響く。 

「ジャーナリストの妹さんですね?」

「あいつは私と違って社会の方が得意でね。」

 テレビはスーツの男性を見つけるとカメラを向けた。 

「中野議員とは旧知の仲だそうですね?」

「あいつ、忙しいのに来てくれてたんだな」

 カメラはズームして、ピントを合わせた。そこに怜悧な相貌に高級スーツに身を包んだ男性。その横にボブヘアーのお淑やかそうな女性が柔らかい笑みを浮かべて佇んでいた。

「おめでとう!」

 中野はそう言うと、手を振った。久野は手を振って応える。

「あいつとは中学からの中でね。活発なあいつからは想像できないでしょうが、同じく物理オタクでもあるんですよ。あいつは負けず嫌いで、張り合ってくるんですよ。あいつには諦めそうな時に精神面で助けられましたよ。だから今回の成功はあいつと二人で成し遂げたようなものなんですよ。では、そろそろ発射の時間ですので」

 久野はそう言うと機械に向かって、歩いて行った。


 カメラは中野に向かい、二人の前に立つとキャスターがインタビューを始めた。

「久野博士が世紀の成功を収めまして、ご気分はいかがでしょうか?」

「あいつとは中学生からの中でね。心から嬉しいですよ、実験が成功した時には真っ先に連絡をくれたんです。あいつが頑張ったから、今度は僕の番ですね。」

 中野は満面の笑みを浮かべた。

 キャスターは女性に向けて、カメラを向ける。

「中にいる女性とは中野議員と同じく、中学生からの仲らしいですね」

 女性はにっこりと笑うとカメラに顔を向けた。

「ええ、身を挺して、このプロジェクトに参加するあの子に私はとても尊敬しています。」


■機械室 

 久野は複座型のシートに繋がれた装置の最終チェックを行う。

「いよいよだ、いいんだな?」

 久野は固い声で尋ねる。

 スーツの顔の部分から険しい表情をした女性が久野を睨んでいる。

「ええ、大丈夫よ。それよりもこの実験は大丈夫なんでしょうね?」

「ああ、俺と助手が行ったから間違いがない。ただし、事故があったら、戻ってくることは出来ないぞ?」

 女性はふっと笑った。

「悪いわね、皆の前で世紀の実験を失敗させてしまって」

 女性は言葉とは裏腹に全く、気持ちを込めずに言う。 

「いいさ、君に負けたんだよ。」

「ふーん、まあ、私は過去に行ければどうでもいいんだけどね」

「それに一回しか過去に行くことはできないんだ、後悔のないな?」

「ええ」

 女性はくすりと笑う。

「どうでもいいことだけど、実は私、後一日生まれるのが遅かったら、違う学年だったのよ、こうして貴方と関わりあうこともなかったわけ、何故か思い出しちゃってね」

 久野は、女性を見つめる。

「禁止事項は覚えているか?」

「ええ」

「考え直さないんだな?」

「しつこいわね」

 久野は頷くとスイッチを回す。装置の付近にあるメーターが振り切れ、装置から青い閃光が迸る。

 しばらくすると女性が消えた。

 久野は腰を上げた。

「次の作業にかかりますか」 

 寂しそうな顔で装置を見つめる。


■学校の廊下

「あの」

 廊下で男子が声を掛けると女子二人組は立ち止まって、振り返った。

 制服を着た女子二人組の前に同じく、制服を着た小柄な男子が一人、下を向いて、立ち止まっている。

 クラス一の美女と噂されるポニーテールの佐伯加奈とボブヘアの藤堂絵里

「ごめんね、いい友達でいよう」

 加奈はそう言うと去って行った。

「身の程知らずよね」

 絵里はそう言うと加奈は弱く頷いた。


 クラス一の美女と言われる加奈には毎日のように告白が舞い込むので、断るのも慣れていた。

 加奈には好きな人が居る。同じクラスの中野だ。

「ねえ、貴方、何か悩んでいるの?」

 二人が声をした方を見ると、35歳前後でポニーテールの女性が薄笑いを浮かべて立っていた。

「えっ」

 突然のことに固まっている加奈と絵里。

「当然よね」

 ポニーテールの女性は苦笑いをすると、顔を直した。

「貴方は誰です?」

 絵里は尋ねると女性は珍しそうにじっと絵里を見つめ、加奈を見据えた。

「そうね、私は未来の貴方よ」

 加奈と絵里は愕然とした顔で女性を見つめた。


■機械室

 ポッドの中に中野と中野と一緒にいたボブヘアーのお淑やかそうな女性がポッドの機械に座っていた。

 久野は険しい表情でポッドを睨んでいる。

「二人とも準備はいいな?」

 女性は澄んだ目で中野を見つめた。

「この元凶を直しに行ってくるわ」

 男性は笑っている。

「全く、世話のかかる奴だ。」 

 中野と女性は装置から青い閃光が迸り、消えた。

 久野は深いため息を吐いた。

「うまくやれよ」


■学校の廊下

 女性は勝ち誇った顔で加奈を見つめた。

「貴方、中野君が好きなんでしょ?」

 加奈は急な告白に面食らって、たじろいだ。この人は何で知ってるの?

「知ってるわよ、貴方、中野君に告白しようとしてるでしょう?」

 絵里も驚きの表情で加奈を見つめた。

「その結果は私は知ってるわよ」

 女性は二人にお構いなしに話を続ける。

 加奈はごくりと唾を飲み込んだ。

「知りたい?」 

 加奈はこくこくと首を縦に振る。

 女性は暗い表情を浮かべる。

「振られるわ」

 加奈と絵里は目を丸くする。

「そう、この結果を伝えるために私は来たの」

 立ち竦む加奈を哀れな目で見とめる女性

「振られたことのない私はショックでね。その寂しさを紛らわせるために他の男と付き合ったの。そいつが悪い奴で、その影響を受けて、落ちぶれちゃったの」

 放心状態でたじろぐ加奈。

 絵里が女性に詰め寄る。女性は距離を取って避けた。

「いい加減なことを言わないでください」

 絵里が女性に食って掛かる。女性は笑いながら、絵里の何かを耳元で囁く。 

 話を聞き終えた絵里の口元は歪んでいた。

「加奈、何も中野君じゃなくてもいいじゃない、他にも男の子はたくさんいるわ。落ちぶれていく加奈なんて見たくない。」

 

■機械室

 椅子に座っている久野。

「絵里さんはちゃんと言いつけを守ってるかな?」

 そう言うと装置を見つめた。


■学校

 ポニーテールの女性は腸の煮えたぎる思い出でその心の中で考えていた。加奈が告白したから仕方なく彼は付き合うことになったのよ。彼は本当は私と両思いだったのに、、、クラスの男子が言ってたから間違いないわ。ずっと貴方の影に埋もれて、金魚の糞って言われてたから、勇気がなかった。そうよ、この世界で加奈の居ない世界で新しく、人生をやり直すの。そして、未来を知ってるこの世界で新たにキャリアを築くのよ。


 振られるという未来を聞いて、加奈は俯いている。

 絵里は加奈を見つめながら、内心は安心していた。中野君は私のことが好きだったんだ。加奈には悪いけど、諦めてもらいましょ。

 加奈は顔を上げると走り出した。絵里と未来の絵里はいきなりの出来事に驚いている。

 

 加奈は廊下を一人で歩いている。学生時代の中野を見つけた。

「中野君!」

 中野は疑わしい顔で加奈を見つめた。二人の絵里は遠くから加奈の様子を見つめている。

 加奈は燻っている感情をぶつけることにした。

「好き。だから付き合ってほしいの」

 中野は目を丸くし、二人の加奈は口をぽかんと開けていた。

 中野はじっと加奈を見つめている。

「悪い、友達でいよう」

 中野は去って行った。立ち尽くす加奈。現代の絵里は加奈のもとに駆け寄る。

「振られたけど、すっきりしたよ。思いを伝えられたんだから」

 未来の加奈は遠くからその様子を伺っていた。

 何で?この告白で二人は付き合って、将来結婚。そして、彼は議員になって、幸せに暮らすはず。でも、それを阻止して、私が付き合って、加奈の代わりになるはずだったのに。、でも、よく考えると私が来て、未来が変わったのかも。

 絵里は現代の絵里が見つめているのを確認するとこくんと頷いた。


■機械室

 椅子に座っている久野。

「そろそろかな?」


■学校 

 現代の絵里は中野をの姿を確認するとゆっくりと歩み寄った。

「中野君」

 中野は振り返り、加奈を確認した。 

「何だよ」

 現代の加奈は笑いながら様子を見つめている。

「私、中野君のことが好きなの、付き合って」

 中野はじっと絵里を見つめ、絵里はニコニコと笑っている。

「悪い、いい友達でいよう」

 何で?両思いのはずなのに

「何で?」

「お前たち、告白してた奴で特定の奴は門前払いや酷いこと言って、振ってきただろ。そんな奴とは付き合えねえ。ましてや、俺の親友を邪険に扱ったから特にな」

 未来の絵里は呆然としていた。何で?彼は私と両思いだったはずのに。

 あれ?目の前が白くなっていく。それに手足が薄くなっている。久野から聞いたように未来の私には一切触れなかったのに、、、


■機械室

 椅子に座り、にやりと笑う久野。

「絵里さん、私は嘘を吐きました。未来から来た人間は過去の自分に触れて、遺伝子情報を確立させないとその世界から存在を遺物だと認識されて、消えてしまうんですよ。長く接触しているとそのうち同化をはじめ、過去の自分と未来の自分と混ざり合う。」

 久野は今まで存在していなかった疑問が生まれた。

「俺、一度、誰かと過去に行ったか?」


■学校(久野が振られた直後)

 ついさっき、加奈に振られた男子生徒がとぼとぼと歩いている。

 男子生徒が肩を叩かれて、振り返る。初めての時間旅行で未来から来訪した久野が居た。

「なあ、君」

 男子生徒は急に現れた存在に警戒感を露わにした。

「私は新しくこの学校に赴任してきたんだ。君に危害を加えようとしたわけじゃない。それより、さっきのを見たよ」

 男子生徒は顔を下に向ける。

 久野は変わらずにしゃべり続けた。


「君、本当は絵里さんに告白しようとしてたんだろう?」

 男子生徒はじっと久野を見つめている。

「加奈さんは中野に告白しようとしているらしいぜ」

 男子生徒は何か考えるように視線を横にずらした。

「性格の曲がった奴に中野を取られてもいいのか?これはあいつのためでもあるんだ。わかったら何をやるかわかるな?」

 男子生徒は歩き出した。


■機械室

 久野は復讐をやり遂げて、鼻歌を歌っていると由紀が入室し、険しい表情で久野を見据えた。

「満足?」

 久野は伺うように妹を見やる。

「どういうことだ?」

「満たされない自分の思いを過去で清算するのは満足?」

 久野は怪訝な顔で由紀を見つめる。

「知ってるのよ。お兄ちゃんが絵里さんへの思いを断ち切れずに、過去で加奈さんを抹殺しようとしていることを」

「言うな!」

 由紀は久野を優しい目で見つめる。

「中一から物理が得意な彼女をライバル視していた。それから恋心に発展したんだ。加奈さんについて行って、嫉妬心から落ちていく彼女を見るのが辛かったんだ。それで、俺だったら、彼女と一緒に競い合わせるとことができると」

 久野は手に爪が食い込むほど、深く握りしめていた。


■学校 

 絵里の目の前が薄くなり、暗転した。

   

■研究室

 たくさんの整理がされていない机には積み上げられた研究資料や研究結果が記載された紙の束が無造作に置かれている、一つのパソコンの前には白衣を着た目の下にクマを作った女性がパソコンに向かって、カタカタとデータを打ち込んでいる。   

 男性と女性がドアを開けて入ってきた。

 男性があきれ顔で周囲を見回す。

「絵里主任、休まないと体を壊しますよ」

 絵里は一心不乱にデータを打ち続ける。

「休んでたら、あの人に置いてかれてしまうわ」

 女性は物珍しい顔で絵里を見つめる。

「絵里主任はあの人と幼馴染なんですよね?」

 絵里はふっと笑い、手を止めて、顔を向ける。

「そうよ、あの人は私に物理を教えてくれたの。そのおかげで今は研究の虫よ。後、生まれるのが一日早かったら、同年代で競い合ったかもしれないわね」

 一つの机にはテレビが世紀の実験を中継している。物理の師匠である久野を見て、絵里は笑った。

「久野さんやったね」


■産婦人科 

 加奈が一つのベビーベッドの前で安心のため息を吐いた。手には赤ん坊が生まれた時間を示す切り取られたタグが握られている。付け替えられたタグには4月2日になっていて、手には4月3日のタグが握られていた。

「よかった。これで、私と出会うことはない。貴方は寂しい私に寄り添ってくれていただけ、それなのに周囲が騒いで、貴方との関係性を壊してしまった。私は大丈夫、貴方の助けがなくても生きていける。未来を変えてしまうから、久野君が告白に失敗して、悔しさからタイムマシンを作る未来も無くなってしまった。ごめんなさい」

 そういうと、ボタンを押して、未来に帰って行った。

 

■久野研究所前 

 久野の成功を見守るために、加奈は高級なスーツに身を包んでインタビューを受けていた。

 久野と同じ中学だという事で、どんな学生だったかを答えている。

 彼のことは理数系が強いという事しか知らないのだけど、仕事という事で慎重に思い出しながら答えていた。

 加奈は考えている。私、何か凄いことをした気がするんだけど、なんだったっけ?  

 

■学校 

 やばいやばい、誰かが歴史を変えようとしている。

 未来から来た中野は薄くなっている自分の姿を見つめ、迷いなく歩みを進めた。

 過去の自分を見つけた中野は背後からチョークスリーパーを掛ける。

 過去の中野は振り払おうとするが、びくともしない。

 暫くするとスーツが床に落下して、その時代の中野だけが残る。

 これで自分と同化するのは二回目だな。

 中野は歩くとその時代の久野を見つけた。

 中野は久野に声を掛け、振られたんだろうと尋ねると、キョトンとした顔で見つめているので振られたという未来が変わったことを悟った。

「タイムマシンの方法を考えたぜ!」

 中野の話を聞くと久野はぱぁっと顔を輝かせ、中野は未来から持ち出した資料を久野に見せた。

 真剣な表情で久野は見つめている。

 中野は体が体が戻ったことを確認すると安堵の表情を浮かべた。

 研究員時代に持ち出した資料が役に立ったぜ。前に同化した時は門前払いを受けたことを知らずに加奈と結婚したが、こいつを苦しめた加奈を許すことは出来なかった。

 俺とあいつの夢はこの先行き分からない世界を救うために大統領になること。


■久野研究所前 

 久野がスコップを持って、バツと書いた箇所を掘っている。

 そこに未来から過去にタイムスリップした絵里が埋めた、タイムカプセルがある筈だった。

 周囲からざわめきが聞こえてくる暫く掘っても何もない。

 加奈がマイクを中野に向ける。

「大統領、何も見つからないみたいですね。」

「失敗なはずはないと思うが」

 周囲からブーイングが聞こえ始めた。

 久野は自分のたくらみが成功したと感じ、口元を歪めて笑った。

 そんな時、一人の人物がテレビに向かって電話を持ってくる。

 加奈は電話を受け取る。

「ただいま、ある研究所から電話が入りました。」

 周囲は電話を見守っている。

「久野博士、お久しぶりです。」

「皆様、電話の相手は久野博士の幼少からの知り合いで、藤堂絵里博士です。」

「私が確認したところ、あの装置には何も異常がないと思います。よって、過去にトラブルがあって、埋めることができなくなったと思われます。」

 自分が窮地に追い込んだ人物からまさかの連絡に久野は驚いていた。

「小さい頃から貴方の背中を追いかけていました。」

 久野はじっと話を聞いている。

「そんな貴方の研究に私は身の程知らずなことに改良を加えています。」

 久野は絵里を見つめている。

「それは何度でも過去に行くことができる装置です。完成したら、加えていただけますか?」

 久野は笑顔で頷いた。

「完成したら、今に帰って成果を報告しよう。そして、私がカプセルを埋める。」

 周囲からは暖かい拍手が巻き起こった。

 加奈と中野は満面の笑みを浮かべている。

 由紀は薄ら笑いを浮かべている。 


 世界は暗転した。


■久野研究所前 

 久野がスコップを持って、バツと書いた箇所を掘っている。

 そこに未来から過去にタイムスリップした二度目のタイムスリップをした自分が埋めたタイムカプセルがあった。

 周囲は熱気に包まれている、これが完成すれば、誰でもタイムスリップが気軽にできる期待からだ。

 加奈がマイクを持って、興奮の面持ちでタイムカプセルを見つめている。  

「いよいよ、未来の久野博士と藤堂博士の研究成果が表れることになります」

 久野はタイムカプセルを開けると一枚の紙が入っていた。

 由紀に気をつけろ。

 紙には走り書き書かれていた。

 周囲にざわめきが起こる。


 世界は暗転した。 


■旧久野研究所

 日本の上空を戦闘機が編隊を組んで移動していた。

 

■国会   

 ラジオからアメリカを陥落したと報告が入った。

 中野が固く目を結んでいる。

「この侵略に意味はあるんですか?」

 厳粛な面持ちの由紀は赤ん坊を抱いて、中野を見つめる。

「大ありよ。反抗するのは徹底的に潰さなきゃ」

 中野は眉間を押さえる。

「違うだろ!あんたは自分を捨てた男が憎くて、復讐してるだけだろ!」

 由紀は冷たい目で中野を一瞥する。

 赤ん坊はキャッキャと笑っている。

 

 

 

 

 

 

 

 


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